婚約者から愛妾になりました

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捕らわれているのは

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 最初に抱いた時から自制心の箍が外れた覚えはあった。2度目に抱いて、3度目に抱いて、気付くと永遠にメリルを抱いていたくなった。
 言葉では自分の所有物だと言わせるくせに、メリルの所有物になっているのは紛れもない――フィロン自身。
 メリルにキスをする度、抱く度に見えない鎖で縛られメリルから離れられなくなった。快楽に溺れた潤んだ青紫の瞳が自分を視界に入れていると知って初めてフィロンは安堵する。メリルも自分に捕らわれ、逃げられなくなっていると。


「あ、ああっ……」


 父の呼び出しで部屋を出ていたフィロンが戻った時、呼んでもいない弟ネーヴェがいた。
 昔からメリルは、ネーヴェにだけは素直に感情を見せ人見知りを発生させなかった。フィロンになると上手に喋れず、顔を真っ赤にして固くなっているのに。意味が分からず無性に苛ついた。現在は非常にマシになったがそれでもネーヴェに対する嫉妬は永遠に消えない。
 戻ったフィロンを目にするとはにかんだ笑みを見せたメリル。早々にネーヴェを部屋から追い出すと、何故か落ち込み始めたメリルに近付きキスをした。

 そこからは流れに身を任せメリルを抱いた。何度味わっても飽きない身体を夢中になって貪った。メリルの中はとても熱く、柔らかくフィロン自身を包むくせに貪欲に快楽を得ようと締め付ける。癖になる締め付けとメリルの喘ぐ声がフィロンの性欲を刺激し、1度達しても2度3度と求め続けた。

 今日は3度、精を放出して漸く落ち着いた。ずっと入れたままの自身を抜くと夥しい量の白濁が溢れた。遺伝子をコントロールしていなければすぐに孕んでしまっていただろう。
 子供は要らない。いたら、それだけでメリルとの時間を失う。また、子供相手に嫉妬を起こさないとも限らない。
 ネーヴェが聞いたら呆れるだろう。我が子に嫉妬する父親がいるか、と。現になりそうだから子供は作りたくない。

 ふと、白濁が溢れ出る中に右の人差し指を入れた。


「あああ……っ!」


 中は強く締まり、悲鳴じみた声を上げたメリルは涙を流してフィロンを見た。無性に苛めたくなる顔だ。


「も、や、嫌ですっ、……あああ!」
「うるさい。愛妾なら、おれを最後まで満足させろ」
「ああ……あぁ……、だめ……ぇ、フィロン様ぁ……!」


 嫌だと言うくせに、中は貪欲にフィロンの指を締め付け、白濁に混じって愛液もまた溢れてきた。白濁を擦り付けるようにして弄る。段々声が高くなり始めるのはメリルがイきそうな証拠。中指も増やし、くの字に曲げた。ざらざらとした場所をとんとんと叩いた。面白いくらいメリルの腰が跳ねた。


「あああだめえ、それ、だめえええぇ……!」
「身体だけじゃなく、口も正直になったらどうだ?」
「あっ、あ、ああ! あん、ああああぁ!」


 泣き叫ぶように甘い声を上げるメリルの腰が一際大きく跳ねた。同時に大量の愛液を吹き出した。イレーネの一件から、元から敏感な身体の感度を更に上げたせいで出してしまうようになった。
 3度精を放出し、萎えていたフィロンのそれもメリルの淫らな声と姿のお陰か、凶暴な大きさと固さを取り戻していた。
 絶頂し、ぴくぴく震えるメリルの脚を開き、中心に自身を宛がった。


「……ぃや……いやあ……フィロン様あ……もう、できません……」


 弱く頭を振るメリルの姿は……もうフィロンの身勝手な欲望を刺激するだけの餌。
 触れるだけのキスを額に落とした。


「あ、あああああぁ~!!」
「ん……っ、はあ……」


 溢れる白濁と愛液のお陰で問題なく挿入した。根元まで入るように奥へ奥へと目指した。入れただけで絶頂し、キツく締め付けてくるメリルの中はフィロンの精を全て搾り取ろうと押し寄せるようだ。
 メリルの首筋に顔を埋めると背中に腕が回った。
 ゆっくりと動き始めた。


「ずっと……このまま……お前とこうしていた……」
「あ……ああっ……あ、あん……」
「メリル……俺の、俺だけの……メリル」
「はひ……わた、しは……フィロン様の、もの……フィロン様だけの……ものです……」


 言葉にしなくても、繋がっているだけで十分伝わるのにまだ不安を抱いている。
 縛り付けて、閉じ込めているのは自分なのに……メリルという檻に捕らわれているのはフィロン自身。
 王太子の地位を捨て、メリルを連れ誰もいない辺境の地へ行きたい。何だったら、人間界だっていい。
 自分達を誰も知らない世界へ行って、ずっと2人だけで生きていたい。


「メリル……」
「んん……」


 顔を上げ口付けをした。フィロンにとってメリルとのキスは幸福の時間。たった数秒の触れるだけのキスだけでも代用がない幸福に浸れる。
 何度も口付けをし、耳元に唇を寄せた。


「メリル……よく聞け」
「あ、あああう、耳で喋っちゃ……だめえ……」


 入れられながら耳を舐められるのは勿論、囁かれるのも弱いメリルはきゅうきゅうフィロン自身を締め付ける。強い締め付けに表情を歪ませながらもフィロンは告げた。


「……愛している」


 愛、なんて言葉で済ませられるものじゃない。フィロンのメリルに対する尋常じゃない感情は。
 今日言葉にしたのは大した意味はない。

 ……けれど、告げて良かったと思う日が来るとは思わなかった。
 一瞬ポカンとなったかと思いきや、見たことがないくらい顔を真っ赤にしたメリル。何も発してほしくないフィロンは律動を激しくしたのであった。


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