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第89話 前哨戦

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「よし、部隊を入れ替えろ!   エクソシスト達は一旦下がり回復。冒険者の部隊と入れ替えだ。第6以降の小隊を前に。第5以下は戦線を維持しつつ後退だ」

 殿下が指示を出し、部隊が動く。敵はとにかく数が多かった。草原や街道の上をゾンビが歩き回り、レイスやレッサーデーモンも混じっている。選出された冒険者は対アンデッドに強いパーティが中心だから大丈夫だとは思うけどね。

 ちなみに僕らは未だ待機だ。相手はドレカヴァク。配下に魔神クラスの悪魔がいるはずだという。僕らの相手はそういうSランクモンスターだ。

浄滅アニヒレーション!」
「うおおおおっ!」
火炎柱フレイム!」

 冒険者達がレッサーデーモンを浄滅し、ゾンビを燃やし、切り倒しと屠っていっているようだ。騎士隊はその間をすり抜けたモンスターを相手どっているようだ。うん、やっぱりよく見えないや。

 キイィィィィッッ!

 そんな中冒険者の悲鳴が聞こえた。そして鳴り響く金切り声。アマラか?
 殿下には状態異常無効の指輪をしてもらっている。すぐに皆を下げてもらわないと。

「いけません!    神域への昇華ディバインレムル!」
強化ブースト!」

 リオネッセさんがすぐに広範囲浄滅魔法を使用する。即座に強化し、リオネッセさんを中心に光が広がっていく。この光に飲み込まれたアンデッドはほぼ確実に浄化だ。

「全員後退だ!    勇士の紋章前へ!」

 殿下の命令より先に皆が動いていた。立てなくなっている人に回復ヒールしつつ僕も前へ出る。

 不意に、光が消えた。おかしい、あの魔法の範囲はあんなもんじゃない。まさか消去された?

「爵位級悪魔がいるね。それと君がアマラ君でいいのかな?」
「ちっ、面倒なのがいたか。召闇サモンダークネス
「お初にお目にかかります。私はキャドベル。子爵級悪魔にございます」

 そこに居たのは間違いなくアマラだ。その隣にいるのは紳士な骸?
 恐らくこいつが魔法を消去したのか。それよりこいつの周りにいるの、もしかしてエクソシストじゃないだろうか?
 目の焦点が全く合っていない。

 そしてアマラはライミスさんを無視して召喚魔法を使用。闇の中から出てきたのはカオススポーンとかいう魔物か。近くで見るとかなり気持ち悪いな。

光膜ライトフィルム……」

 敵のエクソシスト達がしゃがれ声でカオススポーンやキャドベルに防護魔法を使用する。まずい、これだと浄滅魔法が効きにくくなる。
 でも残念!
 拡大解釈は何も味方にしか使えないわけじゃないんでね。

 拡大解釈!
 ただの光の膜であってそれ以上でもそれ以下でもない!

「さーて、これで浄滅魔法は……」
浄滅アニヒレーション強化ブースト

 アマラがなんか言おうとしてたけど関係ない。カオススポーンが強力な光の柱に呑まれて消滅した。そして落ちた魔石が地面に突き刺さる。

「へっ……?」
「な、なぜ浄滅魔法が効くのです!?」

 アマラのあの顔は笑えそうだ。目が点になって固まっている。キャドベルも理解ができず慌てふためいている。とはいえ、奴らの後ろに大量のデーモン達がいるなぁ。

「リーネ、龍炎ドラゴンズノヴァ
「はーい龍炎ドラゴンズノヴァ!」

 はい、強化ブースト
 リーネの前に魔法陣が現れ、4つの炎が伸び上がるとそれぞれが龍を象る。

「させませんよぉ!」
神域への昇華ディバインレルム

 そこへさらにリオネッセさんが広域浄滅魔法を重ねる。もちろんそれにも強化ブーストをかける。ただし、威力じゃなくて広がる速度を強化だ。

「な、なんですとぉっ!?」

 あ、やっぱり複数キャンセルはできないんだね。その一瞬の躊躇いが命取りだよ。
 4体の炎の龍がキャドベルに迫る。しかしそれより早く神域への昇華ディバインレルムの光が悪魔たちを飲み込んだ。そして降り注ぐ4体の炎龍。

 キャドベルがいた場所に一匹、その後ろに三匹の炎龍が噛みついた。炎は火の粉を散らして周囲に広がり、高く舞い上がる。それでも炎は突如消失した。

 その消失した場所に立っているのはキャドベルだけのようだ。どうやら浄滅魔法に耐え炎をキャンセルしたみたいだ。それでも無事ではないようで、立派だった服は見る影もない。燃えてしまったのだろう、骸の悪魔はすっぽんぽんだ。

「あなた達……、許しません、許しませんよぉぉっ!    よくもよくもよくも……」

 うん、なんか凄い怒ってるのはわかった。けど今戦闘中ね?
 もうアレーテさんが向かってるんだけど?

「あ……?」

 そしてアレーテさんがキャドベルの横を通り過ぎた。1拍置いてポロリ、とキャドベルの頭が落ちる。剣筋全く見えないや。

「ま、子爵級ならこんなものか」

 そして後ろからアレーテさんが剣を振り下ろした。その剣に封じられた魔法、審判ジャッジメントが発動。キャドベルを光の柱が飲み込んだ。

 虹色の魔石を残し、キャドベルは消滅したようだ。そういえばアマラの姿が見えない。リーネの魔法に巻き込まれた?
 それとも……。

「早目に退治できて良かったよ。来たみたいだね、本命が」
「……これはさすがに予想外でしたね~」
「ちょっと待て、なんじゃありゃ!」

     大きな地響きを立てながらそれは近づいてきていた。まだ結構離れているけど、それは容易に視認できるほど大きい。
そのあまりの大きさに後方の冒険者たちは及び腰になっている。

「魔法を使って倒すんだ。総員、ドレカヴァクに対して最大火力の魔法を準備せよ!」

    王子殿下が指示を出し、魔法を使える者たちは前に出る。そしてドレカヴァクの接近を待った。
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