絹のような心

十条沙良

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10 前の夫

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麻里香の夫は家に帰って来なくなった。
たまに帰って来ると麻里香に当たり散らすようになった。

( 仕事がとても大変なんだろう。
今まで学生で遊び放題だった人が、医師になったから激務に耐えているんだろう。)
と、思って麻里香は我慢した。

麻里香の実家は近くだし両親は優しかったから、しょっちゅう行っていた。

家で生まれたばかりの春人( はると)君と2人きりでいると、なんだか訳も無くむなしくなるからだった。

夫の父親は大学の教授で、母親は医者の娘だった。
自慢の息子が学生の身分で結婚することになって、夫の両親は激怒した。

夫の母親は足が少し不自由で、そのために医者と結婚出来なかったと思っているらしい。

医者の娘として育ったのに、大学の教授なんかと結婚して苦労したと夫に話して聞かせて育てたそうだ。
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