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美津子目覚める

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誰かが泣いている…周りを見渡すが何も見えない、ただ黒一色の世界…頬を熱いものが伝う…ゆっくりと意識が浮上する…あ~泣いているのは自分か・・・。

孤独な少女の生涯を追体験して涙が止まらない。重たい瞼をあげても涙で霞んでよく見えない。
誰かが涙を拭ってくれた。
「おっ、お嬢様⁈」
人参のような髪色の少女が柔らかな布で涙を拭いながら不安に揺れる目でこちらを覗き込む。
(あっ、知ってるこの子…)
確か屋敷の使用人の1人だ、ダリアと歳が近くよく世話をやいてくれた子だった。
「お嬢様!!」大きい声はやめて~、頭がガンガンする~。
「えっと、あっ!そうだ!私、お医者様を呼んできますね!!」
どかっと立ち上がるとパタパタと駆けて出て行ってしまった。
「まっ、まって・・・みっ、水~」喉がカラカラで声もまともにだせない。
とにかく経験したことのない虚脱感で指一本動かせない。頑張って首を右に倒し、あたりの様子伺おうとしたが白い布に邪魔され家具らしき物の輪郭しかわからない。これって天蓋付きベットってやつか!早々に諦め人参ちゃんが戻るのを待つことにした。
しばらくして人参ちゃんが白髪の優しそうな医師とローブを着た美人さんを連れて戻ってきた。
医師は優しく私の額に触れ、次に耳のあたり、手首に触れ「もう、大丈夫ですよ」と穏やかな笑顔で告げるとローブ姿の美人さんにその位置を譲った。
美人さんも同じよう触れたあと「うん、問題ないね」とニッコリ微笑んだ。
美人さんの笑顔頂きました!
声を出すのも辛いのでコクっと小さく頷き2人に視線を送ると、察してくれた医師が吸い飲みで口に水を含ませてくれた。
お医者様~ありがとう!!

医師は長話はまだ体に障るからと、わかりやすく現状を伝えてくれた。

今、私が寝ている場所は王城の客室で丸2日目を覚さなかったこと、ダリアが馬車で飲んだ液体は遅効性の毒だったこと、毒は窒死量で助かったのは奇跡だと。
毒の小瓶と一緒に手紙が数通残っていたことなど……。

ローブの美人さんは宮中精霊魔術士と名乗った。精霊魔術士?? 

この国の人はほとんど魔力を持っていて、平民より貴族が魔力量が多い傾向にあること、そして魔力があっても精霊や妖精の力を借りなければ魔術は行使できないと教えてくれた。

ダリアが森の泉で行った儀式は妖精と契約することで命と引き換えに一番の望みを叶えるものだったという。
美人さんが、問題ないと言ったのは不安定だった美津子の魂が肉体と強く結びつき安定したという意味だった・・・。

3人が退室した後、情報量の多さにしばらく呆然となる。
奇跡なんてない、ダリアはもういないのだから・・・。
なぜダリアは私を呼んだの?ダリアの望むものって強さ?いやいや私だって決して強いわけじゃない。
長い人生いっぱい傷ついた、ただ歳をとるにつれ面の皮と一緒に心のプロテクターも厚くなっていっただけ、つまりおばさんになって色々鈍くなっただけなんだよな~。

ダリアはつり目で無表情だからか周りは勝手にキツい性格だと思っていたようだ。
確かに表情筋は死んでたが花を愛でたり本を読んだり穏やかな子だったと思う。
父がつけたらしいダリアと言う名前を気に入っていて、そしてあの…あのヒョロヒョロ残念王子を愛してた!!

ダリアは決して出来の悪い子ではなかった、少しだけ周りとテンポが合わなかっただけ、自分で納得して消化しないと自分の知識として蓄えられないだけで
一度自分のものにした知識は忘れない
とても記憶力のいい子だった。
いたよ、うちの部下にも似たタイプ、誤解されがちなんだよね。

そんなことも理解しない宮仕えのくせにレベルが低い講師たち!!

全く出番なかったが多分育児放棄したダリアの両親!!

そしてあの5人!!

猛烈に怒りが湧く!!!

誰もがダリアに無関心、理解しない、労わない、抱きしめない……。
なぜあんなに愛らしい少女が誰にも愛されなかったのか?!

ふいに涙が瞳からこぼれた。

全員殴りにいくか!!!
最近忙しくて趣味のキックボクシングに行けてなかったし、実家の空手道場にもしばらく顔出してないな~。
でもこの身体ダリアのだけど、大丈夫か?

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次回からやっとざまぁ~回です。
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