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2章 ルーズファミリー
5.自己紹介と初めての食事
しおりを挟む「まあ、とりあえず食堂に行きますか!
…どうっすか?歩けそうっすか?」
私はベッドを降りて歩こうとするがまだ体が起ききっていないのかフラフラする…。
「あっ…」
「…おっと、危ないっすよ。
やっぱりまだダメ見たいっすね。」
フラフラで転けそうになると赤髪の青年が私を抱っこしてくれた。
「あ、ありがとうございます。」
抱っこなんて産まれて初めてされるから何だか気恥しい…。
「あ、そうだ。自己紹介してなかったっすね。
…俺はレオン=ブラッドっす。好きなように呼んでくれていいっすよ!あ、たださん付けはやめてくださいっす!」
「…えっと、レ、レオン…?」
私が名前を呼ぶと何故か抱っこしていない方の手で目元を隠し天を仰いだ。
…どうしたんだろう?
「っ…はぁ~、なんすか今の?俺の名前呼んでコテンて、コテンてなんすか!?可愛すぎるっす…!」
レオンの言ってる事はよく分からないが怒ってはいなさそうだ…。
良かった。
そうこうしてるうちに食堂とやらに着いたらしい。
アルファード様とカインさんが広い部屋の一角に座っていた。
「おや、レオン。遅かったですね。」
「いや、ちょっと自己紹介してたんすよ。」
「あぁ、そういえばまだ自己紹介していませんでしたね。
私はカイン=ゼストルです。これからよろしくお願いしますね。」
「はい、えっと…カイン?」
名前を呼ぶとカインはボッという音でもしそうなぐらい顔が赤くなった。
「っ…いや、なんですかそれ。」
…怒ったのだろうか?
「…っ可愛すぎる(((ボソッ」
「あの、怒りましたか…?」
顔を真っ赤にするほど嫌だったのだろうか…。
「あっ、そういう訳ではなくてですねっ!えっと、いつも野郎しか周りにいないので少しビックリしたというか、えっと、なんというかですねっ…!」
凄い早口だ。何か…焦ってる?ような感じがする。
「フッ、珍しいな。カインがそんなに慌てるなんて。
…君には既に自己紹介はしたが、もう一度言っておこう。
アルファード=カルガンだ。好きに呼んでくれ。」
私をその手で救いあげてくれた人。私の恩人…。
「アルファード様?」
そう呼ぶと何故か食堂が寒くなってきた。
なんでだろう…?今日の気温はこんなに寒くなかったはずなのに。むしろ少し暑いくらいなのに…?
「………なぜ、俺だけ様付けなんだ。」
「だって、あなたは私を助けてくれた恩人だから。」
そう言うとアルファード様はため息をついた。
何がいけなかったんだろう?
「呼び捨てでいい、そっちの方が気が楽だ。」
呼び捨て…本当にいいのだろうか?
かといってアルファードって呼ぶのじゃあ少し長い気もするから…
…あ、そうだ
「…アルフ、アルフじゃダメですか?」
そう聞くとアルフはとても満足そうに頷く。
良かった、気に入ってくれたのかな?
……それより、横の2人がとても気になる。さっきからカインとレオンが笑っている。
カインは肩を震わせて声を出すのを我慢しているみたいだけど、レオンは吹き出して笑いだしてしまった。
「…っ!ふっ、ふふっ、あははっ!!
凄いっすね!ボスがそんな顔するなん、て、あははっ!」
レオン、凄い笑ってる。何がそんなに面白かったのだろう?私には分からないな。
「…レオン、お前後で俺の執務室に来い。新しい仕事任せてやるよ。」
アルフが笑いかける。
…目は笑っていないが。
「…っ!そんな!酷いっすよボス!その仕打ちはあんまりです!!」
そうして騒いでいるうちに私たちが座っているテーブルにご飯が運ばれてきた。
私の前に置かれたのは白いミルクのようなものに黄色と緑色のものが混ざったものだった。
初めてそれを見た私は興味津々に覗き込んでいた。
「それはお粥です。ご飯とコケイドリの卵とマツナを煮たものです。とても熱いので火傷しないよう、気をつけてくださいね。」
カインがそう言うと私にスプーンを渡してきた。
…これで食べるのか。
試しにスプーンで少量掬いあげて見るとドロドロとした見た目だが、香りは今迄嗅いだことの無いような匂いがしたのだ。
だが、気持ち悪くなるような匂いではなく、気分が良くなるような匂いだった。
私はそのまま食べようとしたのだがそれを見たアルフは私からスプーンを取り上げフーフー、と息を吹きかけてから私にスプーンを差し出してきた。
「ほら、食ってみろ」
ズイっと出されて、私はパクリと食べた。
なんだろう、凄く心が暖かい…。それにご飯って温かいんだ…。なんだろうこの気持ち…。
思わずアルフ、カイン、レオンの顔を見てしまう。
そんな私を見て3人はとても嬉しそうに微笑んでいた。
「…美味いっすか?」
レオンがニコッと笑いながら聞いてくる。
「…美味しい?」
あぁ、そうか、これが美味しいって言うんだ。
「…うん、おいしい。美味しい、凄く美味しい。」
そう言った私を3人は私がご飯を食べ終わるまでずっと微笑みながら見ていたのだった…。
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