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犠牲③※グロ注意
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※若干グロいかもです……。苦手な方はご注意ください。
振り払おうと足に力を入れるが掴む力は尋常ではなく、下手をしたら足首を折られてしまいそうだ。結界によって蔓は弾けても呪いに浸蝕されたファラを弾けなかったのは、存在そのものが生物という理から外れてしまったせい。
これなら神聖力を纏う結界にすれば良かった、と零したフェレスはちらりとファラのお腹に目をやった。フェレスの足を掴んでいない手は、お腹を庇うように触れていた。月を宿した濃い青を細めると自由な足でファラの顔面を踏み潰した。人間とは程遠い獣の咆哮じみた悲鳴が室内に響く。ぐちゃりとした感触に眉を顰め、靴裏にべっとりと粘膜や溶けた皮膚が混ざったヘドロが付着し、ささっと水を出して流した。
フェレスの足を掴んでいた手は離され、言葉では表せない呻き声を発し顔を手で覆っている。
「ああ゛っ、あ゛あ゛あ゛っ、いだい、いだいぃぃぃいいいいい」
痛みでのた打ち回るファラはお腹から決して手を離さない。フェレスの思った通りなら……。
「君の胎には赤子がいるみたいだね」
「!!」
顔面の痛みに苦しむも、フェレスの一言で動きを止めたファラはお腹を見せないように体を丸めた。フェレスの言葉を肯定しているのと同じ。
「死ぬ間際の妖精が放った渾身の呪いは、君だけじゃない、君の胎にいる赤子にも影響しているようだね。何十年も身籠り続けているのに死んでいないのは、胎の中で呪いの浸蝕を受け化け物になっているからさ」
「うるざいっ!! このコはわたしとあべらるどサマのコよ、あべらるどサマはわたしとこのコのタメにもうイチド、アオいバラをサかせるタメにガンバってくれているのよ!」
多数の妖精の命を奪ってまでアベラルドが成したい事は何か、セラティーナやプラティーヌ家の料理長、更にジグルドの話を聞き、脳内に纏めてフェレスはある一つの答えを出していた。
「グリージョ公爵が執拗にセラティーナと己の息子の婚約に拘ったのはどうしてか。今やっと解った気がするよ」
結界に神聖力を付加し、一歩一歩ファラに近付いてく。フェレスに触れようと手を伸ばしたら、さっきと違って強い力に弾かれたファラはお腹を守りながら後退る。
「最初はセラティーナの命を使って君を蘇らせるか、或いはセラティーナの肉体から彼女の魂を追い出し君の魂を新たに宿して肉体を奪うのか、どちらかと考えていた。だがそうじゃないな」
「クるな、クるな」
「君自身は、青い薔薇の力で呪いを完全に消して元通りになれるだろうね。けれど赤子はそうはいかない。胎の中で既に化け物になった赤子が助かる方法はない」
後退りながら手で追い払う動きをして見せてもフェレスの足は止まらない。軈て、壁に当たりこれ以上下がれなくなったファラは体を丸めた。
「だが青い薔薇なら、不可能を可能にする。呪いによって汚れた赤子の魂とセラティーナの魂を融合させ、元通りになった君の胎に入れて再び妊娠させて産ませる気なのではないかな?」
足を止めたフェレスの表情から一切の感情が削げ落ちた。左掌を上に向け、中指の第一関節を曲げたら、丸くなっていたファラは立ち上がった。抵抗しているのだろうがファラの体は全く動かない。大きく膨らんでいるお腹にフェレスの左人差し指が向けられる。
青の目から黒い液体が零れる。恐らく涙であるが呪いによって涙さえ色を変えてしまった。
「生まれ落ちても化け物として駆除される。恨むなら、他人の命を犠牲にしてでも己の願いを押し通そうとした母親を恨むといい」
指先に込められた濃い青の魔力が眩い光を放ち、絶叫を上げてフェレスに赤子の命乞いをするファラの声が響く。
魔力が放たれる、その刹那、膨らんでいた胎が縦に裂かれ、内側から多数の小さな黒い手が出現した。激痛の絶叫を上げるファラの胎から現れた小さな黒い手は、神聖力を纏った結界を突き破りフェレスの肉体を刺した。それも多数。刺されている箇所が次々血に染まり、足下に大きな血溜まりを広げていった。
突き破られた結界が砕けた途端、ずっとフェレスを狙って結界を攻撃していた蔓が素早くフェレスの体を拘束し、強大な魔力を無遠慮に吸い出した。生命と同等の魔力を強制的に吸われる苦痛は、犠牲となった妖精の死に顔を見て分かっていた。苦しみ、絶叫を上げたい気持ちが嫌という程理解してやれる。
体を刺した黒い手もフェレスから魔力を奪う。どいつもこいつも妖精の魔力を欲する。
「ボクモホシイ゛っ マリョクホジイ」
裂いた胎の奥には、多数の小さな黒い手と同じ程度の目があり、欲望を孕ませた視線をフェレスやっていた。
「アアッ、アアアッ、イタい、イダい」とはファラの声。痛いのはこっちだと吐き捨てたいのをフェレスは堪え、容赦なく魔力を奪う蔓と多数の黒い手を握った。
「もっと知能があり、深慮を得た相手だったら、望み通りの展開になっただろうね」
フェレスの魔力を吸い続ける影響により、室内を覆う蔓が発光し始め、ファラや裂いた胎内にいる異形の赤子の姿が鮮明になった。魔力を奪われ続けるフェレスにも異変が起き始めた。
額から頬にかけて罅が走り、血が流れる。徐々に皮膚に皺が浮かび、若々しさが消えていく。
「キラキラオメメ、チョウダーイ!!」
魔力だけでは飽き足らず、月を宿した濃い青の瞳をも欲し、生々しい音を立て両目は抉り取られた。常人であれば失神する激痛にも関わらずフェレスは悲鳴を上げないどころか、余裕の笑みを崩さない。
皺皺になり、痩せて、血の気を失っていく体。
美しい銀髪もただの白髪へと変わり艶を失くした。
好き放題されているフェレスは紡いだ。
「ありがとう。欲深い愚か者達。おかげでセラとの約束を果たせる」
直後、室内を激しい揺れが襲った。
振り払おうと足に力を入れるが掴む力は尋常ではなく、下手をしたら足首を折られてしまいそうだ。結界によって蔓は弾けても呪いに浸蝕されたファラを弾けなかったのは、存在そのものが生物という理から外れてしまったせい。
これなら神聖力を纏う結界にすれば良かった、と零したフェレスはちらりとファラのお腹に目をやった。フェレスの足を掴んでいない手は、お腹を庇うように触れていた。月を宿した濃い青を細めると自由な足でファラの顔面を踏み潰した。人間とは程遠い獣の咆哮じみた悲鳴が室内に響く。ぐちゃりとした感触に眉を顰め、靴裏にべっとりと粘膜や溶けた皮膚が混ざったヘドロが付着し、ささっと水を出して流した。
フェレスの足を掴んでいた手は離され、言葉では表せない呻き声を発し顔を手で覆っている。
「ああ゛っ、あ゛あ゛あ゛っ、いだい、いだいぃぃぃいいいいい」
痛みでのた打ち回るファラはお腹から決して手を離さない。フェレスの思った通りなら……。
「君の胎には赤子がいるみたいだね」
「!!」
顔面の痛みに苦しむも、フェレスの一言で動きを止めたファラはお腹を見せないように体を丸めた。フェレスの言葉を肯定しているのと同じ。
「死ぬ間際の妖精が放った渾身の呪いは、君だけじゃない、君の胎にいる赤子にも影響しているようだね。何十年も身籠り続けているのに死んでいないのは、胎の中で呪いの浸蝕を受け化け物になっているからさ」
「うるざいっ!! このコはわたしとあべらるどサマのコよ、あべらるどサマはわたしとこのコのタメにもうイチド、アオいバラをサかせるタメにガンバってくれているのよ!」
多数の妖精の命を奪ってまでアベラルドが成したい事は何か、セラティーナやプラティーヌ家の料理長、更にジグルドの話を聞き、脳内に纏めてフェレスはある一つの答えを出していた。
「グリージョ公爵が執拗にセラティーナと己の息子の婚約に拘ったのはどうしてか。今やっと解った気がするよ」
結界に神聖力を付加し、一歩一歩ファラに近付いてく。フェレスに触れようと手を伸ばしたら、さっきと違って強い力に弾かれたファラはお腹を守りながら後退る。
「最初はセラティーナの命を使って君を蘇らせるか、或いはセラティーナの肉体から彼女の魂を追い出し君の魂を新たに宿して肉体を奪うのか、どちらかと考えていた。だがそうじゃないな」
「クるな、クるな」
「君自身は、青い薔薇の力で呪いを完全に消して元通りになれるだろうね。けれど赤子はそうはいかない。胎の中で既に化け物になった赤子が助かる方法はない」
後退りながら手で追い払う動きをして見せてもフェレスの足は止まらない。軈て、壁に当たりこれ以上下がれなくなったファラは体を丸めた。
「だが青い薔薇なら、不可能を可能にする。呪いによって汚れた赤子の魂とセラティーナの魂を融合させ、元通りになった君の胎に入れて再び妊娠させて産ませる気なのではないかな?」
足を止めたフェレスの表情から一切の感情が削げ落ちた。左掌を上に向け、中指の第一関節を曲げたら、丸くなっていたファラは立ち上がった。抵抗しているのだろうがファラの体は全く動かない。大きく膨らんでいるお腹にフェレスの左人差し指が向けられる。
青の目から黒い液体が零れる。恐らく涙であるが呪いによって涙さえ色を変えてしまった。
「生まれ落ちても化け物として駆除される。恨むなら、他人の命を犠牲にしてでも己の願いを押し通そうとした母親を恨むといい」
指先に込められた濃い青の魔力が眩い光を放ち、絶叫を上げてフェレスに赤子の命乞いをするファラの声が響く。
魔力が放たれる、その刹那、膨らんでいた胎が縦に裂かれ、内側から多数の小さな黒い手が出現した。激痛の絶叫を上げるファラの胎から現れた小さな黒い手は、神聖力を纏った結界を突き破りフェレスの肉体を刺した。それも多数。刺されている箇所が次々血に染まり、足下に大きな血溜まりを広げていった。
突き破られた結界が砕けた途端、ずっとフェレスを狙って結界を攻撃していた蔓が素早くフェレスの体を拘束し、強大な魔力を無遠慮に吸い出した。生命と同等の魔力を強制的に吸われる苦痛は、犠牲となった妖精の死に顔を見て分かっていた。苦しみ、絶叫を上げたい気持ちが嫌という程理解してやれる。
体を刺した黒い手もフェレスから魔力を奪う。どいつもこいつも妖精の魔力を欲する。
「ボクモホシイ゛っ マリョクホジイ」
裂いた胎の奥には、多数の小さな黒い手と同じ程度の目があり、欲望を孕ませた視線をフェレスやっていた。
「アアッ、アアアッ、イタい、イダい」とはファラの声。痛いのはこっちだと吐き捨てたいのをフェレスは堪え、容赦なく魔力を奪う蔓と多数の黒い手を握った。
「もっと知能があり、深慮を得た相手だったら、望み通りの展開になっただろうね」
フェレスの魔力を吸い続ける影響により、室内を覆う蔓が発光し始め、ファラや裂いた胎内にいる異形の赤子の姿が鮮明になった。魔力を奪われ続けるフェレスにも異変が起き始めた。
額から頬にかけて罅が走り、血が流れる。徐々に皮膚に皺が浮かび、若々しさが消えていく。
「キラキラオメメ、チョウダーイ!!」
魔力だけでは飽き足らず、月を宿した濃い青の瞳をも欲し、生々しい音を立て両目は抉り取られた。常人であれば失神する激痛にも関わらずフェレスは悲鳴を上げないどころか、余裕の笑みを崩さない。
皺皺になり、痩せて、血の気を失っていく体。
美しい銀髪もただの白髪へと変わり艶を失くした。
好き放題されているフェレスは紡いだ。
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