心からの愛してる

マツユキ

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しばらくたった後、泣きつかれたのか結良は眠ってしまった

竜元は起こさないよう、そっとベットによこたえる

「…」

泣きはらした結良の目元を優しく撫でる

「いるんだろ?」

結良から視線をそらさずに竜元は言った

「…結良は、どうだ?落ち着いたか?」

リビングから顔を出したのは、心配そうな表情の加賀城だった

「…泣き疲れて眠った。結良は暫く休ませる」

「あぁ。それが良いだろう。また被害に合う可能性が高いからな」

加賀城の言葉に頷く

「…結良。お前は俺が守ってやる」

顔にかかった髪を優しく払い、言った竜元の顔が結良に近づいていく

「…結良、」

そして距離はなくなり、二人の唇が重なりあった

「…愛してる。お前の涙は見たくない」

「…俺もいるんだがな…って聞いてねぇ…」

ピンクな雰囲気を振り撒く竜元に、加賀城の声など届くはずもない

「…五月蝿い奴だ。少しは空気を読め」

やっと加賀城の方へ視線を向けた竜元だったが、その目に先程までの優しさは欠片もなかった

「お前がいたから、安心して留学したんだが?これはお前への罰だ」

「くっ…」

「ふん。効いたか?」

「そんな優しい罰でいいのかよ?」

「お前が奮闘したのは知っている。これで許してやるさ。だが、あいつらを許す事はもうしない。猶予は充分に与えたんだからな」

「…分かってるさ」

「…稜真、上に立つ者は優しさだけでは駄目だ。厳しく、辛い決断を強いられる事もある。あいつらにとって、これは良い経験となる筈だ」

竜元の言うとおり、彼等はまだ学生である。自分の行いが、どう言った結果を招くのか。それを知るいい経験となるだろう

因果応報。自分のやった行いは自分に帰ってくるのだから

「…だが、あの勘違い野郎だけは、地獄をみせてやらないとな…ククッ」

笑ってはいるが、目が全く笑っていない。そんな竜元に顔をひきつらせる加賀城

竜元と言う男は、何事にも公正で家柄や容姿等には目もくれず、常にその人の人格と能力を見ていた

だからこそ、自分が信頼して仕事を任せられる人物として、結良を選んだのだ

そして一緒に仕事をしていくなかで、結良の良いところも、悪いところも含め愛してしまった

竜元自身も、自分がこんな感情を抱くなど思ってもいないことで戸惑ったが、心は嘘をつけない

だから、あれこれと考えず素直に受け止める事にしたのだ

するとどうした事か、今度は離れ難くなってしまった

結良に視線を戻し安心して眠れるように、何度も頭を撫でる

「…結良、お前は優しすぎる。だが、それがお前の良い所でもある」

竜元は僅かに微笑み、結良の頬に触れる

「きっと、お前は人を罰する事など出来ないのだろうな。だが、安心しろ。その為に俺がいる」

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