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あなたが選んだのは私ではありませんでした。婚約破棄された私は、この国を出て行きます。
しおりを挟む「 それで結局、殿下は私に何をおっしゃっりたいのですか?」
忙しい聖女の仕事の途中に城に呼び出しておいて、婚約者であるダン殿下から、どうでもいいような話を聞かされて、私はウンザリしていた。
頭が悪いのか、要領が悪いのかと私が思っている事を悟られないように気を付けたつもりではいたが。
殿下の話はダラダラと長く、
「だから何!」
と、怒鳴りたくなる気持ちを抑えるのに必死だった。
「 だったらハッキリと言ってやるぞ。
エレン・ハート。お前との婚約は破棄だ。つまり聖女の資格も剥奪だ。この国から出て行け!
そして2度と帰って来るな!」
( 私が何も知らないとでも思っているのかしら。)
ダン殿下は国王から決められた私との婚約を嫌がり毎夜毎夜、娼館へ入り浸っていると言う事は、王族の近くにいれば誰でも知っている事だ。
そしてとうとう一人の娼婦を気に入り、城の中に新しい館を建てて、そこに住まわせているらしい。
聖女の私には国中の機密情報が耳に入る。
もちろん知りたく無い事までもだ。
こちらから婚約破棄しても良いくらいだけど、聖女の仕事が楽し過ぎて、ほったらかしにしてたところだった。
せめて、
「好きな人が出来たから別れて下さい。」
くらい言ってくれたら、少しは可愛げがあるんだけどなー。
ダン殿下の口から出てくるのは、有りもしないでっち上げの話ばかり。
どれもこれも私を悪者に仕立て上げる為の小賢しい、嘘ばかりだった。
しかも怒鳴りつけて罵倒するなんて。普通に話が出来無いのは辛い。子供の頃を思い出してしまう。今でもハッキリと覚えている。思い出したくも無い辛い思い出ばかりだ。
ダン殿下って私の両親に似てるな。
私は愛の無い暮らしなんて、
するつもりありませんから。それは、もう子供の頃だけで充分です。
私は両親から愛された記憶が無い。たから、
私にとって一番大切なものは愛なんです。
あれっ、これって私にとっても超ラッキーな話なんじゃないの?
それでも、わざわざ婚約破棄という形にしてくれたのは私に高額の慰謝料を払う為かしら。
そんな訳無いわよね。でも、せっかくだから話を合わせてあげるわ。
「 わかりました。出て行きます。」
私は泣く泣く城を追い出された聖女を演じた。
顔が良いだけの頭の悪い男、しかも女癖も悪いときたら幸せになれる予感すらしないもんね。
口角が上がってしまいそうになるのを必死で抑えて私は城を後にした。
自由を噛み締めながら歩く私の後には、国民の列が続いた。
精霊達に国民に真実を教えるように、伝令を頼んでおいた。
私達の長い行列は結界によって守ってある。隣国へのがれると、祖国には魔獣が侵入していた。
山は噴火し、土地は燃え、水はニガヨモギの味になった。
この世の地獄のような光景だ。
私は復讐なんてしていません。
神様の言う通りですもの。
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