星に願い陰はらう。

神無月 花

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ーー京都にある、安倍本家の屋敷。その屋敷の一室に、鏡の前に座る少女がいた。

時刻は、18時時59分。夕方から、夜に変わる1分前である。



(あと、1分...)



59、

58、

57


少女は、鏡の前に座ったまま、心の中で数を数える。




そして、1分経ったころ...


「19時。やっと本来の“俺“に戻る時間か。今日も長かった。」


鏡の前に居たのは、 先程の美しい少女ではなかった。


そこに居たのはーー。


“俺“の一人称のとおり、女性ではなく男だった。 


なぜ、“彼“が女性の姿になってしまっていたのか。その理由は、彼の一族の歴史にある。


   彼の先祖はかの有名な陰陽師・安倍晴明である。そして安倍晴明は、一千年前帝に憑いて悪事の限りを尽くした九尾の妖狐を封印した。



しかし。



九尾は最後の妖力を振り絞り、晴明への怨みを果たすため晴明の子孫にある呪いをかけた。


それは。


ーー男性が、女性の姿になってしまう呪い。



  九尾は、安倍一族から完全に男がいなくなるよう念じて呪詛を放った。そうすれば、一族内は女ばかりになり、結果的に晴明の血筋が絶えると考えたからだ。


だが。


   安倍晴明もその日出せる限りの霊力を出しきり、九尾の呪いを弱体化させたのだ。そのため、男性がうまれなくなったり、男性が早死にすることはなくなった。しかしそれでも、九尾の呪詛を完全に弱める事が出来ず、晴明の子孫は直系の男性が女になってしまう呪いがかかってしまうようになってしまったのだ。
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