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第4章 憧れのレオン様

第32話 襲撃されてたアルノーブル

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 あの赤い羽根はなぜか時間が立つと消えてくれていた。多分だけど、あの赤い羽根は魔神の血に関係しているのだろう。もう殺意の呼び声に意識を任せるのは止めよう。でないと本当にラスボスになってしまいかねないからね。

 で、森を抜けてしばらく進んだら前方は崖だった。ただ右手はなだらかな斜面になっており、そこを降りた遥か先に街らしきものが見える。多分あれがアルノーブルだろう。道なりに行くとかなりの長い道のりになりそうだ。

「当然だけど真っ直ぐに行くべきよね」

 神と悪魔の手に乗ったまま真っ直ぐ街を目指す。崖を降りることになるんだけど、私の眼下には草原が広がっていた。

 まっすぐ進んでいくとやがて街の城壁が見て取れ、同時に黒い影がたくさん見える。もしかして魔物達に襲われている?

「これは急ぐべきだよね」

 私は速度を上げ、草原の上を飛んでいく。やがて魔物の姿もはっきりとわかるほどに近づくことができた。街はその遥か先だ。それにしてもなんちゅう数やねん。

 並み居る魔物たちの上を飛んでいく。せっかくだし数を減らしていこう。破滅の爪牙は切り札だから使わないけどね。

「消し飛べ!」

 赤い魔法球を大量に生み出し、地上にいる魔物達に向けて投下する。赤い魔法球は地面や魔物に触れると爆発を起こし、周囲を巻き込んでいった。爆発に巻き込まれた魔物達は次々と倒れていく。中には5メートルくらいありそうな牛頭の化け物や鬼もいた。そいつ等が倒れればいい足止めになりそうだ。

 魔物達の手の届かない上空から爆発する魔法球をばら撒くだけの簡単なお仕事だが効果は抜群だった。そうやって魔物たちを蹴散らしつつ街を目指すと、ついに前線まで辿り着く。前線での陣形は大盾を持った前衛が魔物たちを阻み、中衛が長槍で突く。そして後方で矢を放ち数を減らすというやつか。中世でよく使われたファランクスみたいなやつかな?

 流れ矢にあたったら洒落にならないので高度を上げる。そして後方部隊の上に出た。そこから魔法球を飛ばし、魔物達を攻撃する。これで敵ではないとわかってもらえるだろう。しかし数が多く、押されている。

 いや、大盾を持った前衛が自ら下がっているのか。そして後ろで待機していた大盾の部隊と入れ替わる。おお、そうやって前線が疲弊しないよう維持しているのか。下がった大盾部隊の中には見たところ怪我人もいるようだ。これは私の出番だね。

 私は攻撃の手を止め地上に降り立つ。

「な、なんでこんなところに子供が!?」

 私を見て驚きの声を上げる人もいれば、無視して矢を射る者もいる。かくいう私も周りを無視して片膝を付いている兵士に向かっているんだけどね。歩き方からして右脚を怪我したのだろう。

「怪我をした者は後方に下がれ! 手の空いている者は手を貸すんだ」

 指揮をしている部隊長の指示に従い兵士が怪我人に肩を貸す。そこへ私が近づき声をかけた。

「私は治癒士です。その方を治します!」

 アルノーブルの兵士はレオン様の兵士でもあるのだ。怪我をしたのなら喜んで治しますとも。

「なんでこんな前線に子供が!?」
「嬢ちゃん治癒士か。右脚をやられた。骨にヒビが入っていると思うが治せるか?」

 やはり右脚か。ヒビだけなら直接治癒しても問題ないね。

「治します」

 ハッキリ答え、神の手を兵士の右脚に触れさせる。そして治れと念じた。すると右脚が淡い光に包まれる。

「痛みが引いていく……。助かったぜ嬢ちゃん、これでまだ戦える」
「こんな小さい治癒士うちの街にいたっけか? まぁ治癒士は貴重だからいっか。すまんが他の怪我人も診てやってくれ」
「はい、お任せください」

 戦闘は続いているしレオン様を探すのは後だね。今はこの街のために命を懸けて戦っている兵士たちの負担を減らさないと。

 そして私は怪我人の治癒のために奔走を始めた。今のところ前線は崩れておらず魔物たちを押し返している。問題は後ろの方にいた5メートル級の巨大モンスターだね。何体かは葬ったけど、まだ結構な数がいた。先に全部倒してしまえば良かったかな?

「大型モンスターの接近を確認。ミノタウロスとジャイアントボアです!」
「魔道士部隊、バーストボムで迎撃用意!」

 ボアっていうと猪か。突進力ヤバそう。あの大きさだと前衛の大盾部隊は壊滅するかもしれない。それにしてもわからんのはミノタウロスの持つ巨大な斧だね。どこから調達してるんだろ。

「撃てー!」

 魔道士部隊が一斉に赤い魔法球を放つ。私が使ったやつと似たような魔法なのだろう。魔法球は弧を描いて飛び、近づいてきたミノタウロスに当たると爆発を起こした。爆発した範囲は半径1メートル程とそう大きくはない。当然一発では止まらなかった。

「撃て撃てーっ!」

 さらに魔道士部隊がバーストボムを放つ。オークとかなら一撃なんだろうけど、大型を一撃で倒すには火力不足のようだ。そして大きな猪達が前衛の大盾部隊を蹴散らし始める。つかこっち来てるし!

「拘束しろ!」

 悪魔の手により、あちこちに魔法の網を設置する。といっても手1つにつき一度に1つしか設置できないんだけどね。

 悪魔の手より生み出されたこの網はもちろんただの魔法の網じゃない。対象に触れた瞬間その網が身体にまとわりつき、絡め取るという超有能な拘束スキルなのだ。問題はこの拘束スキル、網を飛ばすんじゃなくて設置するタイプなんだよね。まぁ、悪魔の手が人からも魔物からも見えないのでやりようは幾らでもあるんだけど。

 突然眼の前に現れた魔力網に捕われ、4体のジャイアントボアがその身を拘束される。横に倒れて動けなくなれば他の兵士が仕留めてくれるだろう。

 ジャイアントボアはこの4体だけのようだ。なら後はミノタウロスだけど、二足歩行の巨大生物なんて膝を破壊してしまえば動けないからね。後は楽勝かな。

 そして1時間後、多くの魔物達の亡き骸を残し、魔物の襲撃は終わった。
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