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第97話 勇士の紋章に乾杯

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     そしてドレカヴァク討伐成功を祝う式典が催された。場所は謁見室。まずはここで国王陛下の宣言と発表、そして勲章の授与が行われるのだ。今回は僕ら龍炎光牙全員そろい踏みである。格好はむしろドレカヴァクと戦った格好にしてくれと言われ、いつもの愛用の装備だ。もっとも、色々魔改造してあるから下手な礼服より高価かもしれない。

「諸君、よく集まってくれた。戦いに参加した者たちよ、大義であった。余はここに我が息子エリオット第1王子率いる精鋭達によりドレカヴァクの完全討伐が成されたことをここに宣言する!」

    国王陛下が王錫を掲げ、高らかに宣言すると拍手が巻き起こる。

「オルベスタの街が壊滅したことは真に残念であった。これは2年前ほどではないにせよかなりの被害である。オルベスタは今や死の街となり、未だゾンビやレイスがたむろしているが、それはまたそのうち浄化されることだろう。今はあの強大な力を持つ魔神に人類が勝利したことを喜ぼうではないか」

    確かにオルベスタの街はそのままだ。話によると、冒険者ギルドの方で近いうちに討伐隊が結成されるらしい。

「そしてこの戦いで大きな役割を果たした英雄達がいる。クラン勇士の紋章だ。だが残念ながらクラン勇士の紋章はその役割を終え、解散の運びとなっている。中心メンバーとなったライミスを始め、多くの者は余に仕えることを望んでおる」

    実際には貴族の義務を果たすためらしいんだけどね。求心力を高めるにはこう発言するわな。

「そこでこの魔神を討伐した最高の栄誉の証である大勲位天龍章を新たなる英雄、龍炎光牙の諸君に贈りたいと思う。今回の彼らの活躍は素晴らしく、彼ら無しでは全滅さえ有り得た程のものであったと聞いている。また、アルテア様召喚の奇跡を起こした大魔導士、リーネを教会が聖女と認め、克肖女の称号が与えられることとなったを伝えておこう」

    その言葉に会場の貴族たちが騒ぎ始める。情報仕入れているから知ってると思うんだけど、何をそんなに騒いでいるんだろう。

「静粛にしたまえ。大魔導士リーネには既にアルテア様がお認めになった伴侶とすべき相手が既にいる。取り入るために政略結婚を企むことはアルテア様に対する冒涜であると知るがいい」

    国王陛下の言葉に貴族たちのため息が聞こえた。なるほど、そういうことか。魔導士として優秀でアルテア様を召喚できる聖女となれば取り入りたいわな。

    しかしアルテア様もお認めになったとは盛ったものだ。今更どこぞのハイソな貴族のイケメンに横からかっさらわれたら辛すぎる。
そういう意味ではグッジョブだね。

「では龍炎光牙の諸君。余の前に立つことを許そう」

    国王陛下が静かだが重みのある声で僕たちを呼ぶ。それに応え、アレサ、サルヴァン、僕、リーネの並びで陛下の前まで行き、跪いた。

「面を上げよ。これより大勲位天龍章の授与を行なう。これは授与される勲章の中でも最高クラスのものであると伝えておこう」

    さ、最高位!?
    そんな凄いものを授与されるとは。改めて考えると、魔神討伐って凄いことだもんね。

    前回も見た美しい女性、 多分王女殿下?
    が木箱に勲章を入れてサルヴァンの前に止まる。その女性がサルヴァンに勲章を与えると、軽く頭を下げてから下がって行った。

「龍炎光牙の諸君、立ちたまえ。そして皆にその姿を見せてやりなさい」

    国王陛下の言葉に従い立ち上がると、僕らは後ろを振り向く。そしてサルヴァンが勲章を掲げると、拍手が巻き起こった。

    僕らはそれに応えるよう手を振る。ライミスさんと目が合った。ライミスさんはウィンクすると、親指を立てる。

    ついにクラン勇士の紋章は解散か。ここから僕らは新たなるステージに登るわけだ。苦労も多いと思うけど頑張ろう。




    クランの会議室に集まり、僕らは最後の食事会を行なうことになった。それと同時に僕ら龍炎光牙が新たに設立するクラン、セフィロトの家の樹立宣言も行なう予定だ。

「さてみんな、今日でクラン勇士の紋章は解散する。今まで付いてきてくれて本当にありがとう。そして龍炎光牙のみんなもありがとう。君たちの加入が無ければこの勝利はなかっただろう」

    そしてライミスさんがグラスを掲げる。それに合わせ、皆も一斉にグラスを掲げた。

「クラン勇士の紋章に」

    アレクさんが少し寂しそうに口にする。

「ドレカヴァク完全討伐に」

    アレイスター師匠は高らかに。

「そして最高の仲間たちに!」

    アレーテさんは少し涙ぐみながら。

「そして龍炎光牙の皆さんの新たな門出に」

   リオネッセさんは涙でぐしゃぐしゃになりながら。

「俺たち龍炎光牙のクラン、セフィロトの家の樹立に!」

    サルヴァンは堂々としている。

「「「「カンパーイ!」」」」

   僕らは揃ってグラスを掲げる。僕はこのクランのみんなを忘れない。期間にしたら本当に短い期間だった。でもここで過ごした時間はとても貴重で、そしてここに来たから強くなれたと思う。まだまだライミスさんたちには及ばないけど、いつかきっと追いつくことが恩返しになると思う。




    
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