ラヴィニアは逃げられない

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14話

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 昼間のプリムローズ突撃のせいか、夜はいつになく不機嫌だったメルの気も漸く収まってくれたみたいで。互いが繋がったまま、ついさっき達したメルは上下する豊満な膨らみに顔を埋めた。ねちっこく、厭らしく責められ、ずっと喘いでばかりだったラヴィニアは動く気配のないメルに安堵していた。今日はこれで終わり。終わってほしい。メルが達したのは三度。その間ラヴィニアが達した回数は数えられない。


「め、る」


 疲れ果てた声は掠れており、気怠いながらも両腕をメルの頭に回して汗で濡れた髪を撫でた。水に濡れると多少は真っ直ぐになるも乾いたらまた癖が出てくるんと跳ねる。
 お腹が気のせいか重い。一度中に出されてからずっと挿入されたまま。三度も中に出されるとお腹が重く感じた。
 鍛えているメルは体力があっても、人並程度の体力しかないラヴィニアは一回で終わってほしいと内心思うも。


「あ、だめっ」


 心臓の辺りに刻まれたメルの魔法のせいで終わってくれない。顔を上げて触れようとするから胸に顔を押し付けた。


「ラヴィニア手を退けて」
「んうっ」


 メルが喋ると胸に熱い吐息が掛かって何度も達して敏感になった体は反応してしまう。まだ繋がったままのメル自身を締め付けてしまい、徐々に硬さと大きさを取り戻していく。
 離れてもらおうと手を退かしたら、固くなったままの赤い飾りを舌で触れられ、もう片方も指で弄りだした。


「だ、めえ! も、休もうよ」
「ラヴィニアが誘うからだろう」
「誘ってなんか、ああっ!」
「ほら。誘ってる」


 歯で甘噛みされ、指で強く弾かれて繋がっている部分から愛液が溢れてメル自身を強く締め付けた。既に大きすぎるぐらい膨れたソレは再びラヴィニアの中で動き出した。口で嫌と言っても、メル自身を締め付け離さないのはラヴィニア。
 零れる嬌声は既に快楽に染まっており、欲に濡れた空色の瞳に見つめられると逃げたい意思は消えていく。


「メル……メル、好き、好きよっ」
「っ、本当に、可愛いな、ラヴィニアっ」


 欲に濡れ、昏くなった空色の瞳に変わるも、快楽に溺れているラヴィニアは気付けなかった。









 四度目でやっとラヴィニアから自身を抜いたメルは栓がなくなったことで溢れる精をラヴィニアの中へ戻すが戻しても入りきらない場合はそのままにし、気絶してしまった細い身体を軽々と抱き上げ浴室へ向かった。
 事前に侍女に準備させていたが予定より遅くなった為、微温湯になっていた。これくらいで丁度良いかと独り言ち、ラヴィニアを抱いたまま湯船に浸かった。
 ラヴィニアの後ろに座って長いオレンジの髪を頭上に纏め、溺れないようしっかりと抱き締める。
 最初に抱いた時もこうやってラヴィニアを湯船に浸からせていた。それ以降は意識がある内に止めていたから、一緒に入って会話を楽しんだ。

 薄いお腹に手を当てる。まだ十日しか経っていないから、妊娠してるかどうか解る筈もなく。早く孕ませてシルバース家に帰りたいが子が出来るのはまだまだ先でもいいと思う自分もいる。


「その前に問題を片付けないとな」


 プリムローズといい、キングレイ家といい、皇太子といい。
 どうしてラヴィニアの周りには厄介な連中しかいないのか。
 厄介極まるのはプリムローズと皇太子だ。自分こそが愛されていると自負するプリムローズと妹思いなお兄様でいたい皇太子のコンビは両親も手を焼いている。
 実兄である皇帝に何度も抗議してくれるも、息子可愛さに皇帝はこの件に関して役に立たない。それどころか、密かにメルを呼び出しプリムローズと婚約しないかとまで提案してくる始末。母には報告済で烈火の如く怒り狂っていた。
 メルと婚約解消となれば、ラヴィニアは益々キングレイ家での立場を悪くする。どんな理由があってもラヴィニアを手放す気は更々ない。


「はあ……」


 その後に言われた台詞も覚えている。
 ラヴィニアの婚約者に皇太子をと言われた瞬間、伯父に当たるといえど皇帝に初めて殺意を抱いた。
 未だに皇太子妃候補すらいない理由は知らないし、知りたくもないが絶対に皇太子の婚約者等にしない。


「ん……」


 腕の中で身動ぎしたラヴィニアの手がメルの腕を触った。メル、と呼ばれるだけで堪らなく愛しい。
 ラヴィニアに別れを突き付けられた挙句拒絶された一月は死んだ方がマシの地獄だったがこうやって無理矢理にでも連れ戻した。
 プリムローズとのキスの誤解が解けて心底ホッとした。
 プリムローズに優しくしていたから好きだと思われていたのは心外ではあるが、母に指摘された通り自分が悪かったのだと項垂れる。

 嫌いな相手の前で冷たい態度や声、不機嫌さを出したらラヴィニアに怖がられてしまうと予想すればするだけ何百回も優しくと心の中で念じ続け徹底的に愛想よく振る舞った。
 ラヴィニアは冷たい態度や怒気を含んだ声が普通よりも苦手である。侯爵や後妻が常にラヴィニアに向けている感情で、他人の優しさは屋敷で働く者達によって与えられてきた。


「ラヴィニア……愛している。ずっと、俺の側にいて」


 逃げられるのも拒絶されるのも御免だ。

 ラヴィニアの頭にキスを落とし、起こさないよう慎重に体を洗い始めた。







 ●〇●〇●〇


 ラヴィニアが次に目を覚ますと外はカーテンの隙間から陽光が漏れており、既に朝だと主張していた。
 体には夜着を着せられ、体の怠さや喉の痛み、口内の渇きはないものの。逃がさないと抱き締めてラヴィニアの足に自分の足を絡ませる等の徹底ぶり。
 先に起きてもメルが起きないと動けない。無理に動くと起きてくれるが非常に眠そうな顔をするから、メルが起きるまで待つのが朝の始まり。

 宮の暗号は即座に変え、シルバース夫妻にのみ連絡したとメルは言うがプリムローズの諦めの悪さは二人ともよく知っている。皇太子まで絡んでくると厄介過ぎる。相手が相手なだけに手荒な真似だって出来ない。
 会う度に凍える瞳でラヴィニアを睨み、口を開けばメルと婚約解消をしろ、メルから離れろと言われ続けた。
 プリムローズの嘘泣きに踊らされラヴィニアに凄まじい殺気を放った時は意識を失いかけた。
 怖くて会いたくない相手だが、皇帝主催のパーティーは必ず出席するのが義務。会場へ行けば挨拶は免れない。

 メルが側にいてくれなかったら、いつか実力行使に出られて強制的にメルと離されていただろう。


「……皇太子殿下に、会いたくない」
「会う必要はない」
「!」


 寝ているから発したのにいつの間にかメルは起きていて。眠そうにしながらもラヴィニアの額に口付け更に引き寄せた。


「怖い夢でも見た?」
「ううん……昨日のせい、かな」
「安心して。父上達には絶対に漏らさないよう言ってある。皇帝にも今回から暗号を教えないことにした」
「陛下にも? いいの?」
「母上や父上が知っていれば良いから。
 起きて食事でもする?」
「まだ、このままでいたい」


 お腹は空いているがメルと抱き合ってメルの温もりを感じていたいラヴィニアは自分から抱き付きに行った。力強く抱き付くとお返しとメルも強く抱き締めてくれた。


「朝食を食べたくなったら言って」
「うん。メルもだよ」
「俺はいい。ラヴィニアに合わせる」
「甘やかさないで」
「甘やかしたいんだ」


 ゆっくりと背中を撫でられ心の底から安心してしまう。
 メルの腕の中は自分だけのものだ。他の誰かに譲ろうなどと考えは絶対に二度と起こさない。


「朝食を食べたら、昨日の約束通り街へ買い物に行こう」
「街にいる間、プリムローズ様や皇太子殿下が来たりしたら」
「俺達がいなくても暗号を知っていないと入れない。安心して」
「分かったよ」


 顔を合わせると微笑み合い、触れるだけのキスをした。


 ――まさか街で皇太子と鉢合わせする等と、この時は知らない二人であった。








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