心からの愛してる

マツユキ

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少しの間、現実逃避に走っていた結良の耳に、再び大きな声が聞こえた

「おい!俺を無視する何ていけないんだぞ!」

「光がかわいそうじゃん」

会計の園田 実そのだ みのるが、可哀そうと言いながら頭を撫でている

「…光…」

結良はぽそりと呟く

(光…確か転入生の名前も光だった様な…)

「…君は矢井田 光やいだ ひかるくん?」

「そうだぞ!」

自信満々に言う彼に、更なる疑問が浮かぶ

「一般生徒の立ち入りは、許可されていない筈だけど?」

「俺は『特別』なんだって、潤一が言ってたんだからいいんだ!」

まるで、自分がこの場所に居る事は『当然』だとでも言うようだ。矢井田の後ろにいる役員達を垣間見ると、彼等は少しも悪いとは思っていない様に見えた

「僕は、仕事をしているよ?それに、僕がここに居るのは僕が『副会長』だから、」

結良の言葉を遮るように、潤一が大きな声を出した

「だから!認めていないと言ったでしょう!」

「…君が認めないと言っても、僕が副会長なのは変わらない」

結良の言葉に、悔しそうに顔を歪める

「急に来なくなってしまった、君たちの仕事もあるんだよ?」

「そっそれは…」

「嘘はいけないんだぞ!」

矢井田の言葉に、さすがの結良も眉間に皺をよせてしまう

「…僕が、嘘を?」

「潤一が言ってたんだ!嘘に決まってる!」

(いったい彼は、何を言っているんだろうか)

「…はぁ、君たちがどう思っていても、仕事があるのは変わらないんだ。する気が無いのなら、出て行ってくれないか?」

疲労が溜まっていたせいか、ひどい頭痛が結良を襲う。酷くなる痛みに、米神をおさえる

「…今日の所は帰りますが、私はあなたを認めませんから!行きましょう光!」

潤一がそう言うと、皆口々に言葉を残し、生徒会室を後にした

「…いったい何が起こってるんだ…」

彼等の、あんな表情は見た事が無かった。仕事をしていた時も、ちゃんと受けてくれていたし、不満そうにする所なんて、見た事が無かったから。だから、副会長として、認めてくれているものと、思っていたのだ

だが、それは結良の勘違いであり、彼等が先ほど言った言葉や、表情が、本心なのだろう

仲間として、認めて貰えてなかった

それだけでも、疲労が蓄積した結良には、相当に堪えるものだった。ふと、嫌な考えが浮かんでしまう

(…会長も、そう思っている…?)

ここには居ない、会長を思う。厳格で、公正な、尊敬している会長

人を見る時、容姿などでは判断せず、その人の能力や人格を、正しく見ようとする姿勢

そんな尊敬する会長から、『認めない』と言われたら、今以上に傷ついてしまうのは明白だった

悪い考えは、消える事無く、頭の中でどんどんと増していくばかりだった

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