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祖母との約束
しおりを挟むオーリー様は私の決意の固さをこの2年で知られた。頑固と言われようがエーデルシュタイン家が齎す『予知夢』は驚くことに実現率100%と言われる、驚異の能力。能力が現れると本来ならば王家に報告するのが義務。しかし、現段階で知っているのは祖母のみ。祖母は私の複雑な心情と頑固さに折れて内緒にしてくれると約束してくれた。前当主の妻であるなら、褒められた行為ではないと知りつつも、祖母の優しさに甘える自分が嫌になる。
でもその際、約束をした。
『いいかい? フィオーレ。もしも、誰かが傷つく予知を視たら、必ず助けるんだよ』
『はい。……けど、どうしたら』
『お前は執事を1度助けているだろう? 大変かもしれないが偶然を装って、そうならないよう誘導するんだ』
『出来ますか? 私に……』
『出来るかどうかじゃない。やるしかないんだ。回数を重ねていくと慣れていくよ、きっと』
祖母の言う通り、人の不幸になる『予知夢』が現れると必ず最悪の事態を引き起こす前にそれとなく誘導して回避してきた。私ばかり行動していれば、何れ不信感を抱かれてしまうので、時にエルミナを使ったり、周りを使って回避した。
大変だが誰かが不幸になる『予知夢』を視て、平気でいられる鋼の精神を私は持ち合わせていない。
「ところで、フィオーレちゃんは家を出たら平民になると言っていたよね?」
「はい」
「僕で良ければ、君の就職先を紹介してもいいよ」
「本当ですか!?」
最難関の1つ、家を出た後の将来。今のところ私が家を出たがっているとは家族は知らない。エルミナに跡取り教育を受けてもらっているのは、あくまでも万が一のことがあったらいけないから。どこの家も、予備は必ず必要とされる。また、エルミナは元々勉強が好きじゃない。お義母様が手を焼くくらい。なので、私の提案はある意味では都合が良かったのだ。現在では真面目に勉強を受けていて、入学試験の結果も上から10番目に入るほど上達していた。
まだまだ覚えることは沢山あるだろうが、今のエルミナなら、きっと立派な跡取りとなれる。
あの子はやれば出来る子だ。ずっと暮らしてきた私が言うのだから。
思わずオーリー様の言葉に食い付いていると給仕の方がオススメセットを載せたトレーを2つ運んで来た。今日のオススメはフルーツタルトだった。
最後にティーカップとティーポットを置いて給仕の方が去るとオーリー様は慣れた手付きで紅茶を注いで下さった。
「どうぞ、フィオーレちゃん」
「ありがとうございます」
オーリー様の言う通り、我が国の紅茶は種類も豊富な上、味も絶品。特に此処のカフェの紅茶はどの店よりも美味しい。確か、店主が大の紅茶好きで何百もある茶葉から選び抜いた種類だけを使っている。
私は就職先の話の続きをお願いした。
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