28 / 188
第28話 野宿
しおりを挟む
それからも平原を歩き、川の近くまで来た。ここの川は水も綺麗で魚も釣れるらしい。木々も生えているので枝を集めて火をつけることもできそうだ。今日はここで野宿をするらしく、筋肉の誓いの人達が野営の話を始める。
「ここは川も近いから水を求めて魔物や動物が来ることもある。まぁ、ここには俺たち以外にも沢山のチームがいるが、見張りはできれば2人1組がいい。片方が眠くなった時に声をかけられるからな。まぁ、慣れてしまえば1人でも大丈夫だ」
「今回はコミュニケーションも兼ねて俺たちとお前らから1人ずつ出して見張りを行なうからそのつもりでな」
「はい、わかりました!」
アニキータとノーキンさんの説明に頷きずつ僕らは元気に返事をする。確かに僕達では途中で寝てしまいそうだ。
「んじゃ先ずは魚でも取るか。幸いここの川は流れも緩やかだからな。中に入ることができるなら……」
ゴリマさんが大きめの石を持ち上げ、川から顔を出している石に近づく。そしてその大きめの石で思いっきり川の石を叩きつけた。
するとぷかーっ、と魚が一匹浮かび上がり、それを慣れた手つきですくい上げると腰に下げたびくに放り込む。
「どよ、こういう捕り方もあるんだぜ」
「おおー、勉強になります」
うん、知ってたけど知らないふり。ストリートチルドレンなので魚は大事な栄養源でしたからね。ここは大げさに拍手もしておきましょう。
「よし、じゃあ俺たちも捕ろうぜ」
サルヴァンも靴を脱いで川に入り、魚を捕まえ始める。では僕も行きますか。魚を捕まえる罠は持っている。隠れる習性を利用すれば餌も要らないのだ。
そうやって僕たちも魚を捕まえる班と枝を拾って火を焚べる班に分かれた。火はリーネので簡単に着く。威力を間違えると大惨事だがそんなミスをするリーネではないだろう。
焚き火の遠火で魚を焼き、皆で食べる。うん、美味い。味付けは軽く塩のみだが、それがいい。
「うーん、魚もいいが、やはり肉が欲しいな。筋肉には肉だ」
「肉ありますよ? オークをですね、丸めて焼いた後タレに漬け込んであるので結構日持ちするんです」
これが実にオーク2匹分あるのだ。元々それなりに日持ちする料理なので、これなら収納魔法に時間経過がないことも誤魔化せるだろうとクランのメイドさんたちに作り方を習ったんだよね。
僕は防壁を物置き代わりに設置し、煮込みオークを5本取り出して大皿に乗せる。1本あたりの長さは人の顔くらいのサイズだ。温めると柔らかくなるので調理用の刺叉に刺して焚き火に近づける。軽く温めたらお皿に戻す。太さは僕の握りこぶしより少し大きいのでナイフで切り分け、別のお皿に盛り付けていく。筋肉痛の誓いの人達はたくさん食べられるだろうから多めに盛り付けた。
「どうぞ食べてみてください」
「悪いな、んじゃいただくぜ」
ゴリマさんがひょいと1枚つまんで口に放り込む。
「お、こりゃ美味い。いい味してるじゃねーか」
「ありがとうございます」
僕は次々とオーク肉を温め直してはナイフで切ってお皿に盛り付けていく。もちろん自分たちの分もある。他のチームがこちらを見てるけどあげない。数はあるけど、そんなこと言ってたらすぐに無くなってしまう。非常時ならともかく、食糧は各自で用意が原則なので。
筋肉の誓いの人たちは煮込みオークに満足し、お代だよと銀貨20枚くれた。なかなか太っ腹な人達だ。ありがたく頂戴しておこう。
そして夜も深け、僕たちは焚き火を囲んで順に見張りをしていた。僕の番は3番目で相方はゴリマさんだ。僕個人は戦闘力が低いので戦闘力の高い相方はありがたい。
「廃村まではあとどのくらいでしょうか」
「明日には着くが、実際の戦闘は明後日だな。お前らはオークはもう余裕だろ?」
「数匹程度でしたら。でも僕もリーネも一撃もらったら命取りですからね、オーク1匹でも僕らにとっては油断できない相手なんです」
オークは標準でもボクの体重の5倍以上だ。捕まれば殺されてしまうだろう。だからこそ僕らは確実に安全マージンをとる戦い方しかしない。
ただこれは僕らに限った話ではなくほぼ全ての冒険者がそうだろう。身体が資本なのだから怪我などしても何もいいことがない。どんなに屈強な男でもオーガに殴られたら大怪我をするはずだし、刃物で斬られれば出血するのだから。
「いい心がけだ。EランクだとDに上がりそうなパーティほどゴブリンやオークを舐めて取り返しのつかないことになることが多いからな。その気持ちを忘れるなよ」
「はい」
ゴリマさんは僕の話にニカッと笑う。確かに作ったような笑顔から来る歪さはあったが、これはきっと他者を怖がらせないように、と自然に身についたものなのだろう。もうすっかり慣れて怖くはない。
その後も僕はゴリマさん達の冒険譚を聞かせてもらった。そのパワフルな戦い方は驚嘆もので、オークを殴り殺したりオーガを投げ飛ばすという耳を疑うレベルの話もあったが、あの筋肉の持つ説得力は凄い。下手するとゴリマさん1人に僕ら全員やられるんじゃないかと思えてしまうほどだった。
そして交代の時間になり僕はアレサと交代して眠りにつくのだった。
「ここは川も近いから水を求めて魔物や動物が来ることもある。まぁ、ここには俺たち以外にも沢山のチームがいるが、見張りはできれば2人1組がいい。片方が眠くなった時に声をかけられるからな。まぁ、慣れてしまえば1人でも大丈夫だ」
「今回はコミュニケーションも兼ねて俺たちとお前らから1人ずつ出して見張りを行なうからそのつもりでな」
「はい、わかりました!」
アニキータとノーキンさんの説明に頷きずつ僕らは元気に返事をする。確かに僕達では途中で寝てしまいそうだ。
「んじゃ先ずは魚でも取るか。幸いここの川は流れも緩やかだからな。中に入ることができるなら……」
ゴリマさんが大きめの石を持ち上げ、川から顔を出している石に近づく。そしてその大きめの石で思いっきり川の石を叩きつけた。
するとぷかーっ、と魚が一匹浮かび上がり、それを慣れた手つきですくい上げると腰に下げたびくに放り込む。
「どよ、こういう捕り方もあるんだぜ」
「おおー、勉強になります」
うん、知ってたけど知らないふり。ストリートチルドレンなので魚は大事な栄養源でしたからね。ここは大げさに拍手もしておきましょう。
「よし、じゃあ俺たちも捕ろうぜ」
サルヴァンも靴を脱いで川に入り、魚を捕まえ始める。では僕も行きますか。魚を捕まえる罠は持っている。隠れる習性を利用すれば餌も要らないのだ。
そうやって僕たちも魚を捕まえる班と枝を拾って火を焚べる班に分かれた。火はリーネので簡単に着く。威力を間違えると大惨事だがそんなミスをするリーネではないだろう。
焚き火の遠火で魚を焼き、皆で食べる。うん、美味い。味付けは軽く塩のみだが、それがいい。
「うーん、魚もいいが、やはり肉が欲しいな。筋肉には肉だ」
「肉ありますよ? オークをですね、丸めて焼いた後タレに漬け込んであるので結構日持ちするんです」
これが実にオーク2匹分あるのだ。元々それなりに日持ちする料理なので、これなら収納魔法に時間経過がないことも誤魔化せるだろうとクランのメイドさんたちに作り方を習ったんだよね。
僕は防壁を物置き代わりに設置し、煮込みオークを5本取り出して大皿に乗せる。1本あたりの長さは人の顔くらいのサイズだ。温めると柔らかくなるので調理用の刺叉に刺して焚き火に近づける。軽く温めたらお皿に戻す。太さは僕の握りこぶしより少し大きいのでナイフで切り分け、別のお皿に盛り付けていく。筋肉痛の誓いの人達はたくさん食べられるだろうから多めに盛り付けた。
「どうぞ食べてみてください」
「悪いな、んじゃいただくぜ」
ゴリマさんがひょいと1枚つまんで口に放り込む。
「お、こりゃ美味い。いい味してるじゃねーか」
「ありがとうございます」
僕は次々とオーク肉を温め直してはナイフで切ってお皿に盛り付けていく。もちろん自分たちの分もある。他のチームがこちらを見てるけどあげない。数はあるけど、そんなこと言ってたらすぐに無くなってしまう。非常時ならともかく、食糧は各自で用意が原則なので。
筋肉の誓いの人たちは煮込みオークに満足し、お代だよと銀貨20枚くれた。なかなか太っ腹な人達だ。ありがたく頂戴しておこう。
そして夜も深け、僕たちは焚き火を囲んで順に見張りをしていた。僕の番は3番目で相方はゴリマさんだ。僕個人は戦闘力が低いので戦闘力の高い相方はありがたい。
「廃村まではあとどのくらいでしょうか」
「明日には着くが、実際の戦闘は明後日だな。お前らはオークはもう余裕だろ?」
「数匹程度でしたら。でも僕もリーネも一撃もらったら命取りですからね、オーク1匹でも僕らにとっては油断できない相手なんです」
オークは標準でもボクの体重の5倍以上だ。捕まれば殺されてしまうだろう。だからこそ僕らは確実に安全マージンをとる戦い方しかしない。
ただこれは僕らに限った話ではなくほぼ全ての冒険者がそうだろう。身体が資本なのだから怪我などしても何もいいことがない。どんなに屈強な男でもオーガに殴られたら大怪我をするはずだし、刃物で斬られれば出血するのだから。
「いい心がけだ。EランクだとDに上がりそうなパーティほどゴブリンやオークを舐めて取り返しのつかないことになることが多いからな。その気持ちを忘れるなよ」
「はい」
ゴリマさんは僕の話にニカッと笑う。確かに作ったような笑顔から来る歪さはあったが、これはきっと他者を怖がらせないように、と自然に身についたものなのだろう。もうすっかり慣れて怖くはない。
その後も僕はゴリマさん達の冒険譚を聞かせてもらった。そのパワフルな戦い方は驚嘆もので、オークを殴り殺したりオーガを投げ飛ばすという耳を疑うレベルの話もあったが、あの筋肉の持つ説得力は凄い。下手するとゴリマさん1人に僕ら全員やられるんじゃないかと思えてしまうほどだった。
そして交代の時間になり僕はアレサと交代して眠りにつくのだった。
20
お気に入りに追加
711
あなたにおすすめの小説
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
不遇幼女とハートフルなもふもふスローライフを目指します! ~転生前の【努力値】で異世界無双~
epina
ファンタジー
彼方高志(カナタ タカシ)は異世界に転生した直後に女の子の悲鳴を聞く。
助け出した幼女から事情を聴くと、家族に奴隷として売られてしまって、帰る場所がないという。
タカシは転生して得た力で、幼女の保護者になると決意する。
おいしいものをいっしょに食べたり、きれいな服を買ってあげたり。
やがてふたりはいろんな試練を乗り越えて、さまざまなもふもふたちに囲まれながら、のんびり旅をするようになる。
これはAIサポートによって異世界転生した男が、世界で一番不幸な幼女を、世界で一番幸せにするまでの物語。
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
異世界転移は分解で作成チート
キセル
ファンタジー
黒金 陽太は高校の帰り道の途中で通り魔に刺され死んでしまう。だが、神様に手違いで死んだことを伝えられ、元の世界に帰れない代わりに異世界に転生することになった。
そこで、スキルを使って分解して作成(創造?)チートになってなんやかんやする物語。
※処女作です。作者は初心者です。ガラスよりも、豆腐よりも、濡れたティッシュよりも、凄い弱いメンタルです。下手でも微笑ましく見ていてください。あと、いいねとかコメントとかください(′・ω・`)。
1~2週間に2~3回くらいの投稿ペースで上げていますが、一応、不定期更新としておきます。
よろしければお気に入り登録お願いします。
あ、小説用のTwitter垢作りました。
@W_Cherry_RAITOというやつです。よろしければフォローお願いします。
………それと、表紙を書いてくれる人を募集しています。
ノベルバ、小説家になろうに続き、こちらにも投稿し始めました!
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった
盛平
ファンタジー
パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。
神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。
パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。
ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる