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第4章 憧れのレオン様
第35話 ルーセル辺境伯
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「さて、まだ名前を聞いていなかったな。私はエリオット·ド·ルーセルだ。君の雇い主ということになる。働き次第では取り立てることも考えよう」
つまり期待している、ってことね。頑張りますとも。全てはレオン様のために!
それにしてもルーセル様はレオン様のお父上だけあってそっくりだ。年齢設定では確か35歳くらいのはずだけど肌も瑞々しくて若々しい。
「テアと言います。お世話になります」
私は深々と頭を下げる。なんとしても活躍してレオン様のお側に立たねばならない。原作ではレオン様は左腕を失った。左腕が戻るのはレオン様ルートだけ。それ以外では隻腕のままだ。私の目の前でレオン様の大切な左腕を失くさせるわけにはいかない。
「当面はヘルクス子爵に任せる。よろしく頼んだぞ」
「はっ!」
ヘルクス子爵も恭しく頭を下げる。
「さて、テアよ。これからは私が上司となるわけだが、君の能力を正しく把握しておきたい。教えてくれるな?」
「もちろんです」
即答。
能力を話せ、か。冒険者同士ならあれだけどね。これからはヘルクス子爵の指示で動くわけだから、何が出来て何ができないか正しく伝えないと使えないだろう。それに能力を隠すのも信用を得るにはいい選択とは言えないはずだ。
「確かに一部魔法も使えますが、私の能力の本質は異能です」
神と悪魔の手を召喚し、自らの身体を30センチ程浮かせてみせた。
「異能か。普通に見ると魔法と異能の区別は難しいが……」
「魔法は魔力を練るタメの時間が必要ですけど、異能にはそれがないんです。契約も必要ありませんし。そして私の異能は神と悪魔の手という普通の人には見えない手を操って対象を癒やしたり破壊したりできます」
ぶっちゃけ普通に知ったところで対処しづらい能力だよねこれ。
「普通の人には視えないのか。君が暗殺者でなくて良かったよ」
「本当にそうですな」
一応視えるようになる魔法もあるっちゃあるんだよね。それにキルーイにも視えていたみたいだし、特定の異能なら視えるのかもしれない。
「見えるようになる魔法もありますよ。例えばトゥルーアイっていう幻想打破の魔法とかですね。後は特定の異能でしょうか。ルシフェロンのキルーイには私の手が視えていましたし」
「き、キルーイだと!? もしやルシフェロン総統キルーイ=ズラーブのことか!」
キルーイの名前を聞いてルーセル様が立ち上がる。あ、これ口が滑った?
でもキルーイはもう既に捕まってるから問題ないかな。その情報がここまで伝わってるかは知らないけど。
「ええ、そうですね。危うく捕まって奴隷にされるところでした。でももう捕まってますよ。ウォルノーツの街で引き渡しましたから」
「まさかテア、君が捕まえたのかい?」
「風の旅人のカインさんの協力あってのことですけど」
あれは私一人では無理だった。殆ど不意打ちみたいなやり方での勝利だったからね。
「それが本当なら凄いことだぞ。キルーイ=ズラーブといえば裏社会での巨頭であり、最高の暗殺者と謳われる男だ。そんな男を捕まえたのなら貴族の養子の話だってあったかもしんな」
「実はその話を聞いて逃げてきました……。その、あまり良くない噂を耳にしていた方でしたので……」
裏を取られたらどうせバレるのだ。ここで話すのもありかもしれない。それに、エンゾはルーセル様とは敵対派閥だし。
「ほう、誰だねそれは?」
「不敬罪とか問われたりしません?」
一応確認。言質は取っておかないと。
「それは心配いらん。それとその噂というのも興味あるしな。ヘルクスも内密にするように」
「わかりました」
「はい、それはティボー家です。その、選民思想の強い家と聞いておりましたので」
公式設定ではティボー家は貴族主義で選民思想が強く、民草を大切にする第一王子が気に入らないらしい。エンゾは近い将来クーデターを企てる。そのときに気の弱い第二王子を王位に就かせ、傀儡にしようとするような奴なのだ。
「ティボー家か。こう言ってはなんだがいい判断だったな。あいつは好かん」
私の話を聞き、ルーセル様は腕を組んでウンウンと頷いた。派閥が敵対していることを知っているのでこの反応は予想通り。上手くルーセル様の役に立てばエンゾから逃げたことも擁護してくれるかもしんない。
「全くですな。大方テア嬢の力を利用したいがためのことでしょう。自分の家の名声を高められれば良し、無理なら使い潰されるだけでしょう」
ヘルクス子爵も結構嫌っているようだ。作中でも絵に書いたようなゲス野郎だったからさもありなん、かな。
「一応話の裏は取らせてもらうが、安心するといい。ここにいればティボー家の干渉などさせんからな。なんなら私の派閥の貴族に養子として迎え入れる方法もある」
ルーセル家の派閥の貴族に養子か。それならレオン様との繋がりを取ることも可能かもしれない。ただそれは少なくともレオン様に気に入られてからだね。あからさまなのは減点対象でしょ。
「私にその価値があると判断したなら考えます。今はこの魔物の襲撃が度々起こる現状をなんとかしたいですね」
「それだな。魔物の襲撃がこうも増えたのは近年になってからだ。それまでは他の領地とそう変わらなかったんだが」
これについては明確な理由がある。あるんだけど、私がそれを知っているのはあまりに不自然過ぎるだろう。だから月日をかけて気づかせるしかないかもしんない。
「誰かが人為的に起こしているんでしょうけどね」
「ほう、その根拠は?」
「魔物同士は仲間じゃないからです。捕食し捕食される仲であって、わざわざ徒党を組んで人間の住処を襲うなんてしませんよ」
一般的にストンピートと呼ばれる魔物の異常発生による襲撃は一種類の魔物で構成されている。例外は超強力な魔物から逃げるために魔物達が移動を開始した場合だ。
それなのにこの街を襲う魔物は様々な魔物の混成部隊なんだよね。つまり何者かの意思が介在しているということだ。
「道理だな。ただ狙いがわからん」
「それは私にもわからないです。でも成果が上がらないならそろそろ焦れて来るんじゃないですかね?」
本格的に動いてくるのは2年後ですけどね。レオン様の左腕は私が守る!
つまり期待している、ってことね。頑張りますとも。全てはレオン様のために!
それにしてもルーセル様はレオン様のお父上だけあってそっくりだ。年齢設定では確か35歳くらいのはずだけど肌も瑞々しくて若々しい。
「テアと言います。お世話になります」
私は深々と頭を下げる。なんとしても活躍してレオン様のお側に立たねばならない。原作ではレオン様は左腕を失った。左腕が戻るのはレオン様ルートだけ。それ以外では隻腕のままだ。私の目の前でレオン様の大切な左腕を失くさせるわけにはいかない。
「当面はヘルクス子爵に任せる。よろしく頼んだぞ」
「はっ!」
ヘルクス子爵も恭しく頭を下げる。
「さて、テアよ。これからは私が上司となるわけだが、君の能力を正しく把握しておきたい。教えてくれるな?」
「もちろんです」
即答。
能力を話せ、か。冒険者同士ならあれだけどね。これからはヘルクス子爵の指示で動くわけだから、何が出来て何ができないか正しく伝えないと使えないだろう。それに能力を隠すのも信用を得るにはいい選択とは言えないはずだ。
「確かに一部魔法も使えますが、私の能力の本質は異能です」
神と悪魔の手を召喚し、自らの身体を30センチ程浮かせてみせた。
「異能か。普通に見ると魔法と異能の区別は難しいが……」
「魔法は魔力を練るタメの時間が必要ですけど、異能にはそれがないんです。契約も必要ありませんし。そして私の異能は神と悪魔の手という普通の人には見えない手を操って対象を癒やしたり破壊したりできます」
ぶっちゃけ普通に知ったところで対処しづらい能力だよねこれ。
「普通の人には視えないのか。君が暗殺者でなくて良かったよ」
「本当にそうですな」
一応視えるようになる魔法もあるっちゃあるんだよね。それにキルーイにも視えていたみたいだし、特定の異能なら視えるのかもしれない。
「見えるようになる魔法もありますよ。例えばトゥルーアイっていう幻想打破の魔法とかですね。後は特定の異能でしょうか。ルシフェロンのキルーイには私の手が視えていましたし」
「き、キルーイだと!? もしやルシフェロン総統キルーイ=ズラーブのことか!」
キルーイの名前を聞いてルーセル様が立ち上がる。あ、これ口が滑った?
でもキルーイはもう既に捕まってるから問題ないかな。その情報がここまで伝わってるかは知らないけど。
「ええ、そうですね。危うく捕まって奴隷にされるところでした。でももう捕まってますよ。ウォルノーツの街で引き渡しましたから」
「まさかテア、君が捕まえたのかい?」
「風の旅人のカインさんの協力あってのことですけど」
あれは私一人では無理だった。殆ど不意打ちみたいなやり方での勝利だったからね。
「それが本当なら凄いことだぞ。キルーイ=ズラーブといえば裏社会での巨頭であり、最高の暗殺者と謳われる男だ。そんな男を捕まえたのなら貴族の養子の話だってあったかもしんな」
「実はその話を聞いて逃げてきました……。その、あまり良くない噂を耳にしていた方でしたので……」
裏を取られたらどうせバレるのだ。ここで話すのもありかもしれない。それに、エンゾはルーセル様とは敵対派閥だし。
「ほう、誰だねそれは?」
「不敬罪とか問われたりしません?」
一応確認。言質は取っておかないと。
「それは心配いらん。それとその噂というのも興味あるしな。ヘルクスも内密にするように」
「わかりました」
「はい、それはティボー家です。その、選民思想の強い家と聞いておりましたので」
公式設定ではティボー家は貴族主義で選民思想が強く、民草を大切にする第一王子が気に入らないらしい。エンゾは近い将来クーデターを企てる。そのときに気の弱い第二王子を王位に就かせ、傀儡にしようとするような奴なのだ。
「ティボー家か。こう言ってはなんだがいい判断だったな。あいつは好かん」
私の話を聞き、ルーセル様は腕を組んでウンウンと頷いた。派閥が敵対していることを知っているのでこの反応は予想通り。上手くルーセル様の役に立てばエンゾから逃げたことも擁護してくれるかもしんない。
「全くですな。大方テア嬢の力を利用したいがためのことでしょう。自分の家の名声を高められれば良し、無理なら使い潰されるだけでしょう」
ヘルクス子爵も結構嫌っているようだ。作中でも絵に書いたようなゲス野郎だったからさもありなん、かな。
「一応話の裏は取らせてもらうが、安心するといい。ここにいればティボー家の干渉などさせんからな。なんなら私の派閥の貴族に養子として迎え入れる方法もある」
ルーセル家の派閥の貴族に養子か。それならレオン様との繋がりを取ることも可能かもしれない。ただそれは少なくともレオン様に気に入られてからだね。あからさまなのは減点対象でしょ。
「私にその価値があると判断したなら考えます。今はこの魔物の襲撃が度々起こる現状をなんとかしたいですね」
「それだな。魔物の襲撃がこうも増えたのは近年になってからだ。それまでは他の領地とそう変わらなかったんだが」
これについては明確な理由がある。あるんだけど、私がそれを知っているのはあまりに不自然過ぎるだろう。だから月日をかけて気づかせるしかないかもしんない。
「誰かが人為的に起こしているんでしょうけどね」
「ほう、その根拠は?」
「魔物同士は仲間じゃないからです。捕食し捕食される仲であって、わざわざ徒党を組んで人間の住処を襲うなんてしませんよ」
一般的にストンピートと呼ばれる魔物の異常発生による襲撃は一種類の魔物で構成されている。例外は超強力な魔物から逃げるために魔物達が移動を開始した場合だ。
それなのにこの街を襲う魔物は様々な魔物の混成部隊なんだよね。つまり何者かの意思が介在しているということだ。
「道理だな。ただ狙いがわからん」
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