幸せなのでお構いなく!

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不可解②

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「来ているのはロリーナ様だけ?」とクリスタベル殿下。
「お姉様もいます。今はロードナイト殿下と一緒です」
「そうなの。ではグレン、私は行きますわ」


 薔薇の花束を両手に持ったまま、複数の侍女を引き連れクリスタベル殿下は去った。残されたのは私とグレン様のみ。
 一緒にいても会話が殆どないので、二人きりの空間は気まずい。何より、お父様やシュタイン公爵は私達の婚約解消について話し合っているので尚更。


「登城理由を聞いているか?」


 この口振りからするにグレン様は事情を知らされていない?
 正直に話そうか迷うも……私を嫌っているグレン様は、婚約解消について話し合っていると知ったら喜ぶに違いない。
 さっさと彼を私から解放してあげようと私達の婚約を解消に向けての話し合いだと話した。


「は…………?」
「?」


 あれ? 思っていた反応と違う……。
 てっきり、喜んでくれるのだと思っていたグレン様から表情が抜け落ち、呆然と私を見る。
 もう一度言うと急に慌てだした。


「な、何故だ、どうして!?」
「私の台詞ですが!?」


 どれも今の私が口にしたい。


「どうして婚約解消などと……!」
「グレン様……本気で仰っているのですか? グレン様は私が嫌いでクリスタベル殿下が好きなのでしょう?」
「何の話だ!?」
「こっちが何の話ですか!?」


 喜ばれるどころか、慌て怒り出したグレン様についていけない。


「いつ俺がお前を嫌いだと言った!?」
「心当たりがないと本気で言っていますか!?」
「っ」


 心当たりはあるみたい……。なら尚更、自分の言葉がおかしいと気付いてほしい。


「私には冷たい態度しか取らないのに、他人……特に王女殿下には常に愛想をよくして、私と一緒だと常に嫌そうに目も合わせないグレン様にいい加減疲れました」
「ロリーナっ」
「大体、今までの態度の何処を見てグレン様が私を嫌いじゃないと言えるのです。好意的に見ていたと証言して下さる方がいたら連れて来てください」


 周囲からも婚約者に嫌われた令嬢だと嘲笑われていた。私が出自不明な踊り子の子だから。母の出自はカラー侯爵家ととある家のみが知る。周囲に言ったところで信じる者ははたしてどの程度いるか。
 私が本当の事を突き付けるとグレン様は言葉を詰まらせた。弁解しようにも事実だから他の言葉がない。


「お父様はシュタイン公爵家と繋がりがなくても我が家は困らないと言ってくれました。グレン様が不利にならないようにと頼んでいますのでお気になさらず」
「婚約解消なんて絶対認めない!」
「認めないと言われても……」
「い……今までの態度が悪かったのは認める。す、すまかった。お願いだ、やり直しの機会をくれないか」
「……無理です」


 下に見ていた私に下手で出る程カラー侯爵家との繋がりが欲しいのだろうか? 魔法技術が絡んでいるからか。我が家が困らなくてもシュタイン公爵家にとっては痛手となるとグレン様の態度も頷ける。私が断ると傷付いた顔をなさるのは何故。私が嫌いなのでしょう?


「グレン様とこの先、一緒にいる未来を想像したら疲れ果てた自分しか浮かびませんでした。グレン様だって本当はクリスタベル殿下が好きなのでしょう?」
「王妃殿下と母が友人なのもあってクリスタとは幼少期から交流があるだけだ。王子達だって同じだ。クリスタに特別な気持ちは持っていない」
「だとしても、お断りです」
「ロリーナっ!」


 殊勝なのはどうせ今だけ……時が過ぎたら元に戻る。


「俺は絶対に認めない。父上達に話をつけに行く」
「な、ちょ、ちょっと」


 止める間もなくグレン様は行ってしまわれた。
 そうまでしてカラー侯爵家と繋がりを持ちたいの……?
 別の方法を探すにしても、きっと面倒じゃないから私と婚約したいままでいたいのだ。



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