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フィオーレにしつこく絡む理由とは
しおりを挟む鞄をベッドに置いて、事前に用意されていた部屋着へと着替え、すぐにお父様の待つ書斎へと向かう。扉の前にはお義母様が待っていてくれた。2人で書斎に入室すると……テーブル一面にスイーツを広げたお父様がきっちりと貴族服を決め、紅茶を飲むポーズをしながら座っていた。
隣にいるお義母様が呆れたような深い溜め息を吐かれるも、肩を押され中へ進んだ。私はお父様と向かい合い、お義母様はお父様の隣に座った。
「お帰りフィオーレ」
「ただいま戻りました。……お父様、このスイーツは」
「久しぶりに甘い物が食べたくなってね。どうせなら、フィオーレと一緒にと」
「そうだったのですね」
お父様はビターなチョコレートを好んでいたと記憶していたけれど私の勘違いだったのかしら?
お義母様のティーカップとスイーツ皿を頼む最中、早速話をしてほしいと告げられ、まずはエルミナの生徒会推薦の話にした。
「王太子殿下から、アウテリート様と頼まれまして。女子生徒で誰か生徒会に勧められる生徒がいないかと」
「成る程。それでフィオーレはエルミナを?」
「エルミナは成績も優秀ですし、伯爵令嬢としての振る舞いもしっかりと出来ております。私はもう最終学年なので無理ですがエルミナなら、十分生徒会で実力を発揮出来るかと」
「今年はリグレット王女殿下も入学されている。自分以外の女子生徒が入って王女に目を付けられるのが心配だな」
「その点については心配無用かと。王太子殿下が昨日で王女殿下を生徒会から除籍したので」
私もこれには悩んだ。エルミナを推薦し、了承してくれても、自分が1番だと信じる王女殿下が同性の加入を快く思わないのではと。王太子殿下が除籍してくれたと聞き、ちょっとだけ安堵したのは秘密だ。
「ふむ。私からは反対はしないよ。君もそうだね?」とお義母様に意見を求められた。
「ええ。後はエルミナ次第ですわ。あの子が嫌だと言うなら、無理に勧めはしません。フィオーレもそれでいい?」
「勿論です。決めるのはエルミナです」
『予知夢』ではエルミナは生徒会に入る。学年が違うリアン様と問題なく会える唯一の機会を逃せない。2人から受け入れられて安堵した。丁度、お義母様の紅茶が運ばれた。どのスイーツを取ろうか選んでいると「フィオーレ」とお義母様に呼ばれる。
「急かして悪いのだけれど、さっき私に話したあれを旦那様にも話してあげて」
「あれ?」
「ええっと……」
話した瞬間のお義母様の反応が忘れられなくて億劫になるが意を決してお父様に話した。
ガルロ殿に王女殿下を泣かせたと勘違いをされて絡まれたこと、王太子殿下とリアン様に助けられ事なきを得たこと。ガルロ殿の名前を出すとお父様が持っていたティーカップに罅が入ったように見えたが気のせいだろう。リアン様の名前を出した時はロードクロサイト様と呼んだ。昨日まで家名で呼んでいたのに今日になって名前で呼んだら誤解されてしまう。
全て話し終えるとお父様はティーカップをソーサラーに置いて深い溜め息を吐かれた。
「はあ。我が家、というよりフィオーレに絡むのが生き甲斐なのかあの連中は」
「連中は、というよりトロントとガルロ、それにお母様ですわ」
「すみません、私が至らないばかりに」
「フィオーレは何も悪くない。私達の力不足のせいだ。トロント殿がフィオーレに絡むのは公爵夫人のせいにしてはしつこい。別の理由があるんじゃ……」
伯爵令嬢の娘である私が気に食わないトロントおじ様とカンデラリア公爵夫人に昔からお父様とお義母様が苦言を呈してくれているのは知っている。生まれは私ではどうしようもない。せめて2人に何も言われないようにと、令嬢としても跡取りとしても努力した。私がどれだけ努力したところであの2人は決して私を認めようとしない。見せ付けるようにエルミナばかりを褒め称える。幸いにも敵は2人だけ、且つ、苦手な人達だから精神的ダメージは受けてない。逆に言えば、私の悪口を吹き込まれ嫌な思いをさせてしまったエルミナに申し訳ない。
お父様が別の理由と呟くがそうは思えない。他の理由があるなら是非知りたい。
「アルカンタル伯爵家に関係はありますか?」と訊ねた。あるとしたらお母様の生家アルカンタル伯爵家しか浮かばない。
「ふむ……イースター家が財政難とは聞かないがな……かと言って、カンデラリア公爵家もないな……」
「ええ。お母様の散財はすごいけれどお父様が厳重に管理していましたし、今は世代交代してお兄様が家を継いでいるから好き勝手お金は使えません。他にあるとすれば、隣国の公爵家との繋がりかしら」
お母様のお祖母様の生家である隣国の公爵家は、現王妃殿下の生家である。仮に隣国の公爵家と繋がって王家と関わりたいのだとしてもかなり遠い親戚に当たる私では道具にすらならないだろう。
これも違うと3人頭を悩ませた。
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