1 / 1
聖女の私は獣人の血を隠したと断罪され婚約破棄されましたので祖国を出ます。
しおりを挟む私はクリスティ・サーシエルと申します。
私には幼い頃から他の人には見えないものが、いろいろと見えていました。
その能力を高く評価して下さったクローリー王国に招かれました。
そしてクローリー王国の魔法学院で聖女としての修行に励みました。
家族や祖国の人達と離れて、たった一人で誰も知らない人の中で暮らすのは不安でした。
それでも聖女になる為の修行や勉強の楽しさが私を励ましてくれました。
何十人もいる魔法学院生の中から、いったい誰が聖女になるのか?
これが皆んなの希望でした。
その時に一番魔力の優れた者が聖女になれるのです。
一度でも判断を誤ったら、それはこの国の滅亡を意味します。
私達は必死で外から魔獣が侵入しないように結界を張り巡らして聖女様のお手伝いをしました。
そして聖女様に認められて次期聖女に選ばれたのは私だった。
そんな私に少しずつ身体の変化が起こりました。
幼い頃は全く気がつかなかったけれども、成長するにつれて耳が尖って来たような気がします。
心配になり実家の両親に尋ねてみると、母親の祖父のおじいちゃんあたりが獣人だったかもしれないらしいと言われているそうです。
見た事も聞いた事もありませんし、私は何にも知りませんでした。
世代が進み人間との混血が進んで、ほとんど人間の外見になっているから誰も気にしてなかったらしいそうです。
しかし、その事で私を陥れて排除しようとたくらんだのが同じ魔法学院のマリアでした。
クローリー王国主催の春のパーティの席で、婚約者のサミエル・クローリーに婚約破棄を突き付けられました。
「 お前は、獣人の血を隠して王家に入り込もうとした罪人だ!婚約は破棄だ!」
青葉をそよぐ風が薫る美しい空が、さきほどまで晴れていたのに暗雲が垂れ込めだした。
稲光が走って後で春雷がとどろいた。
ピカピカ、ドーンという音の後に雨が降り出した。
それは、まるで私の心模様を映す鏡のようでした。
「 獣人の血の事は、今まで知りませんでした。
隠していたわけではありません。」
「 言い訳をするな!
お前が旧友のマリアをイジメていた事もわかってるんだぞー!」
婚約者のサミエル殿下は私の言葉など全く聞く耳を持たずに大勢の人達の前で私を罵倒しました。
サミエル殿下は顔を真っ赤にして、目を吊り上げて、口からツバを飛ばして叫び狂っています。
その姿を見て私はサミエル殿下と結婚するなど、あり得ないと思いました。
と、言うよりも、いつも私の周りにいるご先祖様達や守護霊様達。
いつも私を助けて下さっている天使様達や精霊達みんなが全力で私に教えてくださいました。
「 逃げて、ここから逃げて。
ここにあなたの幸せはない。
早く逃げて。」
私の頭の中に直接、語りかけてきます。
( それに、もしかして
人とは違う私の魔力は、この獣人の血のおかげかもしれないのに。)
これまで聖女として身を粉にして働いて来ました。
自分の自由な時間など無く、命懸けで一生懸命に働いて来た私にむかって、なんて酷い事を言うんだろう。
「 わかりました。私は出て行きます。」
サミエル殿下の後ろでマリアがニヤリと笑ったのを私は見逃してはいません。
でも、それに気がついたのは私だけみたいですけどね。
私は城を出ました。
この国は滅亡するでしょう。
私は精霊達に頼んで国民達の目の前に、全てを知らせてもらいました。
私の後ろには国民達の列が出来ました。
クローリー王国には魔獣が侵入しました。
山は噴火し、水はニガヨモギの味になって、土地は燃えました。
この世の地獄のような光景が広がっています。
私は国民達の列を結界で守り、それぞれが行きたいところまで送り届けました。
私が復讐したなんて言いふらしてる人がいるみたいですけど、私は復讐なんてしていません。
全ては神さまの言う通りですから。
0
お気に入りに追加
8
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!
友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」
婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。
そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。
「君はバカか?」
あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。
ってちょっと待って。
いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!?
⭐︎⭐︎⭐︎
「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」
貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。
あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。
「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」
「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」
と、声を張り上げたのです。
「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」
周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。
「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」
え?
どういうこと?
二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。
彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。
とそんな濡れ衣を着せられたあたし。
漂う黒い陰湿な気配。
そんな黒いもやが見え。
ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。
「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」
あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。
背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。
ほんと、この先どうなっちゃうの?
腹黒聖女の影武者に無理矢理させられましたが、実は聖女様より私の方が聖なる力を持っていました
白桃
恋愛
貧民街で生まれ育った少女ミリアムは、ある日突然女神アルテシアの化身と呼ばれる聖女アナイスの『影武者』に選ばれる。
食うや食わずの生活から、一転して聖女として扱われるようになったミリアムであったが、実は裏では『腹黒聖女』と陰で呼ばれている聖女アナイスの策略が蠢いていた。
そして遂にアナイスの影武者として表舞台に立ったミリアムは、聖女を狙う組織の凄腕暗殺者ジェイドに襲われることになる。
しかし絶体絶命のその時、ミリアムの体からとてつもない聖なる力が放出され、ジェイドは一瞬にしてその闇に染まった心を浄化されてしまい、逆にミリアムに恋心を抱いてしまう。
これは貧民街に生まれ、神に見捨てられたと思い込んでいた少女が、真の聖女に目覚める物語なのです。
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?
水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。
理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。
本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。
無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。
そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。
セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。
幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。
こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。
そして、ある日突然セレナからこう言われた。
「あー、あんた、もうクビにするから」
「え?」
「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」
「いえ、全くわかりませんけど……」
「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」
「いえ、してないんですけど……」
「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」
「……わかりました」
オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。
その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。
「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」
セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。
しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。
(馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる