【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ

文字の大きさ
上 下
173 / 188

第167話 人魔王妃(予定)ナーラ3

しおりを挟む
「効かねぇよ!」
「なにぃっ!?」

 球体から突き出た針はサルヴァンの身体を貫くことなくへし折られていく。まさかの力技にナーラは驚き、反応が遅れたようだ。

 サルヴァンが斧を振り下ろす。
 ナーラはその一撃を剣で受けとめた。

泥化マーシュ

 と同時にサルヴァンお得意の泥化戦法。地面が泥になれば踏ん張りが効かなくなる。当然ナーラは泥に足を取られバランスを崩す。

「なっ!?」
「おらよ!」

 サルヴァンの前蹴りがナーラの腹に食い込む。バランスの崩れていたナーラは蹴りに押されて尻もちをついた。それはナーラが格闘戦においては素人同然であることを示している。生まれたばかりだから戦闘経験の少なさが如実に出ているんだろうね。

「くらえ、解放リリース!」

 さらにサルヴァンが斧を斜めに振り下ろし、武器に込めた魔法を発動させる。封じてある魔法は強化した破壊ディストラクションだ。

「ギャアアアアアッ゙ッ゙ッ゙ッ゙!!」

 鮮血が飛んだ。
 そしてナーラの絶叫。

 うーん、さすがサルヴァン。女性相手でも容赦無しは僕には真似できないかもしれない。ここからだとよくわからないが、サルヴァンのことだから多分首筋あたりを狙ってそう。

「トドメだ」
「ひっ……!」

 サルヴァンが更に斧を振り上げる。サルヴァンの抑揚のない声にナーラの弱気な呻きが聞こえた。

 と、そこへ割って入る影が2つ。

「ナーラ様!」
「させない!」
「ちっ!」

 女悪魔の大量の魔法の矢をサルヴァンが盾で受け止める。そしてもう一体の女悪魔がナーラを泥から引き揚げた。

「ナーラ様、ご無事で!」
「メリッサか、すまんな。下手を打った」

 メリッサとかいう女悪魔に抱えられ、ナーラは悔しそうに小声で答える。

「もう少しだったんだがな。何者だ?」

 サルヴァンが悪役臭いセリフを吐きつつもう一体の悪魔と対峙する。あの悪魔、前に見たことあるような?

「よくもナーラ様を傷つけてくれたな。許さんぞこのクソ野郎が!」
「ああ、思い出した。確かクリフォトの神殿にいた男爵級悪魔だったね。リティスだったかな?」
「……今は侯爵級よ。メリッサ、私一人じゃキツイわ。手を貸して」

 ああ、そうそう。確か前もこんな艶めかしい赤いワンピース着てたっけ。もう一体のメリッサとかいう悪魔も同じ格好だ。

「わかってるわよ。ナーラ様はお逃げ下さい。貴方が滅べばアマラ様が悲しみます」
「すまぬ、出直すとしよう。二人とも死ぬなよ?」

 逃げる気か。空中に逃げたら収束砲撃魔法でも食らわすか。

「わかっておりますとも」
「ここは我らにお任せを!」

 ナーラはふらふらになりながらも空に浮かび、僕らに背を向けて飛び立つ。

 今だ!
 拡大解釈による無声発動。
 神気発衝ディバインマッシャー

 瞬時に魔力を両手に収束。ナーラ目がけて収束砲撃魔法を放った。

「させるものか!」

 リティスが空中に立ちはだかり、砲撃魔法を受け止める。

「ぬおおおおおおっっ!!」

 おお、さすが侯爵級だね。砲撃をギリギリのところで抑え込んでいる。でも!

強化ブースト
「ぬおおおおおっっ!?」

 威力の増強を行ったことでリティスは抑えきれず砲撃魔法により吹き飛ばされていった。うーん、呑み込まれていないなら多分滅んではいないよね……?

「ああっ、リティスぅぅぅっ!!」

 リティスが吹き飛ばされ、メリッサが焦りの声をあげた。

「残るはお前だけだな。覚悟はいいか?」
「ちょ、ちょっと待って! 降参する!」
「却下」

 メリッサの降参宣言をサルヴァンが即座に却下した。残念だけど侯爵級悪魔なんてほっとけるわけないんだよね。

「侯爵級悪魔なんか捕虜にできるわけねーだろ。味方が全滅するわ!」

 サルヴァンは一気に間合いを詰めると三度その斧を振り下ろす。

 メリッサは断末魔の悲鳴をあげ、最後は浄滅魔法により魔石を残して消滅した。




     *   *   *



「くっ……!」

 どのくらいそうしていたのか、砲撃魔法に呑み込まれはしなかったものの魔力の大半を失ったメリッサは地面に仰向けになったまま動けずにいた。加えて落下によるダメージも深刻でまだ当分は動けそうもない。周りには木々が生えていて人の気配も魔物の気配もなかった。ただ1つの気配を除いては。

「よぉ、いいザマだなリティス」
「お、お前は……! なぜお前がここにいる。アプールの街を攻めるように命令したはずだが?」
「ああ、受けたな。ちゃんと行ったぜ?  俺の複製だけどな。全く、なんで格下のお前に命令されなきゃならねぇんだよ。からそうだ、いつも俺のことを見下しやがって」

 悪魔はリティスを見下ろすとニヤリと笑う。そこにリティスは違和感を覚えた。

(昔……!? 最近産まれたはずの存在が口にする言葉か?)

「貴様、本当にドレカヴァクか?」
「リティス、俺はこう言ったよな? 悪いなドレク。いや、俺の半身よ。お前を喰らい俺は完全な俺になる。そう、!」

 ドレクはリティスにゆっくりと手を伸ばし首を掴んで吊り上げる。

「き、貴様……、アマラ様を裏切る気かっ」
「そうさ。だがまだまだ力が足りないからな。貴様を喰わせてもらうぞ」

 ドレクは骸の顔を歪ませニタリと嗤う。その歪な嗤いにリティスは凍りついた。

「き、キサマ如きがアマラ様に敵うわけがないだろ……!」
「良いものを見せてやろう。これなーんだ?」

 そう言ってドレクが見せたのはリティスにも見覚えがある黒い胸甲だった。その胸甲はズタズタにされており、元の美しさなど微塵もない。

「そ、それはナーラ様の……! き、貴様ナーラ様を喰ったのか!?」
「クックックッ、美味かったぜぇ? 女悪魔ってのもなかなか柔らかくてジューシーだったぞ。俺に喰われている最中にアマラ様ぁ、アマラ様ぁってピーピー泣いて傑作だったぞ。お前もさぞかし美味いのだろうな」
「き、貴様ぁぁぁぁっっっ!!」

 リティスの慟哭が辺りに響く。
 そして無情にもドレクの顎がリティスの右腕に歯を立てた。

「グアアアアアッッ!!」

 骨の軋む音が響き、リティスが絶叫をあげる。ドレクは貪るようにリティスの身体に歯を立て噛み砕いていく。

 骨は砕け、肉がひしゃげ、一噛み毎に広がる激痛がリティスの脳髄を貫いていった。貪る咀嚼音の気持ち悪さも相まって吐きそうになるが、吐くのは血ばかりである。

「美味い! 美味すぎるぞ貴様の肉!」
「あ、アマラ様……、も、申し訳ございません……」

 リティスは苦痛に呻きながらも最期にアマラの名を口にする。共に過ごした時間を想い悪魔の目から一雫の涙が頬を伝った。

 そしてやがて動かなくなり、最後は骨も魔石も残さず食べ尽くされてしまった。

「さて、これでアマラと同格くらいか? このままじゃニーグリには勝てんな。ならばいっそクリフォトの木を喰ってみるか」

 そしてドレクは廃墟となった聖都を目指し飛び立つ。クリフォトの木を食い尽くすために。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...