姫と妖の園

壱

妖狐の郷

柚葉と樟葉は、この屋敷の主である樟葉の父の部屋の中にいた。


「はじめまして。私は黒の九尾狐の長、玉刃（ぎょくは）です。」


柚葉「はじめまして。」



   玉刃の顔は、樟葉に似ていなかった。が、樟葉との共通点があり、それは黒狐の九尾だということである。そして、玉刃の瞳は、アメジスト（紫水晶）のような澄んだ紫の瞳だ。


そして、柚葉，樟葉，玉刃がしばらく話をしていると、スッ、と障子の開かれる音が聞こえてきた。


「樟葉、お帰りなさい!」


そして、障子の側には、ふたりの妖狐が立っていた。ひとりは白い九尾の女性で、金色の瞳をもっていた。顔は、樟葉によく似ていた。
もうひとりは、女性と同じ白狐の九尾で、玉刃と同じ紫の瞳をもっていた。こちらも女性と同じく樟葉と同じ顔だった。どうやら、玉刃の子どもはふたりとも顔立ちは妻に似たようだ。


「樟葉！おかえりなさい！」


樟葉「ただいま。母さん。柚葉様、僕の母です。」


「あら！初めまして！樟葉の母の雪葉です。貴女が姫ね。お会いしたかったわ！」


柚葉「はじめまして。橘 柚葉です。」


「樟葉！」


樟葉「智樟。柚葉様、智樟は僕の双子の兄です。」


智樟「初めまして。貴女が姫ですね。」


  柚葉「はじめまして。橘柚葉です。」