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第178話 願いの熾天使
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「勝てないことを理解したか? レイスどもよ、我が魔力にて死を運ぶ魔弾となれ」
ドレカヴァクの生み出したレイス達が一つに集まっていく。そういやこいつ悪霊達を魔弾にして投げつけるなんてことできるんだっけ。光属性の魔法効果が落ちるなら防ぐのは難しいかもしれない。
「防壁、強化」
「全員俺の後ろにいろ!」
強化した防壁を張り、全員がサルヴァンの後ろに退避する。なんとかここを凌いで反撃しないと。
「喰らえ、悪霊散弾!」
レイスどもが無数の魔弾となり、勢いをつけて飛来する。
「解放、聖霊の盾!」
サルヴァンが大盾に付与した魔法を発動させる。しかしその聖なる盾もこの魔の大地の影響でいつも程の大きさはなかった。それでも今は耐えられるのを祈るしかない。少しでも早く作戦を伝えないと。
「リーネ、ルカ、耳を貸して!」
間違ってドレカヴァクに聞かれたら絶対に邪魔されるだろう。念の為2人には耳打ちで作戦を伝える。
「え、正気?」
「わかった、やってみる」
「よし、頼んだよ」
2人は僕の作戦に少し戸惑ったようだが受け入れてくれたようだ。ルカとリーネはお互いに見合わせ、頷き合った。
その間にもレイスどもが魔弾となりサルヴァンを襲う。散弾となっているせいで僕たちのいない明後日の方向にも着弾していた。レイスが着弾した大地はえぐれ、小さなクレーターができている。
威力が分散したおかげで全ての攻撃を凌げたようだ。僕も作戦を伝えられたし、なんとかなるかもしれない。
「サルヴァン、もう少し頑張って!」
「任せろ。硬質化を使えばこの程度ならなんとかなる」
さすがサルヴァン、頼もしい限りだ。じゃあ始めようか、反撃開始だ!
「アマラ、ニーグリを蘇らせる。魔石を僕らに向けて!」
「なに!? そんなことができるのか」
アマラは僕の声を聞き、大事そうに持っていてニーグリの魔石を僕らに向けた。
「行くよ願い!」
「スキル、魔法生物化!」
「付与!」
願いは本来アルテア様を召喚して願いを叶えてもらう魔法だ。そのため1年に一度の制約があるが、拡大解釈で別の魔法に変質させてしまえば再利用が可能だとザルス様は言っていた。
そう、ニーグリは欲望の魔神。そして願いもまた欲望の一つと言えなくもない。この辺は拡大解釈でなんとでもなる。
つまりこの願いとはニーグリ自身のことだ。
「うおおおおおっ!?」
ニーグリの魔石がより一層強い光を放つ。そして白のゴスロリ衣装を纏った天使が降臨した。その天使は二対の大きな翼と天使の輪っかを持ち、後光まで射してとても美しい女性の姿をしている。どう見ても高位の神霊だよね。
「な、何が起きてやがる!?」
ドレカヴァクの焦りの声が聞こえた。なんでニーグリが復活してるかなんて理由わかんないもんね。驚くのも無理はない。
「まさか、まさか神霊になって復活させられるなんて思わなかったよ」
「ニーグリ……、ニーグリお前なのか?」
アマラは信じられない、といった様子だが歓喜の涙を浮かべ身体を震わせていた。それに対しニーグリはニコリと微笑む。
「そうだよアマラ。悪魔じゃなくなっても僕の願いは変わらない。願いの熾天使としてアマラ、僕は君を助ける!」
「し、熾天使!? 神霊の最上位じゃないそれ」
熾天使か。悪魔で言えば魔王と同格だね。願いが元々アルテア様召喚魔法だからさぞ位の高い神霊になると思ったけど想像以上だ。これなら勝てる!
「あははは、そうみたいだね。復活させてくれてありがとうね君たち。ドレカヴァクを倒すんだったら喜んで協力するよ」
ニーグリははにかんでそう告げるとウィンクしてみせた。普通の男なら一撃で殺せそうな破壊力だね。でも確か男なんだよね?
「ず、ずるいぞ貴様ら! 熾天使が地上界に現れるなんておかしいだろ!」
「じゃあとりあえずこの魔の大地をなんとかしたいんだけど」
ドレカヴァクがなんか言ってるけどしーらない。
「おい、無視すんな!」
「それなら僕の神気をこの大地に付与しちゃえばいいんだよ。でもこのままだとアマラがダメージウケちゃうね。だからアマラには改めて僕からプレゼントだ」
ドレカヴァクを無視し、ニーグリが僕たちに話しかける。そしてニーグリがパチンと指を鳴らすとアマラの身体が光に包まれた。
「お、おい?」
「あははは、人魔が裏返って天人になっちゃったよ。うーん、熾天使の加護って凄いなぁ」
「なんか凄いことになってない?」
ニーグリが事も無げに言ってるけど普通の神霊じゃ絶対できない芸当だろう。ニーグリが元々アマラの写し身であることが関係しているかもしれないけどね。
天人というのは造語だね。人魔が人と魔族の中間なら天人というのはさしずめ人と神族の中間か。
「くそっ、調子に乗るなよ! 魔の大地なら熾天使といえど力は発揮できねーだろ」
ドレカヴァクの方をチラリと見ると、レイスをまたも一箇所に集め、魔弾を放つつもりらしい。それより踏みに来る方が早いと思うんだけどね。なんのために大きくなったんだか。
「無視していいよ。それより僕の神気を大地に与えるね」
ニーグリが大地に両手を付け、神気を送り始めた。ならサポートしないとね。
「付与強化!」
「おおっ!?」
より効率的にニーグリの神気を与えるために付与と強化を行う。すると一気に力の解放が起こり、赤黒い大地が息を吹き返し緑が生まれ始めた。さすが上位の神霊。魔の大地が瞬く間に浄化されていったよ。
そしてドレカヴァクの投げつけた巨大な魔弾もサルヴァンの聖霊の盾で防ぐことに成功した。魔の大地が浄化されたことで堅固な盾として機能したようだ。
「これで形勢逆転だ。覚悟はできてるよねドレカヴァク」
「ちくしょう! またしても、またしても貴様かルウ! テメーだけは絶対ぶっ殺してやる!」
ドレカヴァクが僕らに向かって走り出す。踏み潰すつもりだろうがそうはいくもんか!
ドレカヴァクの生み出したレイス達が一つに集まっていく。そういやこいつ悪霊達を魔弾にして投げつけるなんてことできるんだっけ。光属性の魔法効果が落ちるなら防ぐのは難しいかもしれない。
「防壁、強化」
「全員俺の後ろにいろ!」
強化した防壁を張り、全員がサルヴァンの後ろに退避する。なんとかここを凌いで反撃しないと。
「喰らえ、悪霊散弾!」
レイスどもが無数の魔弾となり、勢いをつけて飛来する。
「解放、聖霊の盾!」
サルヴァンが大盾に付与した魔法を発動させる。しかしその聖なる盾もこの魔の大地の影響でいつも程の大きさはなかった。それでも今は耐えられるのを祈るしかない。少しでも早く作戦を伝えないと。
「リーネ、ルカ、耳を貸して!」
間違ってドレカヴァクに聞かれたら絶対に邪魔されるだろう。念の為2人には耳打ちで作戦を伝える。
「え、正気?」
「わかった、やってみる」
「よし、頼んだよ」
2人は僕の作戦に少し戸惑ったようだが受け入れてくれたようだ。ルカとリーネはお互いに見合わせ、頷き合った。
その間にもレイスどもが魔弾となりサルヴァンを襲う。散弾となっているせいで僕たちのいない明後日の方向にも着弾していた。レイスが着弾した大地はえぐれ、小さなクレーターができている。
威力が分散したおかげで全ての攻撃を凌げたようだ。僕も作戦を伝えられたし、なんとかなるかもしれない。
「サルヴァン、もう少し頑張って!」
「任せろ。硬質化を使えばこの程度ならなんとかなる」
さすがサルヴァン、頼もしい限りだ。じゃあ始めようか、反撃開始だ!
「アマラ、ニーグリを蘇らせる。魔石を僕らに向けて!」
「なに!? そんなことができるのか」
アマラは僕の声を聞き、大事そうに持っていてニーグリの魔石を僕らに向けた。
「行くよ願い!」
「スキル、魔法生物化!」
「付与!」
願いは本来アルテア様を召喚して願いを叶えてもらう魔法だ。そのため1年に一度の制約があるが、拡大解釈で別の魔法に変質させてしまえば再利用が可能だとザルス様は言っていた。
そう、ニーグリは欲望の魔神。そして願いもまた欲望の一つと言えなくもない。この辺は拡大解釈でなんとでもなる。
つまりこの願いとはニーグリ自身のことだ。
「うおおおおおっ!?」
ニーグリの魔石がより一層強い光を放つ。そして白のゴスロリ衣装を纏った天使が降臨した。その天使は二対の大きな翼と天使の輪っかを持ち、後光まで射してとても美しい女性の姿をしている。どう見ても高位の神霊だよね。
「な、何が起きてやがる!?」
ドレカヴァクの焦りの声が聞こえた。なんでニーグリが復活してるかなんて理由わかんないもんね。驚くのも無理はない。
「まさか、まさか神霊になって復活させられるなんて思わなかったよ」
「ニーグリ……、ニーグリお前なのか?」
アマラは信じられない、といった様子だが歓喜の涙を浮かべ身体を震わせていた。それに対しニーグリはニコリと微笑む。
「そうだよアマラ。悪魔じゃなくなっても僕の願いは変わらない。願いの熾天使としてアマラ、僕は君を助ける!」
「し、熾天使!? 神霊の最上位じゃないそれ」
熾天使か。悪魔で言えば魔王と同格だね。願いが元々アルテア様召喚魔法だからさぞ位の高い神霊になると思ったけど想像以上だ。これなら勝てる!
「あははは、そうみたいだね。復活させてくれてありがとうね君たち。ドレカヴァクを倒すんだったら喜んで協力するよ」
ニーグリははにかんでそう告げるとウィンクしてみせた。普通の男なら一撃で殺せそうな破壊力だね。でも確か男なんだよね?
「ず、ずるいぞ貴様ら! 熾天使が地上界に現れるなんておかしいだろ!」
「じゃあとりあえずこの魔の大地をなんとかしたいんだけど」
ドレカヴァクがなんか言ってるけどしーらない。
「おい、無視すんな!」
「それなら僕の神気をこの大地に付与しちゃえばいいんだよ。でもこのままだとアマラがダメージウケちゃうね。だからアマラには改めて僕からプレゼントだ」
ドレカヴァクを無視し、ニーグリが僕たちに話しかける。そしてニーグリがパチンと指を鳴らすとアマラの身体が光に包まれた。
「お、おい?」
「あははは、人魔が裏返って天人になっちゃったよ。うーん、熾天使の加護って凄いなぁ」
「なんか凄いことになってない?」
ニーグリが事も無げに言ってるけど普通の神霊じゃ絶対できない芸当だろう。ニーグリが元々アマラの写し身であることが関係しているかもしれないけどね。
天人というのは造語だね。人魔が人と魔族の中間なら天人というのはさしずめ人と神族の中間か。
「くそっ、調子に乗るなよ! 魔の大地なら熾天使といえど力は発揮できねーだろ」
ドレカヴァクの方をチラリと見ると、レイスをまたも一箇所に集め、魔弾を放つつもりらしい。それより踏みに来る方が早いと思うんだけどね。なんのために大きくなったんだか。
「無視していいよ。それより僕の神気を大地に与えるね」
ニーグリが大地に両手を付け、神気を送り始めた。ならサポートしないとね。
「付与強化!」
「おおっ!?」
より効率的にニーグリの神気を与えるために付与と強化を行う。すると一気に力の解放が起こり、赤黒い大地が息を吹き返し緑が生まれ始めた。さすが上位の神霊。魔の大地が瞬く間に浄化されていったよ。
そしてドレカヴァクの投げつけた巨大な魔弾もサルヴァンの聖霊の盾で防ぐことに成功した。魔の大地が浄化されたことで堅固な盾として機能したようだ。
「これで形勢逆転だ。覚悟はできてるよねドレカヴァク」
「ちくしょう! またしても、またしても貴様かルウ! テメーだけは絶対ぶっ殺してやる!」
ドレカヴァクが僕らに向かって走り出す。踏み潰すつもりだろうがそうはいくもんか!
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