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第一章「異世界ナイトゼナ」

第4話「この世界の運命」

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「この世界、ナイトゼナはかつて8つの大陸があった。だが、今は4つの大陸と小さな島々しかない」



シェリルさんはゆっくり話し始めた。
周りは少々五月蝿いが、私は話を聞くことに集中した。



「何故4つなのか? それは100万年前に遡る。その時代、国々は長い戦争を終え、それぞれの国家として独立した。長い混乱期が終わり、世界は平和になったかに見えたが、それを快く思わない者達がいた。そいつらは自らの命と引き換えに異界からある魔物を召喚したんだ」



「魔物……」



「そうだ。異獣いじゅう・マルディス・ゴアという。醜い動物のような姿をし、背中には翼が生え、赤き紅蓮の炎を吐き、人を食らう事、そしていくさを好んだという。奴のせいで8つあった大陸は4つへと減ってしまった。残された国家はそれぞれの国で腕自慢の猛者を集めて討伐に向かわせたり、軍隊を送り込んだが、それでも奴を倒すことはできなかった。王達は頭を抱えた。このままでは世界は滅んでしまう。そんな時、現れたのが”四英雄”と呼ばれる者たちだ」



「四英雄ですか」



シェリルさんはレッドスチルを飲みつつ、更に続ける。私も一口飲んで喉を潤した。
なんか、外国産のジュースみたいで、トマトジュースによく似た味だ。
味は濃いけど、後味はサッパリしていいな。
一方、ミリィさんはまだ肉と酒を飽きること無く梯子する。
シェリルさんはこの光景に慣れているらしく、何も言わなかった。



「英雄たちは先祖が異界から持ち込んだという剣を持っていた。それがあればマルディス・ゴアを倒せると王たちに告げたのだ。英雄たちは王から討伐命令を受け、旅立った。そして、奴の刺客を次々と倒していき、遂にマルディス・ゴアを倒したのだ。だが、ここで一つ問題が起きる」



「問題?」



「マルディス・ゴアは不死の存在なのだ。いくら殺しても完全に死ぬことはなく、何度でも復活できる。英雄達は悩んだ末、最終手段としてその命と引き換えにマルディス・ゴアを自らの武器に封印した。そして、その武器はこの世界のどこかに封印されたという。そして、世界には再び平和が訪れた。四英雄は神格化され、今では神として崇め奉られている。彼らが世界を平和にした日は世界平和記念日として制定され、全ての労働者はその日だけは労働を止めて、お祭りをしたり、酒を飲んだりの、どんちゃん騒ぎになるのさ」



「まさか、セグンダディオは……」



「そう、それは四英雄の一人・カムラ・セグンダディオが所持していた剣だろう」



そんな重要な物だったなんて。
ど、どうしよう。
というか、封印されたとシェリルさんは言っていた。
今、この手元にある剣が本当にセグンダディオなら。



「まさか、マルディス・ゴアの封印が解けたんですか?」



「それはわからない。四英雄の話は100万年も前の話だ。そもそも剣が実在しているのかもわからない。正直、おとぎ話に近いレベルだ。だが、もし本物ならこの世界が買えるぐらいの大金になるだろうな」



「ん……?」



あれ、何だか眠くなってきた。
どうしたんだろう、緊張の糸が切れたんだろうか。
目をこすってみても、舌を歯で噛んでも、眠気が収まらない。
というか、なんか、身体に力が入らない?
あれ、どうしちゃったんだろう?



「どうした、メイ?」



シェリルさんが心配そうにこちらを伺う。ミリィさんはそのまま肉を食べ続けている。
赤い顔をしながら肉を食べつつ、ビールを飲んでいる。少しはこちらの心配をしてもいいと思うのだが。
だけど、なんかチラチラとこっちを見ている気がする。



「す、すみません。な、なんか急に眠くなってきて……」



「ほら、レッドスチルでも飲んで目を覚ませ」



私のグラスに注いでくれるシェリルさん。
どうしたのかな、私は。
人が話している途中で眠くなるなんて。
注いでもらったレッドスチルを一気に飲み干す。



「あ、はい。あ、あれ? あ……れ……」



眠気は覚めず、むしろ、深みを増し、瞼がだんだん重くなっていく。
一瞬、シェリルさん達がニヤリと笑った気がした。
肉ばかり食べているミリィさんもこちらに笑みを浮かべる。
それはどこか、寒気のする笑顔だった。





私はその笑顔の意味を理解できぬまま、気を失った。
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