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「ふぅ…」
結良の目の前には、自室のドアがある。制服に身を包み、学園へ向かう準備は完璧なのだが、外へ出る事の恐怖心が、結良の心を挫けさせる
「い、行くんだ」
結良の体は、震えが止まらない
恐怖心と戦うこと、数十分。結良は未だ、一歩も前へ進む事が出来ずにいた。このまま休み続ける事なんて、出来ないないし、ましてや外に出なくて良いなんて事もないのだ
(行くんだ。男だろ!)
もう一度、ドアノブに手をかけようとした時
ーーピーンポーン
結良の気持ちとは正反対に、軽快な音が響く
恐る恐るドアをあけると、そこにいたのは竜元だった
「結良」
優しいその声に、自然と震えが止まる
「会長?」
「結良、行くのか?」
その優しい声に、何故か安心感を覚える
「その、もう行かないと流石に。それに、逃げたく…ないから!」
「そうか」
結良の言葉に、竜元は微笑む
「よし、行くか?」
「はい!」
―――――
「大丈夫か?」
校舎が見えてきた時、竜元が心配そうに聞いてくる
「は、い。きっと1人だったら…でも、会長がいてくれるから平気です!」
結良がとてもいい笑顔で言い切った
「そ、そうか」
そう言うと竜元は、結良から目をそらす
「会長?」
(はぁ、可愛い。なんて可愛いんだ)
口元を押さえ、悶える竜元。その心境は興奮により荒ぶっていた
「何でもない。行こう」
内に秘めた荒々しい感情を、おくびも見せず笑顔で答えた
校舎に近づくにつれ、生徒が増えていく。結良と竜元を見て、驚く生徒が大半で、見る目は温かいものだった
そんな事に気付かない結良は、ガチガチに強張る体を必死に動かしていた
そして下駄箱に着いた時、それはやって来た
「あー!竜じゃん!」
ニコニコと笑みを浮かべ、光が駆け寄ってくる。相変わらず、場違いな大きな声を出しながら
「朝から会えるなんてな!昨日は何処にいたんだよ!探したんだぞ!」
朝から大きな声で叫ぶ光。周りの生徒達の視線は、必然的に光に向いた。その目には、ハッキリとした嫌悪が浮かんでいる
「なぁ、気付いてるか?皆俺たちを見てるんだぜ?でも、仕方ないよな!」
盛大な勘違いに、盛大に照れる光。確かに竜元は容姿端麗で、光も可愛らしい顔をしている。それを自覚しているからこその、勘違いなのだが。それにしても少し、痛いものがある
尚も1人でしゃべり続ける光の目に、幸運な事に結良は映っていなかった。だからこそ、未だにモジモジとしながら、嬉しそうに話している訳だが
「それで、」
終わらない光のおしゃべりを、遮る様に声がかかる
「会長、おはようございます」
結良の目の前には、自室のドアがある。制服に身を包み、学園へ向かう準備は完璧なのだが、外へ出る事の恐怖心が、結良の心を挫けさせる
「い、行くんだ」
結良の体は、震えが止まらない
恐怖心と戦うこと、数十分。結良は未だ、一歩も前へ進む事が出来ずにいた。このまま休み続ける事なんて、出来ないないし、ましてや外に出なくて良いなんて事もないのだ
(行くんだ。男だろ!)
もう一度、ドアノブに手をかけようとした時
ーーピーンポーン
結良の気持ちとは正反対に、軽快な音が響く
恐る恐るドアをあけると、そこにいたのは竜元だった
「結良」
優しいその声に、自然と震えが止まる
「会長?」
「結良、行くのか?」
その優しい声に、何故か安心感を覚える
「その、もう行かないと流石に。それに、逃げたく…ないから!」
「そうか」
結良の言葉に、竜元は微笑む
「よし、行くか?」
「はい!」
―――――
「大丈夫か?」
校舎が見えてきた時、竜元が心配そうに聞いてくる
「は、い。きっと1人だったら…でも、会長がいてくれるから平気です!」
結良がとてもいい笑顔で言い切った
「そ、そうか」
そう言うと竜元は、結良から目をそらす
「会長?」
(はぁ、可愛い。なんて可愛いんだ)
口元を押さえ、悶える竜元。その心境は興奮により荒ぶっていた
「何でもない。行こう」
内に秘めた荒々しい感情を、おくびも見せず笑顔で答えた
校舎に近づくにつれ、生徒が増えていく。結良と竜元を見て、驚く生徒が大半で、見る目は温かいものだった
そんな事に気付かない結良は、ガチガチに強張る体を必死に動かしていた
そして下駄箱に着いた時、それはやって来た
「あー!竜じゃん!」
ニコニコと笑みを浮かべ、光が駆け寄ってくる。相変わらず、場違いな大きな声を出しながら
「朝から会えるなんてな!昨日は何処にいたんだよ!探したんだぞ!」
朝から大きな声で叫ぶ光。周りの生徒達の視線は、必然的に光に向いた。その目には、ハッキリとした嫌悪が浮かんでいる
「なぁ、気付いてるか?皆俺たちを見てるんだぜ?でも、仕方ないよな!」
盛大な勘違いに、盛大に照れる光。確かに竜元は容姿端麗で、光も可愛らしい顔をしている。それを自覚しているからこその、勘違いなのだが。それにしても少し、痛いものがある
尚も1人でしゃべり続ける光の目に、幸運な事に結良は映っていなかった。だからこそ、未だにモジモジとしながら、嬉しそうに話している訳だが
「それで、」
終わらない光のおしゃべりを、遮る様に声がかかる
「会長、おはようございます」
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