15 / 22
連載―私はお父様とパパ様がいれば幸せです―
メアリーとミカエリス2
しおりを挟む夜会やパーティーといった公式の場に参加する際は、必ず気合の入った青を基調としたドレスで臨む。何度か可愛らしいピンク色を基調としたドレスと、どちらが良いと選ばされたがメアリーは青を選んだ。祖父母へ会いに行く時はピンク色のドレスを着ている。着る場面を考えているだけでそのドレスが嫌なのじゃない。デザインはさすがお父様やパパ様が選んだだけはあり、メアリーによく似合っていた。
リボンやフリルが些か多いがドレスの可愛らしさをより強調するので可愛い物好きなメアリーは大好きだ。
城には、メアリーをシルバニアを操る道具としか思っていない皇后もその皇后お付きの侍女達も、もういない。
皇太子妃教育の為、登城していた最初の頃は苦痛だった。
まず、初めて皇后と会った時温くなった紅茶を頭から掛けられた。
屋敷で蝶よ花よと大切に大切に育てられたメアリーは、思いもしなかった仕打ちに固まった。皇后達は美しさと程遠い笑いを上げた。侍女の中には涙目になっていた者もいた。
『シルバニア家のお姫様は、相手に粗相を受けた時の対処法も知らないのかしら?』
固まっていただけのメアリーにとっとと動けと暗に言ったのだ。人の悪意を受けた事がないメアリーは、考えられる精一杯の対処をするも彼女達は、メアリーが何かをする度に大袈裟に反応して見せ嘲笑った。
皇太子妃教育とは名ばかりの、皇后とその侍女達による虐めは初日だけで終わる筈がなく。アタナシウスとティミトリスがメアリーの異変に気付き、皇帝アーレントの耳に入るまで続けられた。月日としては半月。父親達は半月も気付けなかった事を痛く後悔しており、皇后達の生家や周囲を脅しまくった。
侍女の中には恋人に振られた者や家を勘当された者がおり、残りも大体家族からは腫物扱いをされ職を辞した者が多かった。
「久しぶりね、お城に来るのは」
皇太子妃宮がどんなのかを見に来たメアリーとティミトリス。気合を入れる必要性もなく、ピンク色の可愛いドレスを着用したメアリーと春の花が咲き誇る庭園は相性ピッタリで。花畑に花の妖精が舞い込んだ風景を彷彿とさせた。
ティミトリスは途中アーレントに呼ばれ、メアリー一人で皇太子妃宮を目指していたものの、途中目にした庭園が気になって寄り道をした。多少は大丈夫。ティミトリスも来るのに時間が掛かりそう。
此処にいると思い出すのは、月一の皇太子とのお茶の時間。メアリーが城へ赴き、皇太子が待つサロンへ行くのだ。時たま、外で行われる事もあった。
が、その時は大体皇后がいた。何回かするといなくなったものの、いた頃は苦痛が二重に襲い掛かって紅茶もお菓子も味がしなかった。
「よく思い出すと殿下って本当に私が嫌いだったのね……」
皇后に口撃され俯いて喋れない自分を助けもしなかった。皇后と一緒になって責めてはこなかったが、終始メアリーを睨んでいた。それをメアリーを嫌っていると取った皇后の口調はよりキツイものとなっていった。
ミカエリスとメアリーの婚約を最も願ったのは皇后なのに、何が気に食わなかったのか。友人の娘マーガレットを皇太子妃にしたかったのなら、メアリーではなくマーガレットを選べばよかったものを。と、普通なら考えるだろうがシルバニアの力を思い通りにしたかった皇后はメアリーそのものを否定し続ける事で自信を無くさせ、弱り切ったところへ飴を与えメアリーを傀儡にしようと企んだのだ。
酷い仕打ちがアーレントの耳に入るのに時間は掛からなかった。数回目で皇后はお茶の場に来なくなった。ミカエリスだけは変わらない態度だった。皇后がいてもいなくても口数は少なく、常にメアリーを睨んでいた。
一度、ミカエリスの態度があんまりなので話を大袈裟にしないティミトリスにお茶の時間を月一から二か月に一回がいいと申し出た。半年に一回でいいと言われ、月一のお茶の日になって登城しなかったメアリーの元へミカエリスが訪れた。
何をしに来たかと思えば、メアリーが来なかったからだと睨んだまま言われた。
「……ちょっとだけ、期待した私が馬鹿だったのかな」
彼が訪れたのは一回きり。自分の思い通りにならないと動くのだと悟ると虚しさを覚えた。
小さな花弁に触れ、悲しげに笑んだメアリーは次の婚約(家と父親コンビを考えると無いに等しいが)があったら、ミカエリスとの二の舞にならないよう気を付けようと決める。
ミカエリスの態度はきっと自分にも理由があったのだ。マーガレットを見て思うのは、積極性が無かったから? と過った。
「好きになってもらえるように、私も努力しなきゃ!」
次の婚約が本当にあるのならの話。
──一人意気込んだメアリーは気付かない。独り言をマーガレットの侍女が聞き、即マーガレットへ報告をしに走ったのを。
124
お気に入りに追加
4,165
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
【完結】私よりも、病気(睡眠不足)になった幼馴染のことを大事にしている旦那が、嘘をついてまで居候させたいと言い出してきた件
よどら文鳥
恋愛
※あらすじにややネタバレ含みます
「ジューリア。そろそろ我が家にも執事が必要だと思うんだが」
旦那のダルムはそのように言っているが、本当の目的は執事を雇いたいわけではなかった。
彼の幼馴染のフェンフェンを家に招き入れたかっただけだったのだ。
しかし、ダルムのズル賢い喋りによって、『幼馴染は病気にかかってしまい助けてあげたい』という意味で捉えてしまう。
フェンフェンが家にやってきた時は確かに顔色が悪くてすぐにでも倒れそうな状態だった。
だが、彼女がこのような状況になってしまっていたのは理由があって……。
私は全てを知ったので、ダメな旦那とついに離婚をしたいと思うようになってしまった。
さて……誰に相談したら良いだろうか。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる