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リアンの忠告2
しおりを挟む「それから」
「はい……。――え」
次は何を言われるだろうと身構えば、唐突に左手首を掴まれた。リアン様の意外な動きに目が見張り、私の手首を口元で持っていくと。
「リ、リアン様……?」
「……」
遠慮なしに手首に口付けられた。何がどうなればこういった行為をされるのか理解が追い付かない。私の顔は急激に赤く染まっていく。離してもらおうにも強い力で掴まれ振り払えない。何度も口付けられリアン様の唇が当たるそこだけ異様に熱い。リアン様の青い瞳が此方に向けられた。
「リグレットは手段を選ばない。君1人じゃどうにも出来ない。君に何かあれば、妹君だって傷付くだろう」
「……」
エルミナの名前を出され体温が集まり熱くなった顔も急激に冷めていく。ああやっぱり……私の心配を建前にエルミナを傷付けたくなかっただけだった。……私の馬鹿、これで何度目だろう。リアン様とエルミナが両想いなのは『予知夢』を視て分かりきっていたのに。リアン様の不明な行動の意図を置いても彼が親切にしてくれるのは他ならない――エルミナの為。私が平和に過ごすだけでエルミナは余計な心配を心に負わない。
私が……しっかりしていないと……。
「……リアン様が……そこまで言うなら……」
リアン様の顔が見れなくて俯いてしまった。この時リアン様がどの様な面持ちをしていたか知らない。了承することでやっと手首を離してもらえた。
話もこれで終わりなら、もう教室に戻っていいよ……ね?
リアン様に動く気配がない。私が先に行って良いものか。
決めあぐねていれば扉を開けられ振り向かれた。
「戻ろう、フィオーレ嬢」
「はい……」
先に休憩室を出てリアン様を待つ。
鍵を閉めたリアン様の後に続いて歩き、教室に戻った。
何もないように席に戻るとアウテリート様が話し掛けてきた。
「どうしたのフィオーレ。リアン様といたの?」
コクリと頷く。何があったか聞かれ……手首のキスは伏せ簡単に説明をした。
「そう。やれやれねあの王女も。あたしは他国の人間だし、どうせ卒業後は祖国に帰るから首は突っ込まないけど、面倒臭い事この上ないわ」
「振る舞いがどうであれ、王家の血を引いた王女殿下を無碍には出来ませんから」
「いつか痛い目を見るわよあの王女。そうだ、今日のお昼はどうする?」
「エルミナも一緒でいいですか? 今日は友人が休みとのことですし、王女殿下の件があるので」
「構わないわ。ただフィオーレ、リアン様の言う通り王女はエルミナ様よりフィオーレに目を付けている可能性が高い。あたしもだけど気を付けなさいよ」
「はい」
『予知夢』の心配があるから外を歩く際はエルミナを建物側に歩かせないようにしないと。あと、可能な限り上を意識しておかないと。何時上から物を落とされるか。
あ……
まただ。またあの視線。一体誰なんだろう。何処を見ても私を見ている人はやっぱりいない。幽霊に見られていて……な訳ないか。
何故かリアン様に口付けられた手首が熱くなり始めた。どうしてこんな事をしたのか怖くて聞けない。袖を捲って確認したら口付けられた部分だけ赤くなっていた。
誰かに見られた時はぶつかったとでも言おう。
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