卯の姫と辰の君

一話

その日の夜遅く。美卯は眠りに就いていた。

その隣に、畳に座す青年が1人。

  その人物は、美卯の未来の夫・辰城本家の現当主である辰二朗だ。


辰二朗は、美卯の手を取るとその手に口づけを落とした。


まるで、何かをかたく誓う様に。


「ご当主、いくら未来の妻とはいえ、寝ている女の子の寝込みを襲うのは如何なものかと。」


美卯の手を離した辰二朗がその場にそのまま座っていると、障子を開け理巳が入ってきた。


  辰二朗「襲ってない。人聞きの悪い事を言うな。」


    理巳「...美卯様を龍花様と重ねておいでですか」

辰二朗「...龍花は俺のたった1人の女兄弟だった。龍花も生きていればこの子くらいの歳だろう。
「今度こそ大切な女の子を守ってみせるさ。」
「...俺の考えが甘かったんだ。あの兄でも、いくらなんでも自分の血の繋がった家族から“龍力“を奪ったりはしないだろう。だなんて。」




     辰二朗には、血の繋がった2人の兄妹がいた。

辰二朗の兄・龍一と、妹の龍花である。

3年前、龍花が13歳になったばかりの頃。



事は起こった。