真冬の台風

転校生がやって来た

ずっと、ずっと、ずっっっと、俺は考えていた。
どうしたら、人の記憶に残れるのか。どうしたら、人のためになれるのか。どうしたら、どうしたら、どうしたら、って。

でも、あの日。風磨が転校してきた日。俺は確信してしまった。俺はそうはなれない。って。


「両親の都合で、埼玉から越して来ました。金子風磨です。よろしく！」


別に大声を出したわけでも、何か特別なことを言ったわけでもない。だけど、クラス全員が風磨の目を見た瞬間感じただろう好奇心、期待、それに恐怖。それがごちゃ混ぜになったような複雑な感情。


クラス中が風磨の存在感に圧倒されている中、空気の読めない人代表である、うちのクラスの担任が眠たそうな声で一言。

「じゃあー、金子は1番端の空いてる席な。」

担任がそう言うと風磨はクラスを見渡した後、一直線にある席に歩いて行き

「んー。俺、ここの席座りたい。」

「えっ？」

風磨の言葉に元々その席に座っていた女子が顔を赤らめながら驚いた表情をする。

そりゃあ、金子くんみたいな美形に急に話しかけられたら、ときめきもするよね。


「なっ！お願い！転校生のわがままだと思ってさ！変わってくれない？」

「あ、うん。いいよ！」

こうして、風磨は俺の横の席に座ることになった。
　
もしかして、風磨といれば俺は変われるんじゃないか？俺の中で風磨への興味がグッと上がった。


「よろしくな！俺、風磨！名前は？」

「五十嵐だよ。よろしく」


こんな美形が隣にいたら授業集中できないだろうなぁ

案の定、俺はその日１日授業に集中できず、美形が近くにいたので、無駄に気を張り続けその日は夢も見ずにぐっすりと眠った。



次の日学校に行くと風磨は学校を休んでいて、次の日も、次の日も、風磨は学校にこなかった。

一週間経ってやっと風磨は学校にきた。