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ホテル改革ー新しいサービス編-2

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心地良く目覚めた、頭はすっきり、身体は・・・ぐぐっ、背中と腰が痛い・・・寝過ぎたな…。

う~~ん、両腕をあげて伸びをすると、くぅと小さくお腹が鳴った。
ん、食欲もある、よし元気だ!

今日はきちんと子供達と一緒に朝食をとろう!天使うちの子パワーをいっぱいもらって面倒事をちゃっちゃと片付けよう!

1日のスケジュールを確認してベリルの部屋に向かう。
1日半ベッドで過ごした、当然ながらそのしわ寄せは今日以降に来ることになる。
おかげで午後のスケジュールが分刻みだ…。

部屋に入るとぼんやり窓の外を眺めていたベリルが振り返り嬉しそうに微笑む。
優雅で柔和な笑顔、あぁ・・・、アウィンがもう少し大人になるとこんな感じかな…。

お茶を淹れる準備を始めたメイドと護衛を下げ二人きりになる。

カップに温かい紅茶をそそぐ。

「ヴェルデがお茶を淹れてくれるなんてうれしいな」

「そそいだだけよ、大げさね」

ローテーブルを挟んでソファーに向かいあって座る。

「体調をくずしてたんだって?大丈夫?」
(こんにゃろめ・・・誰のせいだと思ってんだ!)

「今日は腹黒宰相は一緒じゃないの?」
(腹黒宰相、あら、こんど本人に言ってみようかしら?)

「これからどうする気なの?」
ベリルの質問には答えず、ストレートに聞いた。 
ベリルに会話の主導権を渡すつもりはない。
なんだかんだと言い含められて、このままなんとなく城に居座りそうだ…。

「・・・っ」
何かを言いかけ、きゅっと下唇を噛む…。

「国へ帰らないの?お義母様ならどうにかしてくれるのではなくて?」

ベリルの母は隣国の筆頭公爵家の出だ、兄弟の中で殊更ベリルを可愛がった。実家に頼れば継がせる爵位や領地の一つや二つ簡単に用意できるだろう。

「この国で生きて行きたい・・・身勝手だとわかってる、わかっているんだ・・・それでも、一生許されなくても・・・そばにいたい
・・・」
弁の立つベリルとは思えない、素朴で嘘偽りのない言葉だった…。

「本当に身勝手な言い分ね」

私の言葉にハッと息を呑み、また唇を噛む…

「いつか、そうね・・・おばあちゃんとおじいちゃんになった時、嘆き悲しんだこと自体くだらないことだったねって、笑える時がきたら許してあげるわ」

ベリルは眉をひそめてぐっと奥歯を噛み締めている。

「この国に住むことを許可するわ」

「えっ?」
きょとんとした顔で私を見つめる。

「もちろん、しっかり働いて税金も納めてもらうわよ。仕事の話は明日、そして数日中にここを出て行って」

席を立ちドアへ向かう……。
突然、左手首をつかまれ引き寄せられる。
・・・そっと、右手で彼の手を振り解く。

「こうやって二人で話すのもこれが最後でしょう。さようなら」

精一杯冷静を装ってそう告げたが、声はかすかに震えていた。
ここで泣いてはいけない……。
出そうになる涙を力技でねじ伏せて、振り返らず部屋を後にした。
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