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第77話 筋肉に拉致られて

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「ふぅ、やっと解放された……」

 僕はげんなりして魔導士協会を出た。あの後ギルドマスターのところに連れ去られ、色々聞かれたけど何とか誤魔化した。僕の使った契約文言は他の人がやると失敗したのが大きい。そのおかげで深く追求されなかったから助かったよ。拡大解釈があればこその力技のようだ。

 しかし後々詠唱魔法でなら僕の拡大解釈した魔法を再現できるかもしれない、と思うと知的好奇心が働きそうになる。詠唱文言から契約文言を作り出すことも可能かもしれないからね。そんなことができたら魔法史に名前が残るかもしれない。

「む?    そこを歩くのはルウではないか。しょぼくれているようだな。気晴らしに我らと共に行こうでは無いか!」

 聞き覚えのある声だなー、と思ったらアニキータさん達筋肉の誓いの人達だった。

「こんにちは、どこへ……って、うわぁ!?」

 挨拶を、とか思ってたらひょい、と軽く持ち上げられてしまった。またかい!

「はっはっはっはっ!    今からちょうど殴り込みに行くところだったのだ。ちょうどいい、力を貸してもらおう!」
「な、殴り込みって!」

 この人たちに殴り込みされるとかどんな悲惨な組織なんだか。考えただけで怖いわ!

「うむ、偽りの筋肉を懲らしめに行くのだ!」
「要は闇ギルドだな」
「我らが付いているから心配するな!」

 偽りの筋肉?
 ああ、薬物で筋肉増強したとかいうヤツらか。アニキータさん達のことは好きだし、協力するのもいいかもしれない。闇ギルドがドレカヴァクと関係あるのかも知りたいし。




 それにしてもこの人たちの体力って凄い。結構早いペースで走っているのに僕を担いでかれこれ30分くらい走ってないかな?

「着いたぞ、ここか」
「うむ、情報通りなら間違いない!」

 たどり着いたのはスラム街だ。ここにもストリートチルドレンはいるけど、ここの人達は平気で犯罪を犯す人も多い。この王都の中でも唯一暴力が支配する区域と言えるだろう。

 そしてそのスラム街の一角にある建物は一見して古びた酒屋だ。闇ギルドの人間が居そうな気配がぷんぷんする。

「よし、行くか!」

 僕を担いだままアニキータさんが扉を開け、中へと入っていく。

「頼もう!」

 アニキータさんのでかい声と存在感に店にいた客達の視線が一斉に降り注ぐ。こいつらアニキータさんの筋肉を見てもびびらないのか。

「あん?     なんだてめーらは?     その小僧を売りにでも来たのか?」
「ガキか。いいぜ、俺はイけるクチだからな」

 なんだよいけるクチって。なんか悪寒するんですけど?

「そんなわけなかろう!    いいだろう、我らの名前、とくと知るがいい!」

 アニキータさんがようやく僕を下ろしてくれた。今から何を始める気なのやら。

「私は筋肉に選ばれし筋肉の使徒、アニキータ!」

 アニキータさんのサイドチェストにより、たくましい大胸筋と上腕二頭筋が盛り上がる!
 笑顔も忘れないナイスガイです!

「筋肉を愛する筋肉天使、ノーキン!」

 ノーキンさんがバックダブルバイセップスで自慢の広背筋をさらけ出す!
 背中で漢を語るノーキンさんさすがです!

「筋肉は一日にして成らず!    筋肉の申し子キニク!」

 キニクさんがサイドトライセップスで上腕三頭筋を見せつける!
 こんな素敵な筋肉が欲しい!

「全てを癒す筋肉の妖精!    ゴリマ!」

 ゴリマさんがモストマスキュラーで全身の筋肉を見せつける!
 見てるだけで子宮もないのに孕みそう!

「……で、なんの用なんだ?」

 呆気に取られていた男たちはしばらくフリーズした後、ハッと思い出したように用件を聞いてきた。筋肉に見惚れていたのかな?

「ここに筋肉を穢す不届き者がいるはずだ。出してもらおうか!」
「はん?    知らねーな。帰れ」
「手ぶらでは帰れんな。店の中を改めさせてもらおうか」

 アニキータさんが前に出ると、負けない程の体格を持った大男が立ち塞がった。

「悪いがここは酒場だ。酒を飲まないなら力づくで帰ってもらおうか」

 大男がアニキータさんの肩に手をかける。着ているシャツからは大男の盛り上がる大胸筋がよくわかる。

「わかるぞ、貴様の筋肉は泣いている!」
「!     なんだと!」
「筋肉に選ばれしこの私の目はごまかせん!    喰らえ!     ギャラクティカマッスル!」

 アニキータさんの強烈なパンチが大男の顔面を捕らえると派手に吹っ飛んでいった。大きな音を立てて奥の壁を全てぶち抜き、店の外まで飛んで行ったようだ。

 あんなん喰らったら絶対死ぬやろ!
 アニキータさんは絶対怒らせないようにしよう。うん、それがいい。

「どうしたルウ、顔が真っ青だぞ」
「うむアニキータよ、お前のパワーに驚いているだけだろう。開いた口が開きっぱなしだ」
「はっはっはっはっ!     そうかそうか、それは仕方がないな!    では行くか!」

 アニキータさん達が歩き出すと、周りは完全にびびったのか避けるように道を開ける。破壊された壁を抜けると階段があった。

「よし、降りるか」

 アニキータさんを先頭に降りていく。チラッと後ろを見ると、誰かに命令されて1人が走って店の外に出ていった。誰かを連れてくるつもりか。

 その下を降りた先は通路になっており、いくつか扉があった。そのひとつひとつを開け、中を覗くと薬棚のある部屋があった。何やら調合器具らしきものもあり、何かの薬を作ってる感じだ。

鑑定アイデンティファイ……」

 僕は薬棚の薬を鑑定していく。
 筋肉増強剤、麻薬、媚薬、毒薬……。ろくなもんじゃないな。しかし毒薬があるなら解毒薬があるはずだけど、見当たらないな。作れていない可能性もあるし、サンプルで持っていくか。

「ろくな薬がないですね。然るべきところへ持って行って処分なり研究に回すなりしてもらいましょう」
「そうだな。ルウ、ひとつ残らず持って行ってくれ」
「わかりました」

 はい、没収没収。ノーキンさんも戸棚を開けて資料を探しているようだ。もう根こそぎ持っていけばよくないですかね?

「もう戸棚ごと没収しましょう。他の部屋のも全部没収です!」
「うむ、承認!」

 キニクさんがガハハハハと笑う。よし、この部屋の備品は全て没収した。うん、見事なくらい何も無い部屋になったね。

 その後も他の部屋を回り根こそぎ没収していく。特に関係無さそうなものもあったけど容赦なく没収!

「よし、全て押収したな。では上へ戻るとしようか。研究者がどこにいるのか吐かせんとな」

 リーネがいたら石化して持っていけたのに。そっちは連行するしかないのか。
 アニキータさんを先頭に地下室を出る。そこには待望の研究者らしき人がいた。

「クックックッ、私のラボをどうしてくれたのかな?    君たちにはこの私の最高傑作、強化人間マルダー=クンニキの餌食となってもらおうか!」

 強化人間マルダー=クンニキ?
 あのピンク色の肌の気持ち悪いマッチョのことみたいね。身体のサイズはアニキータさんよりかなり大きく、気持ち悪いハゲ頭をしている。

「まさに悪しき筋肉の見本のような奴だな。そのような偽物の筋肉に負ける私ではない!」

 アニキータさんが走って前に出る。マルダーも前へ出て迎え撃つ。

 そして、2人の拳が交差した。
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