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婚約者が浮気したので、婚約破棄させていただきます。

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( まさか、嘘でしょう?)
精霊達が私に見せてくれたのは婚約者のサミエル王子が、女を部屋に入れた所だった。

聖女の私が、眠る以外の時間の全てを捧げて国を守っていると言うのに。

国王の決めた婚約とはいえ、私はサミエル王子が好きだった。

金色の髪に青い瞳、シュッとしててイケメンで見た目は完璧。

その上王子で私の婚約者。文句無いよね。
一生を共にすると思って付き合ってきた。

私は正気を保つのが危うい程になり、王子の部屋へ向かった。

いつもなら部屋の前には護衛がいるのに、誰も居ない。

ノックして部屋に入ると真っ暗で、そこにあった靴に足がスボっと入った。

生暖かくて、私の足は靴の中で泳いだ。

ついたてを進むと2人は裸でベッドの中にいる。

真っ暗な中に彼の体が白く起き上がった。

「 えっ、エカテリーナ、待って、来ないで。」

嗅いだ事の無い、私とは違う女の匂いと生臭い匂いに吐き気がして、私は部屋を出た。

( あんな足の大きな女と。しかし、あれほど臭いという事は、私と遺伝子配列が随分と近いという事か。)

そこーって言われるかもしれないけど、本当にそう思ったのを今でもはっきりと憶えている。

(遠くへ、遠くへ)
そっとドアを閉めて急いで歩く。
私はその時、上の階へ行った。上の階から彼が部屋から出てくるか見ていた。
( 来なければ良かった。知らなければ良かった。)

彼は部屋を出ると下の階へ走って行った。もちろん私を見つける事は出来無い。私は上の階から彼を見ている。
(神様になった気分。否、神様ならあの男の心は私のものだ。)
彼は部屋へ戻った。

( ハヤ、帰るのハヤ。もう探さ無いんかい。気分悪い、吐きそう。)
子供の頃に見た映画みたいだった。
女の人が仕事が終わって急いで彼の部屋に行くと、彼の上で裸の女の子がのけぞってあえいでいた。その男は、
「 こういう事だから、ごめん。」
と、言った。女の人は部屋を出て通りの道端で茶色の物を吐いた。
( 好きな人が浮気したら、あんなに苦しむんだ)と思った。なぜかその事を思い出した。

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