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「俺の娘だ、政略結婚の駒ぐらいにはなるだろう」
王都から戻った夫は帰宅の挨拶もなく突然そう言い放った。夫の後ろにはみすぼらしいワンピースを着た少女が立っていた。
「3年後、王立学園に入れる!読み書きもできないらしいが、それまでに間に合わせろ!」
「えっ、さすがにそれは・・・」
「金はいくら使っても構わん、お前は言う通りにすればいいんだ!」
子供の紹介もなく私室に向かう夫の背中を呆然と見送る。
夫の態度はいつものことだ、没落しかけた実家への援助を条件に結ばれた婚姻・・・。
彼は爵位が上でそれなりに見栄えがするお飾りの妻が欲しかっただけ・・・。
しばらく物思いにふけっていたようで、ドレスの袖をつんつんと引かれ意識が覚醒する。
(はっ!いけない)
私は過去の記憶を振り払うように頭を振り、少女に向き合う。
膝をおり目線を合わせ少女の顔をまじまじと見つめる。
パッチリした目に小さな鼻、さくらんぼのような唇、薄汚れてはいるが可愛い少女だ。
特に見る角度によって変化するオパールのような瞳はきっと誰もが魅了されるだろう。
(この瞳どこかで・・・いっ、痛い!頭が・・・なっ、なに、この記憶)
突然、濁流のように脳に流れ込んでくる記憶・・・オパールのような瞳・・・魅了・・・学園・・・男爵令嬢・・・婚約破棄!
ーーーーーーーーーーーーー
あっ!!やべっ!転生してる。なぜ今思い出す!遅くね?!
せめてくそ旦那と結婚する前に思い出してくれよ。
ちっ、やべ~ぞ、詰んでるぞ、この転生…
ここは、前世読み漁ったWeb小説のひとつ、人気があって書籍化コミカライズもなった作品の世界だった。
スタートはテンプレ、王立学園に王太子殿下とその婚約者の公爵令嬢が入学した翌年、成金男爵家の庶子が入学してくる。
貴族社会になじめず学園で一人浮く少女、無邪気に笑う少女に心惹かれる王太子とその側近達。
逆ハーなどはなく、王太子ルート1本。 とにかく幼少期から「王子様と結婚する!」を座右の銘にあらゆる手練手管に磨きをかけるお花畑ヒロイン。
なんたって彼女は娼婦の娘だ、お手本にするおねえさま方は周りに豊富にいた。
母親が病気で亡くなり血縁上の父親である男爵に引き取られるが、父親には構われない、正妻には憎まれ、異母弟にも無視される。
それでもめげないお花畑ヒロインは男性使用人を味方につけ、なに不自由なく男爵邸で3年間暮らし、どうにか学園に入学する。
2年後、ポンコツ王太子が自分の卒業式で少女をぶら下げて入場、公爵令嬢に婚約破棄を突きつける。
もちろんぼっこぼっこの返り討ち、安心のざまぁですよ。
ここまでは、テンプレ of テンプレなのだが、物語はこの時点でまだプロローグ!
断罪した公爵令嬢はその後聖女の力に目覚め、英雄の称号をもつ第二王子と隣国からの侵略を防いだり、冒険したり、なぜだか作者、壮大なファンタジーに舵を切りだして読者を唖然とさせた。もちろん私も唖然とさせられた読者の1人ですとも!
お花畑ヒロインはただの当て馬、物語後半ではその存在さえ忘れられる存在、そんなモブヒロインの、名前も出てこないモブですらない義母に転生って!<---いまここ!
少女を侍女に預け、お風呂と食事を指示、急ぎ自室に戻った。
ノートにペンを走らせ、これからのタイムスケジュールをうめていく。
3年後に入学なら今はまだ10歳、教育次第でお花畑を矯正できなくもないがそんな面倒なことはやらない。
他人が生んだ子なんて知ったこっちゃない。可愛いのは自分の息子!!
ざまぁ後、男爵家はお取りつぶしになる。もともと商人から成りあがった男爵なので平民にもどるのは問題ないが、公爵家への莫大な慰謝料で事業も傾く。
ただの貴族令嬢でしかない、物語の中の私はそんな生活のなか気鬱になり息子の成人前に他界する!
冗談じゃない!旦那に毛先ほどの愛情もないし、貧乏暮らしも勘弁だ。
入学まで3年、ざまぁ卒業式まで2年、前世の記憶を思いだした今なら十分に逃亡計画が練れる。
急いては事を仕損じる!
ついさっきまで夫の言いなり、元伯爵令嬢で男爵夫人が突然キビキビ活動しだしたら奇異の目で見られてしまう。
いままで通り目立たず、水面下で動かねば!
私はベルで家令を呼び出し、少女のマナー教師と家庭教師の手配を依頼するついでに7歳の息子テオドールの剣術、魔術の家庭教師も追加する。
「金はいくら使っても構わん」って言質取ってるもんね~。
何にって言われてないし、息子の教育に対する投資は非難される筋合いのものでは無い!
ヒロインはやはりヒドインだった。。。教師が厳しいと泣き(ウソ泣き)、義母がいじめると泣き(涙でてない)、事あるごとに(実際には何もない)父親の泣きつくが、旦那は「そうか」の一言でまったく相手にしない。こいつ本当に娘も政略の駒としか思ってないわ・・・。
付け焼き刃で淑女教育を施し、日本なら小学校低学年程度の算数、貴族必須項目であるこの国の歴史を叩き込んだ。
3年間、極力息子とは合わせないよう徹底的にガードした。
エピローグの最後の明らかになる事実・・・この少女薄っす~いが魅了の魔力持ちだった。
実母からの遺伝で、彼女はかなりコントロールができたらしいが少女は魔力を垂れ流しだ。
薄っす~いのでもともと自分に好意がある人間の気持ちを少し高める程度らしいが・・・。
休む暇もなく忙しく立ち働いていたらあっという間に3年が過ぎていた。
ヒドインちゃん、どうにか学園には入学でき、今日王都へ旅立った。旅立ったといっても王都までは1日距離なんだけどね。
学園は寮なので長期休みまでは帰ってこないだろう!
そういえば、少女の名前なんだっけ?一度も呼んだことないかも、まあいっか、他人だし。もうこのまま二度と会わないかもしれないしね。
クソ旦那も主に王都で仕事だし、ここ最近あたらいい愛人ができたようで本宅に帰ってくることもない。
ふふふ、やった~~!自由よ!!
2年待たなくても準備はできてるけど、資金は多い方がいい。
ここから2年、立ち上げた商会をもっと大きくして隣国に移り住む。
実家はどうにか持ち直したし、弟には会いたいが私を売った両親には未練はない。
お花畑ヒロインちゃんはストーリー通りに爆速で王太子を攻略してるらしい(笑)
さて、そろそろいいかな。
私は離婚届とクソ旦那の不貞の調査書を彼の執務室に置き屋敷をでる。
馬車には嬉しそうに目を輝かすかわいい息子。
「ふふっ、テオドールこれから楽しみね!」
「はい、母上!」
バツイチ子持ちの私の新たな人生が始まった。
王都から戻った夫は帰宅の挨拶もなく突然そう言い放った。夫の後ろにはみすぼらしいワンピースを着た少女が立っていた。
「3年後、王立学園に入れる!読み書きもできないらしいが、それまでに間に合わせろ!」
「えっ、さすがにそれは・・・」
「金はいくら使っても構わん、お前は言う通りにすればいいんだ!」
子供の紹介もなく私室に向かう夫の背中を呆然と見送る。
夫の態度はいつものことだ、没落しかけた実家への援助を条件に結ばれた婚姻・・・。
彼は爵位が上でそれなりに見栄えがするお飾りの妻が欲しかっただけ・・・。
しばらく物思いにふけっていたようで、ドレスの袖をつんつんと引かれ意識が覚醒する。
(はっ!いけない)
私は過去の記憶を振り払うように頭を振り、少女に向き合う。
膝をおり目線を合わせ少女の顔をまじまじと見つめる。
パッチリした目に小さな鼻、さくらんぼのような唇、薄汚れてはいるが可愛い少女だ。
特に見る角度によって変化するオパールのような瞳はきっと誰もが魅了されるだろう。
(この瞳どこかで・・・いっ、痛い!頭が・・・なっ、なに、この記憶)
突然、濁流のように脳に流れ込んでくる記憶・・・オパールのような瞳・・・魅了・・・学園・・・男爵令嬢・・・婚約破棄!
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あっ!!やべっ!転生してる。なぜ今思い出す!遅くね?!
せめてくそ旦那と結婚する前に思い出してくれよ。
ちっ、やべ~ぞ、詰んでるぞ、この転生…
ここは、前世読み漁ったWeb小説のひとつ、人気があって書籍化コミカライズもなった作品の世界だった。
スタートはテンプレ、王立学園に王太子殿下とその婚約者の公爵令嬢が入学した翌年、成金男爵家の庶子が入学してくる。
貴族社会になじめず学園で一人浮く少女、無邪気に笑う少女に心惹かれる王太子とその側近達。
逆ハーなどはなく、王太子ルート1本。 とにかく幼少期から「王子様と結婚する!」を座右の銘にあらゆる手練手管に磨きをかけるお花畑ヒロイン。
なんたって彼女は娼婦の娘だ、お手本にするおねえさま方は周りに豊富にいた。
母親が病気で亡くなり血縁上の父親である男爵に引き取られるが、父親には構われない、正妻には憎まれ、異母弟にも無視される。
それでもめげないお花畑ヒロインは男性使用人を味方につけ、なに不自由なく男爵邸で3年間暮らし、どうにか学園に入学する。
2年後、ポンコツ王太子が自分の卒業式で少女をぶら下げて入場、公爵令嬢に婚約破棄を突きつける。
もちろんぼっこぼっこの返り討ち、安心のざまぁですよ。
ここまでは、テンプレ of テンプレなのだが、物語はこの時点でまだプロローグ!
断罪した公爵令嬢はその後聖女の力に目覚め、英雄の称号をもつ第二王子と隣国からの侵略を防いだり、冒険したり、なぜだか作者、壮大なファンタジーに舵を切りだして読者を唖然とさせた。もちろん私も唖然とさせられた読者の1人ですとも!
お花畑ヒロインはただの当て馬、物語後半ではその存在さえ忘れられる存在、そんなモブヒロインの、名前も出てこないモブですらない義母に転生って!<---いまここ!
少女を侍女に預け、お風呂と食事を指示、急ぎ自室に戻った。
ノートにペンを走らせ、これからのタイムスケジュールをうめていく。
3年後に入学なら今はまだ10歳、教育次第でお花畑を矯正できなくもないがそんな面倒なことはやらない。
他人が生んだ子なんて知ったこっちゃない。可愛いのは自分の息子!!
ざまぁ後、男爵家はお取りつぶしになる。もともと商人から成りあがった男爵なので平民にもどるのは問題ないが、公爵家への莫大な慰謝料で事業も傾く。
ただの貴族令嬢でしかない、物語の中の私はそんな生活のなか気鬱になり息子の成人前に他界する!
冗談じゃない!旦那に毛先ほどの愛情もないし、貧乏暮らしも勘弁だ。
入学まで3年、ざまぁ卒業式まで2年、前世の記憶を思いだした今なら十分に逃亡計画が練れる。
急いては事を仕損じる!
ついさっきまで夫の言いなり、元伯爵令嬢で男爵夫人が突然キビキビ活動しだしたら奇異の目で見られてしまう。
いままで通り目立たず、水面下で動かねば!
私はベルで家令を呼び出し、少女のマナー教師と家庭教師の手配を依頼するついでに7歳の息子テオドールの剣術、魔術の家庭教師も追加する。
「金はいくら使っても構わん」って言質取ってるもんね~。
何にって言われてないし、息子の教育に対する投資は非難される筋合いのものでは無い!
ヒロインはやはりヒドインだった。。。教師が厳しいと泣き(ウソ泣き)、義母がいじめると泣き(涙でてない)、事あるごとに(実際には何もない)父親の泣きつくが、旦那は「そうか」の一言でまったく相手にしない。こいつ本当に娘も政略の駒としか思ってないわ・・・。
付け焼き刃で淑女教育を施し、日本なら小学校低学年程度の算数、貴族必須項目であるこの国の歴史を叩き込んだ。
3年間、極力息子とは合わせないよう徹底的にガードした。
エピローグの最後の明らかになる事実・・・この少女薄っす~いが魅了の魔力持ちだった。
実母からの遺伝で、彼女はかなりコントロールができたらしいが少女は魔力を垂れ流しだ。
薄っす~いのでもともと自分に好意がある人間の気持ちを少し高める程度らしいが・・・。
休む暇もなく忙しく立ち働いていたらあっという間に3年が過ぎていた。
ヒドインちゃん、どうにか学園には入学でき、今日王都へ旅立った。旅立ったといっても王都までは1日距離なんだけどね。
学園は寮なので長期休みまでは帰ってこないだろう!
そういえば、少女の名前なんだっけ?一度も呼んだことないかも、まあいっか、他人だし。もうこのまま二度と会わないかもしれないしね。
クソ旦那も主に王都で仕事だし、ここ最近あたらいい愛人ができたようで本宅に帰ってくることもない。
ふふふ、やった~~!自由よ!!
2年待たなくても準備はできてるけど、資金は多い方がいい。
ここから2年、立ち上げた商会をもっと大きくして隣国に移り住む。
実家はどうにか持ち直したし、弟には会いたいが私を売った両親には未練はない。
お花畑ヒロインちゃんはストーリー通りに爆速で王太子を攻略してるらしい(笑)
さて、そろそろいいかな。
私は離婚届とクソ旦那の不貞の調査書を彼の執務室に置き屋敷をでる。
馬車には嬉しそうに目を輝かすかわいい息子。
「ふふっ、テオドールこれから楽しみね!」
「はい、母上!」
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