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第6章 魔戦参謀ソロモンの策謀

第39話 お食事会!

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「ごめん、殺すしかなかった」

 襲撃者を始末した後、藤真悠はソロモンに謝罪した。

「いや、いいさ。どうせ奴からじゃ黒幕にはたどり着けないからな。辿り着けるくらいならお前らに護衛を頼まねーよ」
「そう言ってくれると助かるよ」
「事実だからな。まぁ黒幕は検討がついてるしお前らも予想した通りだろうよ。だが証拠がない」
「持久戦か。辛いね」
「じっくりやるしかないさ。とにかく俺は俺でやることをやらないとな。まだ演説の途中だったし」

 ソロモンは気を取り直し、風魔法による声の増幅がかかった魔道具マイクを通して再び演説を再開した。




「……であるからして、今こそ人と魔族は手を取り合い協力すべきなのです。憎しみの時代は終わり、これからは共存共栄を目指していきましょう!」

 ソロモンの演説に観衆は割れんばかりの拍手を送った。新たな時代の到来に、期待に胸を膨らませているのだ。

 そしてソロモンが壇上を降りると大木美奈代が1番に出迎える。

「凄いね凄いねソロモン君は! 私感動したよ、綺麗事だけで終わらずにちゃんと世界情勢を把握して必要性を訴えられるなんて。政治家になれるんじゃないかな?」

 大木美奈代は目を輝かせソロモンを手放しで褒め称えた。元の評価が低かったせいもあるが、今ソロモンの株は4人の中で爆上がり中である。

「俺も正直驚いたわ。うん、俺には無理だな、お前はすげぇよ」
「そうか? なんか照れるな。この後は食事会があるんだがお前らにも列席を頼みたいんだ。いいよな?」

 ソロモンは照れくさそうに頬をポリポリ掻いて照れ笑いをする。そして急に真顔になると4人を食事会に誘った。

「いいけど誰とだ?」
「俺の直接の上司ホルタヴィアヌス様だよ。人間擁護派の中じゃ魔王様に次ぐ実力者だからな。今後のことも話し合わなきゃならんし、お前らの意見も聞いてみたいんだ」
「まぁ別にいいけどよ。護衛だから付いていくけど、俺に政治はわからんぞ」
「俺だってよくわからんさ。ただそれでもやるしかないんでね」
「そうだね。僕らにも協力できることがあるなら協力すべきだと思う」
「なら頼むな」

 話がまとまると、ソロモンの案内で王城へと帰還する。そしてしばらくの休憩を挟みホルタヴィアヌス達との食事会が行われた。


    *   *   *


 王城の食堂内ではホルヌスを始め、オクシオーヌや俺の恋人のメルディナも参席していた。

「改めて自己紹介させてもらおう。俺が魔王様配下の四天王の一人、魔戦将軍ホルタヴィアヌスだ。みんなはホルヌスと呼んでいる。あのグランドマスターがこちら側に付いてくれて助かっているよ」

 ホルヌスは人間が身に着けるような貴族らしい服を着ていた。いつもは鎧姿か上半身裸だからな。立派な正装をしていると妙なギャップを感じてしまう。

「グランドマスターの藤真悠です。正直魔族達が人間との共存を選んでくれたのは意外でしたが、僕はこの選択を心から歓迎します」
「オーラバトラーの狩井海斗だ」
「アークメーガスの大木美奈代です」
「セイントの朝凪志津香よ」

 4人もまた改めて自己紹介し、軽く頭を下げる。

「この選択はソロモンあってのものだ。確かに我々魔族は人間に不当な差別を受け迫害されて来た。しかし恨みを憎悪で返せばまた同じことが繰り返される。それをいつまでも繰り返すのか、と問われてはな。それに人間の知恵は我等魔族にはない創造力がある。我等魔族には到底作れぬ魔道具も多い。そして娯楽もな。人間との共存共栄は我等魔族にとっても必ず有益な選択となるだろうと信じている。こいつの受け売りだがな」

 ホルヌスは俺を見るとフフッ、と笑った。照れるだろおい。例の4人も俺を見て暖かく笑った。まぁこれで

 そして食事が運び込まれ食事会が始まる。王宮料理人が腕を振るった料理はどれも絶品だった。いやー、なかなか贅を凝らした食事だよな。支配者側に回った俺は勝ち組だろう。後は将来邪魔になるやつを抹殺してしまえばいい。

「そういやお前らって王城にいた頃もこんなうまい飯食ってたのか?」
「いや、他の兵士たちと一緒だ。ある程度力をつけたら少しはマシな飯になったけどな。これほどのご馳走なんて初めてだよ」
「そうか、それは良かった。じゃあいいはなむけになったかな?」
「餞って旅立つ人に贈るものよ。まだ旅に出る気はないわ」

 いーや、間違ってないね。旅立つ先はあの世だがな。俺はニヤリと笑い、一言を放つ。

「目覚めろマンイーター」
「え?」

 マンイーターは孵化してから体内を食い始めるまで僅か2秒だ。そして爆発的に成長する絶死の寄生虫さ。

「は、腹がいてえっ!?」
「な、何をした……?」
「お、お腹苦しいよぉ……」

 4人は突然の腹痛にフォークを落としお腹を押さえる。

「わりぃな。全部お前らを始末するための演技だったんだよ。グランドマスターとやり合えば被害がでか過ぎるし負ける可能性が高かったからな」

「ソロモン、あんたってやつは……! クリアランス……」
「状態異常回復なんざ無駄だ。マンイーターは爆発的に成長し、お前らの腹を食い破る。その頃には内蔵を食い荒らされて助からねぇだろうな」

 もうこなったら勝確だ。食事を鑑定されたら寄生虫がバレるからな。こいつ等に寄生虫を植え付けるためには信頼される必要性があっただけだ。逆に言えば俺はそれだけこいつらを危険視してたってことだがな。

「嘘だったのか……、全部!」
「嘘に決まってんじゃん。周辺諸国なんざ俺がいれば容易く捻り潰してやるさ。せっかく勝ったんだから負けた奴らは搾取される義務があるんだよ!」

 そう、クソ魔法は無敵だ。特に戦争において俺の魔法は侵略に向いている。全ての国を支配してやるさ。

「ソロモン、僕は君を許さない……!」
「おせぇよタコ。成長加速!」

 藤真悠が立ち上がろうとするが、腹痛のために動きが緩慢だ。俺はクソ魔法成長加速でマンイーターを一気に成長させる。

「ぐばぁっ!」

 そして藤真悠の腹を食い破り、マンイーターの触手が顔を出した。触手の先端が大きな口を開け、ヨダレを垂らす。

「あ……!」

 バグン!

 マンイーターの触手は一咬みで藤真の首を飲み込み、食いちぎった。
 あばよ、藤真悠。最後はあっけなかったな。

「ひ、ひどいよソロモン君……。信じていたのに……」

 大木美奈代が涙を流して俺を睨む。

「信じる者は足元を掬われるのさ。大好きな藤真があの世で待ってるぞ? さぁ寄生虫の食事会の開催だ!」

 他の3人の腹からもマンイーターが顔を出し、宿主の身体に喰らいつく。俺の寄生虫達も食事会を始めた。今回の飯は極上だっただろ?

「見事だったな、ソロモンよ。これで我ら魔族の邪魔を出来る者はいなくなっただろう。さぁ、これからは魔族の時代がやって来る。そして人間どもに思い知らせてやるのだ!」

 王城の食堂内に俺とホルヌスの嘲笑が響き渡る。これからは人間どもにとって暗黒の時代が訪れるだろう。

 しかし大木美奈代はちょっと惜しかったかもしれんな。あの身体はちょっと味わってみたかったぜ。
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