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第1章 廃棄少女テア
第3話 私はラスボス廃棄少女3
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さて、まず生き抜くために必要なのは人里に降りることだろう。とにかく推しのレオン様に会うためには情報が必要だ。そしてそこにたどり着くために必要なのが川を見つけることだ。
あの乙女ゲームの世界に水道設備なんかないだろうから水は必須。つまり川沿いに下っていけばいずれ人里にたどり着く可能性は高いのだ。そして私が生き抜くためにも水は必要だ。魚も捕れる。火は私の異能で起こせるだろうし。
「つまり、ライフラインと人里にたどり着く。このふたつを確保するには川を探すのがベターよね」
誰が聞いてるわけではないが、声に出す。だって寂しいもん。精神の安定を図るためにも独り言は大事なのよ。はい、自己弁護完璧。私の勝ち!
「って、誰と勝負してんのよ」
と、誰もいない虚空に『なんでやねん』を繰り出す。
虚しい……。
「とにかく行くしかない。長距離歩くの大変だし、手に乗っていこう」
腕を操作してお尻の下、膝の裏、背中を2本ずつの腕で支えれば椅子のできあがりね。そしゆっくりと腕を操り、空を飛ぶ。あまり高いと怖いのでとりあえず木より高く飛ぼう。
ゆっくりと舞い上がり、木の上に到達。辺りを見回すと木だらけでよくわかんない。当たり前か。全体を見たいならもっと高くか。
「えーい、女は度胸よ!」
更にゆっくりと上昇する。結構高いけど、割と広く見渡せる所まで来た。辺り一面の緑はこの森林の広さを物語っていた。ゆっくりと回転し、周りの景色を眺める。うーん、異世界とかじゃなかったらきっとこの雄大な景色に魅了され、いつまでも眺めていたい衝動に駆られていただろう。
しかし悲しいかな、この世界にはいるのだ。何がって?
ま・も・の・だよぉっっ!!
「ひょえっ!?」
空を飛ぶ恐竜?
プテラノドンにしては首が長いか。思い出した、確かワイバーンだ。とにかく目があっちゃったよ。
よし、逃げよう。
私は慌てて急降下する。ちょっと怖い。私は絶叫マシーンなんて乗ったことがないが、きっと苦手に決まっている。なぜなら乙女だから!
「にょへぇーーーーっ!!」
訳のわからない奇声をあげ、涙目になりながら急降下。木々の間をバサバサと縫うもんだから枝が当たってちょっと痛い。そして枝の折れる音もなんかやかましい。それでも今、私は地面すれすれにぷかぷかと浮いている。助かった……かな?
結論。世の中そんなに甘くない。
ワイバーンが私を追って降下しているのか、鳴き声が聞こえる。その音はどんどん近くなってきた。やり過ごすのは無理か?
渡る世界は魔物ばかり?
と、とにかく逃げるのがダメなら戦うしかない。まずはもう少し広い所に誘おう。私はラスボスなんだし、きっと凄い力があるはずよ!
ダメ元で腕で自分を運びながら移動する。しかし魔物の気配は近い。まだちゃんと使い方覚えていないのにぃ!
少し広めのとこに出たので地に足をつける。魔物は私の上空にいる。羽ばたいて私を襲うタイミングを図っているのだろう。高度はそれほどでもない。私の能力もきっと届くだろう。
「悪魔の腕!」
2本の腕を操り、ワイバーンに向かって飛ばす。この腕は多分ワイバーンにも見えていないと思う。腕の速度は思ったよりも早い。2秒程でワイバーンの首に接近。そして掴む、というよりは手を添える。
首太い!
「破壊しろ!」
原作でテアのやっていた行動を真似てみる。するとワイバーンの首が弾け飛んだ。そして真っ逆さまにワイバーンの首が降ってくる。もちろん身体も降ってきた。
ズシン、と地面が揺れる。
ワイバーンの首と体が地面に落ちたのだ。これ、どうしたらいいんだろうか?
思い出せ、私には多少なりともラノベの知識がある。無料サイトで投稿小説を読んで来たのはきっとこのためだったに違いない。まずワイバーンの肉は高級品である(偏見)。そして魔物の身体には魔石というものがあって、高く売れる(期待)!
よし、とりあえず先ずは魔石だ。確かこういうのって大体心臓辺りだよね?
腕を操り、ワイバーンの身体に触れる。
「透過」
するとすーっ、と腕がワイバーンの身体の中へと入っていった。なんという便利な能力。これで定番の収納魔法があれば言うことないんだけどな。でもあのゲームにそんな設定なかったね。今からでもいいからテアちゃんにつけませんか、運営様。
「あった」
ワイバーンの身体をまさぐる感覚が伝わり、何か石のような硬いものが手に触れた。なんで透過してるのに感覚があるんですかね……?
うん、考えるのはよそう。ゲームの設定なんて意外と探せばガバがあるもんだ。いちいちそれに文句を言うのも無粋だろう。程度によるけど。
「よし、えぐり出すよ! 破壊しろ!」
もうひとつの腕で心臓付近を破壊する。肉がごっそりこそげ落ち、銀色に輝くバレーボールくらいの大きさの石がコロリと落ちた。結構でかいな。でも持っていこう。村の近くに着いたら埋めて隠せば大丈夫でしょ。
「これをお金に変えられるのはいつになるかな」
うーん、なるべく早く街に入りたい。先に着くのは村か街かはわかんないけど、幸い川のだいたいの位置を確認できたのは大きい。
「よし、とりあえず首を持っていこう」
グロいけど私一人の食糧としてなら数日分にはなるだろう。美味しいことを期待したい。腕2本でワイバーンの首を運び、魔石は私が抱えて低空飛行で川へ向かうことにした。
川へ着いたら食事がしたい。お腹空いたな……。
あの乙女ゲームの世界に水道設備なんかないだろうから水は必須。つまり川沿いに下っていけばいずれ人里にたどり着く可能性は高いのだ。そして私が生き抜くためにも水は必要だ。魚も捕れる。火は私の異能で起こせるだろうし。
「つまり、ライフラインと人里にたどり着く。このふたつを確保するには川を探すのがベターよね」
誰が聞いてるわけではないが、声に出す。だって寂しいもん。精神の安定を図るためにも独り言は大事なのよ。はい、自己弁護完璧。私の勝ち!
「って、誰と勝負してんのよ」
と、誰もいない虚空に『なんでやねん』を繰り出す。
虚しい……。
「とにかく行くしかない。長距離歩くの大変だし、手に乗っていこう」
腕を操作してお尻の下、膝の裏、背中を2本ずつの腕で支えれば椅子のできあがりね。そしゆっくりと腕を操り、空を飛ぶ。あまり高いと怖いのでとりあえず木より高く飛ぼう。
ゆっくりと舞い上がり、木の上に到達。辺りを見回すと木だらけでよくわかんない。当たり前か。全体を見たいならもっと高くか。
「えーい、女は度胸よ!」
更にゆっくりと上昇する。結構高いけど、割と広く見渡せる所まで来た。辺り一面の緑はこの森林の広さを物語っていた。ゆっくりと回転し、周りの景色を眺める。うーん、異世界とかじゃなかったらきっとこの雄大な景色に魅了され、いつまでも眺めていたい衝動に駆られていただろう。
しかし悲しいかな、この世界にはいるのだ。何がって?
ま・も・の・だよぉっっ!!
「ひょえっ!?」
空を飛ぶ恐竜?
プテラノドンにしては首が長いか。思い出した、確かワイバーンだ。とにかく目があっちゃったよ。
よし、逃げよう。
私は慌てて急降下する。ちょっと怖い。私は絶叫マシーンなんて乗ったことがないが、きっと苦手に決まっている。なぜなら乙女だから!
「にょへぇーーーーっ!!」
訳のわからない奇声をあげ、涙目になりながら急降下。木々の間をバサバサと縫うもんだから枝が当たってちょっと痛い。そして枝の折れる音もなんかやかましい。それでも今、私は地面すれすれにぷかぷかと浮いている。助かった……かな?
結論。世の中そんなに甘くない。
ワイバーンが私を追って降下しているのか、鳴き声が聞こえる。その音はどんどん近くなってきた。やり過ごすのは無理か?
渡る世界は魔物ばかり?
と、とにかく逃げるのがダメなら戦うしかない。まずはもう少し広い所に誘おう。私はラスボスなんだし、きっと凄い力があるはずよ!
ダメ元で腕で自分を運びながら移動する。しかし魔物の気配は近い。まだちゃんと使い方覚えていないのにぃ!
少し広めのとこに出たので地に足をつける。魔物は私の上空にいる。羽ばたいて私を襲うタイミングを図っているのだろう。高度はそれほどでもない。私の能力もきっと届くだろう。
「悪魔の腕!」
2本の腕を操り、ワイバーンに向かって飛ばす。この腕は多分ワイバーンにも見えていないと思う。腕の速度は思ったよりも早い。2秒程でワイバーンの首に接近。そして掴む、というよりは手を添える。
首太い!
「破壊しろ!」
原作でテアのやっていた行動を真似てみる。するとワイバーンの首が弾け飛んだ。そして真っ逆さまにワイバーンの首が降ってくる。もちろん身体も降ってきた。
ズシン、と地面が揺れる。
ワイバーンの首と体が地面に落ちたのだ。これ、どうしたらいいんだろうか?
思い出せ、私には多少なりともラノベの知識がある。無料サイトで投稿小説を読んで来たのはきっとこのためだったに違いない。まずワイバーンの肉は高級品である(偏見)。そして魔物の身体には魔石というものがあって、高く売れる(期待)!
よし、とりあえず先ずは魔石だ。確かこういうのって大体心臓辺りだよね?
腕を操り、ワイバーンの身体に触れる。
「透過」
するとすーっ、と腕がワイバーンの身体の中へと入っていった。なんという便利な能力。これで定番の収納魔法があれば言うことないんだけどな。でもあのゲームにそんな設定なかったね。今からでもいいからテアちゃんにつけませんか、運営様。
「あった」
ワイバーンの身体をまさぐる感覚が伝わり、何か石のような硬いものが手に触れた。なんで透過してるのに感覚があるんですかね……?
うん、考えるのはよそう。ゲームの設定なんて意外と探せばガバがあるもんだ。いちいちそれに文句を言うのも無粋だろう。程度によるけど。
「よし、えぐり出すよ! 破壊しろ!」
もうひとつの腕で心臓付近を破壊する。肉がごっそりこそげ落ち、銀色に輝くバレーボールくらいの大きさの石がコロリと落ちた。結構でかいな。でも持っていこう。村の近くに着いたら埋めて隠せば大丈夫でしょ。
「これをお金に変えられるのはいつになるかな」
うーん、なるべく早く街に入りたい。先に着くのは村か街かはわかんないけど、幸い川のだいたいの位置を確認できたのは大きい。
「よし、とりあえず首を持っていこう」
グロいけど私一人の食糧としてなら数日分にはなるだろう。美味しいことを期待したい。腕2本でワイバーンの首を運び、魔石は私が抱えて低空飛行で川へ向かうことにした。
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