ラスボス廃棄少女は幸せになりたい

まにゅまにゅ

文字の大きさ
13 / 51
第2章 新しい生活

第12話 Aランクパーティ風の旅人2

しおりを挟む
「えーっと、まぁそんな感じです……」

 ちょっと困った風を装い私は答える。訳あり感満載にしておけば追及されないかなーなんて思ったりと。

「そうなのか。助けてくれてありがとうな。俺はカイン。Aランクパーティ風の旅人のリーダーをしている。あいてて……」

 カインは熊に抉られた左腕を押さえ、顔を苦痛に歪めながら自己紹介をする。戦闘が終わり気が抜けたら痛みが来たのだろう。流れる血の量も少なくない。早いとこ応急処置なり消毒しないとダメそうだ。

「ちょっとカイン大丈夫なの?    待ってて、すぐに回復魔法を……!」

 ん?
 消毒をせずに回復魔法?

「だめ!」
「え!?」
「いや、回復魔法で傷を治さないとダメだろうこれは」

 うーん、この世界ではこれが普通なのだろうか?
 野生の動物の爪なんて雑菌の塊だ。つまり傷痕には大量の雑菌がいるわけで、そのまま傷を塞げば雑菌ごと閉じ込めることになる。破傷風とか敗血症とかになったりしないのだろうか?

「ちゃんと消毒しないと大変なことになります。私がやりますから」

 神の手を生み出し、カインの傷口に触れさせる。原作にそんなシーンないけど消毒も多分できるだろ。無理なら焼くしかない。

「雑菌消えろ!」

 とりあえず念じてみた。すると傷口が光に包まれる。これは上手くいったっぽい。鑑定とかできたらなぁ。ま、大丈夫でしょ。

「よし、治すね。治れ!」

 そしたら後は治癒の力を使うだけだ。またも腕が淡い光に包まれ、みるみるうちに傷が塞がっていく。

「凄いわね、私の治癒魔法より凄いかも」
「しかし雑菌ってなんだ?」
「ふぅ……、痛みがひいていくよ。凄い楽になった」

 カインの表情が和らいでいく。他の2人は私の治癒の力に驚いているようだ。確か原作でも治癒魔法はあったけど、普通はどの程度のものなのだろうか?

「いや、助かったよ、ありがとう。世話になったね。ところで嬢ちゃん、さっきから気になっていたんだけど、宙に浮いてない?」
「あ……」

 すっかり忘れていた。私は今見えない手を椅子がわりにして座っているのだ。他の人が見たら宙に浮いて見えるよね。

「もしかして名のある魔道士なのかしら?」
「それより雑菌ってなんだ?」

 女性の方は私が高名な魔道士に見えるらしい。そして魔道士の方は雑菌というワードが気になっているようだ。そういや殺菌や消毒の概念が生まれたのって確か1800年代だった気がする。顕微鏡なんてないだろうし雑菌なんて言葉自体存在しないだろう。

「えーっと、そんな大それた者じゃないです。それと、雑菌というのは目に見えないくらい小さい生物です。それが体内に入ると色々悪さをして時には人を死に至らしめることさえあるんですよ」
「目に見えないくらい小さいのになんでその存在を知っているんだ?」

 うわっ、そこをつきますか。でも確かに目に見えないものを信じろ、というのは難しいだろう。なら実例で理解させるしかない。

「それを説明するのは難しいです。ですが傷を治癒魔法で治したはずなのに腫れあがったり、後々痛くなったりしたという話とかは聞いたことがないですか?」
「たまにそういう話を聞くな。毒を持っていない魔物のはずなのに数日後に身体に毒があった、なんて話は割とある話だ。それで怪我を治す際に毒消しの魔法を使ったり状態異常を前もって確認することもあったが、それでも何故か後になって毒に犯されていたという話もある」
「そうそう。あれは不思議よね。呪いでもないし何故なのか誰にもわからなかったわ。その治療になると高額になるから、ホント困るのよね」

 やっぱりあったんだ。しかし消毒の概念を作るとしてもどうやって日常的に消毒させればいいんだろ。アルコール消毒の場合濃度が70%ないと効果が著しく落ちてしまう。

 40%ほどだと熱めにして長い時間付けておかないとほぼ効果がない。漫画とかで消毒だと言ってウォッカを使うシーンがあるけど、普通のウォッカは40%前後だから濃度足りないんだよね。

「そう、その原因こそが目に見えないほど小さい生物のせいなら説明つきますよね?」
「確かにそれなら説明がつくな。それを防ぐのが消毒とかいう行為なのか。是非それを教えてもらえないだろうか?」
「もちろんタダとは言わない。効果が確認できないからあまり高額を払うことは出来ないが、金貨2枚でどうだろう?」

 金貨2枚……。
 その価値が私にはわからないんだけど。金貨といっても原作には金貨の価値がどの程度なのかという描写があまりないのよね。あったとしても覚えがない。

「あの、それならウォルノーツの街までの案内と護衛、それと通行税があるならそれを出してもらうということでどうでしょう。私一文無しですし」
「一文無しってなんだ?」

 あ、これ通じない言葉か。喋っているのは日本語なのに日本の言い回しが通じないって変な感じよね。

「お金がない、ってことです」
「怪我も治してもらったし、一週間分の生活費も出すよ。銀貨60枚くらいあれば足りるはずだ」

 うーん、これは銀貨100枚で金貨1枚な感じだろうか。今の相場だと金は銀の80倍くらいだったかな。ほとんどのファンタジーはわかりやすいように銀貨10枚で金貨1枚の価値なのにね。それを言ったらなんで白金が金より高価なのか、なんてツッコミもあるけどそこは異世界だからで済ませて良いと思う。

「ありがとうございます。あとできれば冒険者ギルドに案内して欲しいです」
「そのくらいはお安い御用よ。私たちも寄らないといけないし。で、悪いんだけどツインベアーの素材剥ぐからちょっと待っててね」
「はい、そのくらい待ちます」

 かくして私はウォルノーツまでの案内と護衛を手に入れたのだった。そしてこの出会いがもしかしたら私の運命の別れ道だったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...