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いち
しおりを挟む「リザ!リザ・デュボア公爵令嬢はどこだ?!直ぐに出てこい!」
(チッ、やっぱり…)
パーティー会場の出入り口側でカクテルを飲んでいた私の前の人垣が左右に割れる…私はモーセじゃねぇーよ…。
壇上にいる婚約者のジュリアン殿下と目が合う。
「どこだ?早く出てこないか!?」
いやいや殿下、今、目あいましたよね?
殿下の目は節穴ですか?!
あっ!あー、なるほどなるほど、やっぱりそうですか…ますます後処理が面倒だな…たんまり特別手当出してもらいましょうかね~♡
ここは、リシャール王国国立貴族魔法学院。
貴族と一部魔力を持つ平民が3年間通う学院だ。
私は今日、この学院を卒業した。
そして今、卒業を祝うパーティーでキャンキャン仔犬のように壇上で吠えているのが2歳年下の婚約者ジュリアン・リシャール第二王子殿下である。
はぁぁぁ~と魂が抜けるほど深いため息をつき、割れた人垣の間を優雅に歩いて向かう。
静まりかえった会場にコツコツと私のヒールの音だけが響く。
「殿下、何事ですか?」
「リザ・デュボア公爵令嬢、貴様との婚約を破棄する!!そして、愛しいクララ・マルティス男爵令嬢と新たな婚約を結ぶものとする!」
「本気で仰ってるのですか?」
面倒なのでスルーしたいが、お約束なので一応問いかけてみる。
「クララとは真実の愛で結ばれているのだ!いかなる障害も二人を分つことはできない!!」
殿下の隣ではピンクの物体クララ嬢がギュッと殿下の腕を掴みプルプルと小動物のように震えている。
黒い噂の絶えない男爵が平民のメイドに産ませた庶子で、最近母親が死んで引き取られたらしいが真意の程は定かではない。
その首元には……。
(はい、ギルディ!)
「リザ様・・・ごめんなさい・・・」
「あなたは黙って!」
「えっ?!」
クララは何を言われたのか分からず、きょときょとと左右を見回す。
「リザ!そうやって今までもクララを虐げ…」
「はい、うるさい!殿下もお黙りになって、そして正座!!」
「「へっ?」」
「聞こえなかったの?二人とも正座!!」
言葉に魔力を込めて威圧すると、二人はペタッと床にお尻をつく。
「せ・い・ざ!!」
二人は寄り添い、ビクビクしながら正座をする。
正座した二人を確認して会場に結界を張る。
もちろん外部から侵入もできないし、防音もバッチリ。
学院設立以来2番目の魔力保有量を持つ私の結界は学院の教師であっても壊す事は不可能だ。
ちなみに歴代1位はお祖母様で、先王の妹、いまだ現役で辺境に赴いては趣味の魔獣狩りを楽しんでいる。
魔獣を狩るついでに隣国の斥候や蛮族なども狩っちゃったりして、この国の平和に大きく貢献している…今年還暦のお祖母様…。
そんなお祖母様の遺伝子を色濃く受け継いだ私が、正座する二人を仁王立ちで見下ろすと、「ひっ!」と周りの女子学生の悲鳴が…(あっ、忘れた!)
二人を見下ろしながら、右手を高く上げパチンと指を弾くと、パーティー出席者達がバタバタと倒れる。
(ごめんなさい、後でヒールで打ち身も治すからちょっと寝ててね)
ジュリアン殿下は正座の姿勢のままキョトンとこちらを見上げているが、目線が合わない。
(反応が乏しいな、早めに解除した方が良さそうね…)
「なっ、なによ!淑女の鏡とか言われてるくせにこっちが本性なのね!!」
クララは叫び、右手の親指を除く4本の指の爪を齧りはじめた。
クララの爪は可愛らしい容姿に似合わずガッタガタの深爪だ。
「爪を齧るのはやめなさいって、何度言ったらわかるの!?齧るから爪がシジミみたになっちゃうのよ!」
クララの右手首を掴み、口元から遠ざける。
「っ??・・・そんなこと言われたこと、ない?・・・シジミ・・・えっ、うそ?!そんなことあるわけ・・・」
混乱してるクララの前に膝をつき、ゆっくり顔を覗き込むとニッと悪い顔で笑う。
「っ、まさか!理沙おば・・・」むぎゅっ!
「言わせねーよ?」
思いっきりクララの頬を左右に引っ張る。
「いっ、いたいよー、ごめんなひゃい!理沙ちゃん!本当に理沙ちゃん?!本当に??」
クララの頭を撫でながら何度もコクコクと頷く。
「うっそー?理沙ちゃん?理沙ちゃん!!うぇっ、うぇっ・・・うわーーーん」
クララの頬に大粒の涙がポロポロと伝う。
「クララ…」
「ぐすっ、クララって、呼ばないで、きっ、嫌いこんな名前、ひっく…」
「きーちゃん」
「うぇーーーん」きーちゃんこと、前世私の姪であった姫星は私の胸に顔を埋め泣きじゃくった…。
「きーちゃん、感動の再会は後でゆっくり、ねっ?そのペンダントを渡してくれる?」
「ぐすっ、これ?お父様が…いつも身につけてなさいって…厳しく言われてて…」
「うんうん、わかってるよ。でもね、それを渡してくれないと殿下が大変ないことになっちゃうの」
「えっ、ジュリアン様が?」
「そう、詳しいことは後できちんと説明するから渡してくれるかな?」
「うん、理沙ちゃん・・・はい」
クララからペンダントを受け取ると床に叩きつけた。ローズクオーツの様なピンクの石にピシッと亀裂がはしりその隙間から怪しげなピンクの煙が上がった。
左足で煙ごとネックレスを踏みつけると、煙は霧散した。
ドサッ…
糸が切れたマリオネットのようにジュリアン殿下が前のめりに倒れた。
「ひっ! ジュリアンさま~!」
慌てたクララがジュリアンの肩を揺するが反応はない。
「きーちゃん、大丈夫だよ。えっとね、たぶんそれ輝星だよ」
「げっ!」
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「なぜ前世キラキラネーム?」
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