名門陰陽師一族の落ちこぼれ姫

弌章

入学式

「それでは、只今より平成３０年度 陽陰学園 中等部・高等部の入学式を始めます。一同、起立!」


新入生が全員体育館に集まったのを確認し終えた、教頭らしき中年の男がそう言い、ついに入学式が始まった。



   教頭「一同、礼。」


  教頭が全員が礼を終えたのを確認すると、


教頭「一同、着席。」


今度は全員に座るように指示が出された。



  教頭「校長 挨拶。では校長、お願い致します。」



校長らしき老齢の男性は、教頭からマイクを受け取ると、階段をあがり、舞台に昇った。



校長「新入生の皆さん初めまして。校長の安倍 晴充（あべ はるみつ）です。これから始まる学校生活に不安と期待で胸がいっぱいかと思いますが、どうか臆せず、挑戦し続け己を磨いて下さい。また、陰陽道の学校らしい楽しい学校行事もありますので、それも含めて学校生活を楽しんで下さいね。それでは、これをもちまして校長挨拶とさせていただきます。」



教頭「校長先生ありがとうございます。それでは、続きまして、新入生代表挨拶。」
「新入生代表、高等部一年生，倉橋 龍輝（くらはし たつき）。」



陽菜(....え?!龍輝君もここの生徒だったの....?）


    新入生代表の名前を聞き、その顔を見た陽菜は、思わず体が強張った。そして、陽菜自身もそれを感じていた。
陰陽師の家系に産まれた者は、7割が陽陰学園に入学するが、必ずしもそうとは限らない為、陽菜はその可能性に賭けていた。という事は、すなわち陽菜はあの新入生代表の少年がかなり苦手なのだ。


☆


   新入生代表の挨拶と、在校生代表の挨拶の後、国歌と校歌の斉唱が終わると、入学式は終了した。そして陽菜達高等部の1年生は、皆同じ教室にてあいうえお順で座り、担任と思われる女性の話を聞こうとしている。
   どうやらこの学校の高等部は、一学年につき一クラスしかない様だ。




「皆さん、初めまして。高等部一年クラスの担任になった、弓削 幸（ゆげ みゆき）です。よろしくね。」



  弓削先生「さて、じゃあ、これからの流れを説明するわね。まず、今から教科書・ノート・陰陽道の基礎授業に使う道具なんかを渡します。教材を渡し終わったら、ホームルームとして自己紹介と３０分の自由時間があるわ。その後は、入寮する人達には寮の案内があります。寮に入らない人は、ホームルームが終わったら、帰っていいわよ。」




「せんせー、質問いいですかー?」



弓削先生「どうぞ。」



「何でわざわざ、学校指定のノート渡すの?全部の授業のノートが自分のノートじゃダメなんですかー?」



弓削先生「それなんだけどね、陰陽道の授業に関しては、すべて学校指定の教材を使ってもらうわ。例として、陰陽道の授業で使うこのノートを紹介するわね。」

「このノートは、普通の紙とは違うの。霊力の強さに関係なく、普通に板書はとれるわ。でもね....このノートは、″使用者の霊力に反応するノート〟なのよ。だから、陰陽道の板書授業は”必ず”このノートで板書を写してね。あと、陰陽道の教科のテストも、このノートと同じ紙で出来たテスト用紙に答案を書いてね。他に質問は?」

「質問は無いみたいね。じゃあ、教材を配るわよ。」