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第78.5話【リーネの視点】ルウは巨乳好き?
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私はリーネ。Cランクパーティ龍炎光牙所属の魔導士だ。クランハウスで借りているお部屋には大きな姿見がある。そのせいか身だしなみにも自然と気を使うようになった。そして今私はその姿見と睨めっこ中である。
「うーん、胸帯がきつくなってきたなぁ……」
ルウに告白して付き合い出してから2週間ほど経ってるんだけど、ここ最近胸が少し膨らみ始めて来たのよね。恋は女の子を綺麗にするっていうからそのせいかな?
あ、胸帯は胸を支える布のことね。擦れると痛いから私ぐらいの子はみんなしてる。特に冒険者はよく動くから固定する意味もあるんだけどね。
「なんだ、リーネも人並みのサイズになってきたじゃないか」
「アレサもクランに来る前より大きくなってない?」
「食べ物の差じゃないか? 昔は肉なんて野うさぎやオークを狩ったときに食べられたくらいだからな。今じゃ毎日だって食べられる」
そっか、食べるものの差か。それはあるかも。今思えば昔の生活は確かに惨めだった。泊まる宿は簡易寝台しかない1泊銅貨1枚の安い寝屋処。包まるシーツも持参だからこその値段かもしれない。ほんとに寝るだけのところで、あるのは床とベッドだけでシーツすら敷かれていない。ベッドは木だから硬いし寝づらいけど、屋根があるだけマシ。これでも冒険者ギルドの施設なんだよね。
ヘタイロス達の住処は私たちまで住めるほど広くない。それに冒険者として本格的な活動を始めたら大抵は住処を出ることになっている。それは自立するためのルールだから。
冒険者になる前の食事は1食銅貨2枚の大盛りのお粥。それを川で魚なんかを捕まえてみんなで分け合った。冒険者になって少しお金が入るようになってからは1食銅貨3枚のお弁当になってたよね。身体を作らないとダメだって言われたからだけど。
でも、貧しかったけどとても幸せだった。だから確かに惨めだったかもしれないけど、周りが妬ましいなんて思ったことは1度もない。心だけは満たされていて、いつかきっと凄い冒険者になるんだ、って夢を語り合ったっけ。
「……ちょっと昔を思い出しちゃったな」
「わかるぞ。昔は本当に貧しかった。でもみんながいてくれたからな。だから私は間違わずに済んだ」
「うん、私もだ」
ストリートチルドレンの女の子の中には身体を売る子もいる。世の中には物好きもいて、幼い子を買いたがる人もいるのだ。貧しさに負けて身体を売るのは特別なことじゃない。
私もアレサも、以前手を出そうとしたことがあった。それを止めてくれたのがサルヴァンとルウだ。あのとき張られた頬の痛みを、あのとき流したルウの涙を私は忘れない。
「私はいい仲間に恵まれたと思っている」
「うん、そうだね。でも私たちみたいな子は無くならない。今日もこの世界のどこかで捨てられてさ迷っている子がいるんだよね」
私たちは運良く生き延びた。冒険者として成功していると言える。でもそんなのはストリートチルドレンじゃひと握りだ。多くのストリートチルドレンは大抵その前に病気で命を落とす。よしんば冒険者になっても実力が足りず命を落とすのだ。
「ああ、そうだな」
「私、夢があるんだ」
「知っている」
「うん、冒険者になって大成したら、学校を作りたい。孤児も平民も関係なく無料で入れて読み書きや生き方を教えてくれるそんな場所。ルウが私に教えてくれた、大切なことを教えたい」
そのために何が必要かはわからないけど、いつか叶えたいと思う。きっとお金だけの問題じゃないよね。貴族様にでもならないと無理なのかな?
なんて考えていたらアレサが優しく笑う。
「ああ、あれか」
アレサと顔を見合わせ、昔ルウが教えてくれた言葉を口を揃えて声にした。
「「お金は奪えても知識は奪えない。知恵は体格を選ばない、最も強力で公平な力だ!」」
同じセリフを口にすると、私とアレサはふふふと笑い合う。
「しかしまぁ、胸が膨らんできたなら良かったんじゃないか? ルウは絶対巨乳好きだと思うぞ」
「……アリシアさん大きいもんね……」
うーん、私も成長期なはずだしこれから大きくなるよね?
「いっそルウに胸の成長を強化してもらったらどうだ? もうしてるかもしれんがな」
「……やってるかも。ちょっとアリシアさんとこ行ってくる」
なんとなーく予感がするのよね……。私はさっさと着替えを済ませると、足早にギルドへと向かった。
この後、私は冒険者ギルドで詳細な鑑定をしてもらった。
「ルウーーーーッ!!!」
冒険者ギルドに私の怒号が響き渡り、アリシアさんは腹を抱えて笑うのだった。
「うーん、胸帯がきつくなってきたなぁ……」
ルウに告白して付き合い出してから2週間ほど経ってるんだけど、ここ最近胸が少し膨らみ始めて来たのよね。恋は女の子を綺麗にするっていうからそのせいかな?
あ、胸帯は胸を支える布のことね。擦れると痛いから私ぐらいの子はみんなしてる。特に冒険者はよく動くから固定する意味もあるんだけどね。
「なんだ、リーネも人並みのサイズになってきたじゃないか」
「アレサもクランに来る前より大きくなってない?」
「食べ物の差じゃないか? 昔は肉なんて野うさぎやオークを狩ったときに食べられたくらいだからな。今じゃ毎日だって食べられる」
そっか、食べるものの差か。それはあるかも。今思えば昔の生活は確かに惨めだった。泊まる宿は簡易寝台しかない1泊銅貨1枚の安い寝屋処。包まるシーツも持参だからこその値段かもしれない。ほんとに寝るだけのところで、あるのは床とベッドだけでシーツすら敷かれていない。ベッドは木だから硬いし寝づらいけど、屋根があるだけマシ。これでも冒険者ギルドの施設なんだよね。
ヘタイロス達の住処は私たちまで住めるほど広くない。それに冒険者として本格的な活動を始めたら大抵は住処を出ることになっている。それは自立するためのルールだから。
冒険者になる前の食事は1食銅貨2枚の大盛りのお粥。それを川で魚なんかを捕まえてみんなで分け合った。冒険者になって少しお金が入るようになってからは1食銅貨3枚のお弁当になってたよね。身体を作らないとダメだって言われたからだけど。
でも、貧しかったけどとても幸せだった。だから確かに惨めだったかもしれないけど、周りが妬ましいなんて思ったことは1度もない。心だけは満たされていて、いつかきっと凄い冒険者になるんだ、って夢を語り合ったっけ。
「……ちょっと昔を思い出しちゃったな」
「わかるぞ。昔は本当に貧しかった。でもみんながいてくれたからな。だから私は間違わずに済んだ」
「うん、私もだ」
ストリートチルドレンの女の子の中には身体を売る子もいる。世の中には物好きもいて、幼い子を買いたがる人もいるのだ。貧しさに負けて身体を売るのは特別なことじゃない。
私もアレサも、以前手を出そうとしたことがあった。それを止めてくれたのがサルヴァンとルウだ。あのとき張られた頬の痛みを、あのとき流したルウの涙を私は忘れない。
「私はいい仲間に恵まれたと思っている」
「うん、そうだね。でも私たちみたいな子は無くならない。今日もこの世界のどこかで捨てられてさ迷っている子がいるんだよね」
私たちは運良く生き延びた。冒険者として成功していると言える。でもそんなのはストリートチルドレンじゃひと握りだ。多くのストリートチルドレンは大抵その前に病気で命を落とす。よしんば冒険者になっても実力が足りず命を落とすのだ。
「ああ、そうだな」
「私、夢があるんだ」
「知っている」
「うん、冒険者になって大成したら、学校を作りたい。孤児も平民も関係なく無料で入れて読み書きや生き方を教えてくれるそんな場所。ルウが私に教えてくれた、大切なことを教えたい」
そのために何が必要かはわからないけど、いつか叶えたいと思う。きっとお金だけの問題じゃないよね。貴族様にでもならないと無理なのかな?
なんて考えていたらアレサが優しく笑う。
「ああ、あれか」
アレサと顔を見合わせ、昔ルウが教えてくれた言葉を口を揃えて声にした。
「「お金は奪えても知識は奪えない。知恵は体格を選ばない、最も強力で公平な力だ!」」
同じセリフを口にすると、私とアレサはふふふと笑い合う。
「しかしまぁ、胸が膨らんできたなら良かったんじゃないか? ルウは絶対巨乳好きだと思うぞ」
「……アリシアさん大きいもんね……」
うーん、私も成長期なはずだしこれから大きくなるよね?
「いっそルウに胸の成長を強化してもらったらどうだ? もうしてるかもしれんがな」
「……やってるかも。ちょっとアリシアさんとこ行ってくる」
なんとなーく予感がするのよね……。私はさっさと着替えを済ませると、足早にギルドへと向かった。
この後、私は冒険者ギルドで詳細な鑑定をしてもらった。
「ルウーーーーッ!!!」
冒険者ギルドに私の怒号が響き渡り、アリシアさんは腹を抱えて笑うのだった。
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