どうしてこうなった

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始まりがこれ

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 部屋中植物で溢れ返った小さな小屋にて。草の天蓋付きベッドで青白い顔をして眠る女性を痛ましげに見つめる美女がいた。
 眩い黄金の波打つ髪、長い睫毛に縁取られた黄金の瞳。目も鼻も唇も、どれも完璧な形で顔にある人外級の美しさを持つ女性をメデイア。
 世界でも数人しかいない大魔女。魔女は長い時を生き、メデイアで千年以上は生きている。

「わしも……歳には勝てなんだか……」
「アーラス……」

 ベッドで眠る女性が弱弱しく紡ぐ。嘗ての女性をよく知るメデイアは回避出来そうにない死の運命が間近にあると改めて認識した。
 女性はアーラス。メデイアと同じく大魔女と呼ばれ、歳もメデイアと同じくらいだ。ここ数か月、急に体調を崩し、魔力量も衰え外に出歩く回数が極端に減ってしまった。アーラスを気にしたメデイアが家に訪ねて来た時はもう遅かった。

 不老だろうがいずれは死ぬ。魔女だって同じ。

「せめて楽に死にたいもんだ」

 同じくらいの力に、年齢もほぼ同じ。
 アーラスと過ごしてきた時間は遥かに長い。自分の半身のような親しみを持っていた。
 アーラスの寿命は変えられない。

 なら、とメデイアは覚悟を決めた。
 そっと古代呪文を素早く詠唱。アーラスが眠るベッド下に複雑極まる魔法陣を展開。
 アーラスともう一度会いたい、親しい人の死を体験したことのないメデイアは親友を失うくらいならと、人間だと禁術、メデイアならどうという事はない魔法を発動した。
 次アーラスと会う時、彼女は人間としてアーラスだった時の記憶と力を持って転生している。

「また会おう――アーラス」

 それまでは、ゆっくりと休んでくれ。
 永遠の眠りに就くかと思いきや、死人のような顔で寝ていたアーラスが突然立ち上がった。
「は?」と間抜け顔を晒すメデイアにしてやったりとにんまりと笑ったアーラスは昔と同じ健康的な姿になっていた。

「わしの数か月に及ぶドッキリが成功したようじゃの!」
「ど……!? あ……!」
「あ」

 驚き過ぎてほんの刹那硬直してしまったメデイアがしまったと気付いた時には既に遅く。
 うっかり転生の魔法陣をアーラスから自分の足元に展開させてしまった。しかも既に詠唱は終え、準備はばっちり。
 目を覆う眩い光はメデイアを包み――軈て消え去った。

「い、いかん!」

 慌ててベッドから降りたアーラスは直ちに外へ出て全世界に向けて使い魔を放った。

「渾身のドッキリが成功してしもうて魔法の発動を止めるのを忘れてしまった……!」


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