心からの愛してる

マツユキ

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「なんで…なんでっ…!許さないぞ!」

光は芽生え始めた憎悪に逆らうことなく、実行に移していく事になる。それが更なる憎悪を生み、目的とは、かけ離れた結果になるとは知らずに



――――


あれから数ヶ月がたち、文化祭も目前となっていた

何時も通りの日常を過ごした結良。しかし、ふとした瞬間に思い出す光の目。気のせいだと思おうとしたが、やはり無理だった

そしてあの後から続く、小さな嫌がらせが、結良の中で燻る光のあの目と重なり、ピッタリと一致する

そう思うたびに、自分の考えに嫌気がさし、自己嫌悪に陥ってしまう

「ふぅ…」

嫌な気持ちが続いたせいか、気分も最悪だった

重い足取りで寮へ向かう生徒達とは、反対の方へと進み、教室の扉を開ける

当然ながら誰もいない室内。迷う事無く、自分の席へと向かった

「…痛っ!」

机に手を入れた瞬間、指に痛みがはしる。自分の手を見てみると、刃物で切れた様な切り傷が無数にあり、血が出ていた

結良は恐る恐る机の中を見る。中には目的の教科書だった、切り刻まれた本に、様々な刃物が入っていた。包丁にナイフ。どれもが入り口に刃を向けて、置かれていた

「な、に?」

数本の刃物には血がついていた

「…ッ」

恐怖で言葉が出ない結良は、固まる足を何とか動かし、走って寮へと戻っていった


結良が去って行ったあと、教室の物陰から人影が現れる

「ばーか。良い気味だ、ふふ」

結良の後ろ姿を見ながら、光は嬉しそうに笑っていた

「人のに手を出すからだ。もっと…もっと苦しめて、痛い思いをさせてやる…」

そう笑う光の顔は、酷く醜く歪んでいた



――――


「…はぁ…はぁ」

全力で走ったせいか、息がきれる。激しくなっている、心臓の音もきっとそのせいだと、結良は思おうとした

「…手当て、しないと」

震える右手を、左手で支える様に持つ。止まらない血は、右手から左手につたって、床へと落ちていた

洗面台で傷口と、血を洗い流す。水が触れた場所が、ピリッと鈍い痛みを訴えた。透明な水が、薄い赤へと変わっていくのを、結良は何処か他人事の様に眺めていた

悪口を言われるのは常だったが、あからさまな嫌がらせは、初めての事だった。そして、誰かに傷つけられるのも

自分に向けられる負の感情を、結良は受け止める事が出来ない。受け止める事が出来る、人間の方が少ないだろう。人は無意識に、嫌われる事に、恐れを感じるものだ。ましてや、危害を加えられれば、尚更だ

「…手当て、を」

ぼんやりとしたまま、手当てをし、そのまま眠ってしまった結良

これから自分の身に何が起こるのか、どうなってしまうのか…結良の心には、不安と恐怖しかなかった
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