転生貴族のスローライフ

マツユキ

文字の大きさ
上 下
18 / 80

18

しおりを挟む
翌朝、テントから出ると朝日が暖かく出迎えてくれた

バハトの言った通り、日が昇ったからかあの生物は姿を消し、美しい平原に戻っていた

「昨日の事が嘘みたいだな…」

地獄の様な景色が嘘だったみたいだ。草原には、魔物達も戻っており穏やかな時間がながれている

「おや、もう起きておられたのですね。あぁ…あの生物はいなくなったんですね。バハトさんの言う通り、あの生物は夜にのみ現れる、と言うのは間違っていなかったと言う事だったのでしょう」

バルトが呟くように言った。昨夜はみんなあの生物を見て、顔が引きつっていたからな。強者である皆にとっても、あの生物とはかかわりたくは無いみたいだ

「中心部までどの位かかるのか分からない。早めに出発しよう」

「そうですね。都合よくこの洞窟があるとは限りません。早めに出発する事にこした事はないでしょう。皆を呼んでまいります」

そう言ってバルトはテントに戻っていった

バルトの言う通りだ。この洞窟が僕達の進んだ場所にあるとは限らない。だからこそ、少しでも早く中心部に行く必要がある


暫くして、準備を終えた皆が出て来た。昨日の事で精神的に参っていたのか、あまり眠れていない人もいたみたいで、疲れが見える

「じゃ、出発しよう」

「そうじゃな。中心部までは儂も行った事は無いが、幸いにも白虎殿が知っているからな。道に迷う事はないだろう」

『うむ。中心部はここからそう遠くはない。今日中にはつくだろう。アレは平原にしか出現しないから、安心されよ』

道を知っている白虎を先頭に、僕達は出発した




――――――出発してから数時間後


目の前には果ての無い砂丘が広がっていた

「…これが、最果ての地の中心部か…」

見渡す限り枯れた土、いや砂と言うべきだろう。終わりの無い、そんな表現がしっくりと来るほど、砂丘が広がっていた

水も無く枯れた大地は、所々地面に亀裂が入り、そんな大地に当然のごとく緑は何処にも見当たらない

「想像はしていたが…凄いな」

ダノバスがボソリと言った

当然だろう。こんな大地で生きて行けるのか。そう考えた時にたどり着く答えは、否だ

「…大丈夫です。1人だったら、大丈夫じゃないかもしれませんけど、私達は1人ではありませんから!」

ニッコリと元気よく言ったのはミーニャだった。一瞬、苦し紛れにそう言ったのかと思ったけど、どうやら違ったらしい

ミーニャの顔に、後悔は見えなかったから

「…そうだね。ミーニャの言う通りだ!僕だけだったら、やっていけない…ううん、それ所かここまで来れてなかったと思う。だけど、僕には皆が居てくれる。だから、大丈夫だ。みんなもそうでしょ?僕達には、頼れる仲間がいるんだからさ!」

「…マリス様」

「まぁ…!」

バルスとカリナの夫婦が、感極まった様に目を潤ませて僕を見ていた。止めてくれ、恥ずかしいから

「ほ、ほら!早速、僕達の拠点を決めないと!」

ずっと、見て来る視線に恥ずかしくって、先を促してみたは良いけれど、これ進んでも進んでも砂漠?だよね

だったら、何処にいっても一緒かもしれないな

「マリス様の言う通りだね。さっさと拠点を決めて、生活の基盤を整えないと。それに、ここは最果ての地。つまり、未開の大地だから何があるか分からない。調査もしないとね!」

何処か嬉しそうに…いや、興奮したようにウキウキとして見えるのは気のせいかな?

「あいつ…暴走しなければ良いがな…」

「暴走?」

不吉な言葉をボソリと言ったダノバス

「あぁ、マリス様は知らないのか。あいつはな、良く言えば探究心があるが、行き過ぎる事が多々あってな。特に未知の物とか、未開のとか。誰も知らない事を探究する事が好きみたいでな。それは良いんだ…良いんだがな…」

ダノバスの顔を見る限り、コリンの暴走は何度もあったのだろうと察した

「ま、いいじゃないか。探究心があるのと無いのとじゃ、雲泥の差が出る事だってあるんじゃ。求める心が今は大事じゃよ」

朗らかに笑いながら、バハトが言った。確かにその通りだなとも思う。僕がそうだったから

興味のある事を、知れる喜びは僕の心を温かくしれくれた。屋敷にいた時は、僅かな時間しか取れなかったけど、屋敷を出た今、それが毎日続くと思うととても嬉しいものだ

「俺は、あんたも心配なんだよ!暴走なんかするなよ!?あんたが暴走したら、可愛げ何てあったもんじゃないんだからな!」

念を押す様にバハトに詰め寄っている。これは、過去バハトもコリンと同様に暴走してきたんだろうな…

「何を言う!儂は暴走などせんわ!」

バハトはダノバスの頭を叩くと、さっさと何処かに行ってしまった

ダノバスの背中が不憫に思えてしまって、肩を軽く叩いた

「…き、きっと大丈夫だよ」

こんな言葉しかかける事が出来ない僕を、許してくれ

「…くっ…!」

僕が慰めているって気づいたのか、ダノバスの目に薄らと涙が幕を張っていた



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

処理中です...