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リアンの忠告1
しおりを挟むどうしよう……。
予鈴が鳴らないかと待っていれば、見知らぬ男子生徒に今すぐリグレット王女殿下の元へ来いと言われた。言う事に従わないとエルミナに何をするかと分からないと。王太子殿下にあそこまで脅されても懲りない王女殿下に呆れながらも、私に対する憎しみがどんどん増幅している事実に戦慄する。
幸いにもリアン様が助け舟を出して下さったので事なきを得たが今度は違う意味で困ってしまった。
教室に連れ出されたのは良いけれど、もう戻っても良い筈。なのにリアン様は私の腕を離してくれない。
今私達がいるのは、この間昼食を摂った休憩室。沈黙に包まれ若干息苦しさを覚える。お礼は言った。教室に戻りましょうとも言った。他には何を言うべき?
「フィオーレ嬢」
悶々と考えれていると漸くリアン様が喋ってくれた。
「またリグレットの名前を出されて君1人だったらどう対処する気だ?」
「それは……」
私に向けられる青い瞳に宿る疑問と微かな怒り。どうして……? あなたを怒らせるま真似はしていない……。
「リグレットは話が通じる相手じゃないのはもう君も分かっただろう」
「はい……」
「それで……どうするんだ」
王太子殿下がリアン様に私の側にいろと言ったのは王女殿下から守る為。分かってる、2人が親切から助けてくれようとしているのが。
私がリアン様といる事でエルミナが勘違いしたら? リアン様も折角エルミナが生徒会に加入して接する機会を得たのに、私という存在のせいで近付けなかったら?
どちらにしろ私が邪魔な存在になるのは明白。『予知夢』を視て絶対に邪魔をしないと決めた。2人の仲を応援するって決めたんだ。仮令、私の恋心を捨てる結果になっても……。好きな人が幸せになってくれるなら。
「私は……やっぱり……リアン様に迷惑は掛けられません……。私よりも接点の多いエルミナが心配です」
「……」
「これからは気を付けます。ですから、エルミナを見てあげてはくれませんか?」
意を決して頼んだが……リアン様の青い瞳が益々翳りが出来ていく。黒の混ざった濃い青色に見下ろされ、口内が乾いてく。初めて怖いと抱いた。私はどこかで言葉の選択を間違えた? でも何処? あまりにもエルミナを頼み過ぎて逆に怪しまれた? 幾ら考えても答えが見つからない。
「……にも……そんなにも……」
「え……リアンさ……」
声が小さくてリアン様が何を言ったか拾えなかった。もう1度聞こうとしたら、彼の綺麗な手が伸ばされた。私の青銀の髪を一房掬うと口元へ運びそして――口付けた。
一気に顔を赤く染め上げる私を冷ややかな青が見下ろす。
「フィオーレ嬢」
「は、い……」
「もう少し警戒心を持つべきだ」
「はい……」
これからはちゃんと気を付けなきゃ。
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