思い込み、勘違いも、程々に。

文字の大きさ
上 下
78 / 103

親族会4

しおりを挟む


「俺がフィオーレ嬢といて君に問題でも起きるのか?」
「あ……い、いえ……これは……」
「リグレットがいないのを幸いと1番に想っているのは俺やアウムルだろう。君にとって何が問題なのか教えてくれないか」


 リアン様の後姿しか今は見えなくても、普段眠たげな青の瞳がキサラ様に鋭さを帯びた青に変わってるのは雰囲気で察せられる。顔を青褪め、口籠ってしまったキサラ様がこれ以上何かは言うまいと判断したのか、マグカップを持っていない手を握られ早足でテラスに出た。食堂内と違い、テラスの方には殆ど人はいなかった。
 食堂から離れようと遠い席を選んだ。

 お互い向かい合って座るとキサラ様について訊ねられた。


「君は彼女と面識は?」
「親族会で何度かお会いしています」
「ロドニー侯爵夫人とカンデラリア公爵は従兄妹だったな。それでか」
「リアン様、今日の事は目を瞑ってください。キサラ様はその……」


 好きな人に嫌われてしまうのは不憫だ、リグレット王女殿下とまではいかなくてもキサラ様もリアン様に懸想している。知ったのは何時だったか。


「……君に危害が及ばないなら、様子見に留めておく」
「ありがとうございます……」


 ホッと息を吐いて、初めてココアを飲んだ。生クリームを入れてもらえば良かったかな……甘さが足りない。
 リアン様も手軽に食べれるサンドイッチを頼んでいて、旬のフルーツが薄い2枚のパンに挟まれている。
 無言のまま、お互いの食事が進み、会話が再開されたのはリアン様が朝食を完食してからだった。


「アクアリーナから大体の話は聞いているんだが、親族会というのは殆ど夜会と変わらないんだな」
「集まるのが身内同士なだけでしていることは確かに変わりません。身内しかいないので、多少羽目を外しやすいのでは」
「そうか。さっきのロドニー侯爵令嬢も出席するんだな」
「毎年参加されているので今年もきっと」
「……」


 先程の事でリアン様は心配しているんだ。キサラ様とは殆ど接点はなかった。今回の件でそうもいかなくなる。


「そろそろ戻ろう。時間も迫ってきた」


 席から立ち上がったリアン様に釣られて私も立った時。前から手を掴まれリアン様へ引き寄せられた。声を出す間もなく抱き締められ、離れようと後ろに傾こうにも後頭部と腰に回された手が許してくれなかった。


「リ、リアン様」


 恥ずかしさでどうにかなってしまいそう……。
 互いの体が密着してるから、私の心臓の鼓動がリアン様にうるさいくらいに伝わっているんじゃ……。


「……嫌なら、俺を殴ってでも逃げればいい」
「……」


 ……嫌な筈が、ない。


「ん……」


 昨日の強引なキスじゃない、触れるだけの優しいキスを注がれる。リアン様の背に手を回したら、抱き締める腕の力が強くなった。

 ずっと、このまま、リアン様といたい……。


「…………いっそのこと…………」


 キスの合間にリアン様が言葉を紡いでも、夢中になっている私には聞こえなかった。

しおりを挟む
感想 197

あなたにおすすめの小説

身代わりの私は退場します

ピコっぴ
恋愛
本物のお嬢様が帰って来た   身代わりの、偽者の私は退場します ⋯⋯さようなら、婚約者殿

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

今更ですか?結構です。

みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。 エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。 え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。 相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。

iBuKi
恋愛
私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた婚約者。 完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど―― 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。 ――魅了魔法ですか…。 国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね? 第一皇子とその方が相思相愛ならいいんじゃないんですか? サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。 ✂---------------------------- カクヨム、なろうにも投稿しています。

処理中です...