きらきら果つる、美しき月

江胡 衣

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4.萌え立ち、芽吹く

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 それがもうどれくらいの大きさになったのかはわからないけど、大きさに反比例するかのように涼也とのなにか――当たり前だったふたりきりの世界なのか、またはそれに似たなにかなのか――を、失っていくようで、ときどき怖くなった。そうしているのは、自分自身なのに。でも、もう、止まることはできなかった。だってわたしは進むことしかできない。



 毎週かならず二日、帰りが遅くなることを涼也は責めたりしなかった。
 晩御飯を用意していなくても、部屋の掃除ができていなくても、その二日間にかんしては何も言わなかった。そのうち月曜日と木曜日は涼也もどこかに出かけ帰ってこなくなった。

 虎汰と会ったあと、日捺子は涼也のいない家で朝までを過ごした。
 寂しかった。

 でも、どこに行っているかとか、帰ってきてほしいとか、そういうことを日捺子は言葉にできなかった。そのかわり、涼也がいるとき日捺子は虎汰のことをたくさん涼也に話した。背は170cmくらい。金髪はなんか元気が出るからしてるんだって。ダンスの大きい大会で優勝したことがあってトロフィーみたいのがあって、でも埃かぶちゃってるの、大切にしてないみたい。玉子焼きは甘いのが好きで、目玉焼きは醤油派だって、うちと同じだね。わたしが話したら涼也くんも同じように、わたしの知らない涼也くんの時間のことを話してくれるかもしれない、そう思ったから。でも日捺子が話すたび涼也はへぇ、と気のない返事をするだけで、自身のことを話すことはしなかった。しばらくして日捺子は、興味無い?と聞いた。涼也はそんなことはないけど、もう、いいよ、と言い、日捺子にきれいな作り笑顔を向けた。

「来週の土曜出かけるから、日捺子もどこか行って来たら」

 日捺子は涼也の腕を掴んだ。涼也くんが遠くなってしまう気がした。両手ですがるように握る。拒絶。涼也の目が言っている。離しなさい。

「分かった。そうする」

 するりと、手をほどく。涼也は日捺子に背を向ける。





 土曜日、空いてる?翌週の月曜日に尋ねると虎汰は即答した。

「仕事だけど誰かと変わってもらう」
「だいじょうぶなの?」
「別に俺である必要はないし、だいじょうぶ」

 そんなことないよ、とか、虎汰くんに教えて欲しい生徒さんいるんじゃない、とか、そういうことを言おうかと思って、やめた。言葉の空々しさが、口にしなくても分かったからだ。

「ならよかった。せっかくだから何するか決めておく?時間あるし」

 それよりその日を楽しみにしているほうが、救われる。たぶん。わたしも、虎汰くんも。
 そうして、平日ではない土曜日の今日、わたしは虎汰くんに会いに来ている。時間はまだお昼をすぎたばかり。
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