行動あるのみです!

文字の大きさ
上 下
78 / 81

好意の方向は再び8

しおりを挟む
 



 ずっとレーヴを立たせたままだったのを今になって気付いたシェリが椅子に座ってもらうよう風の魔法で引き寄せとようとしたのを止められた。


「いい。長いするつもりはなかった。シェリが目を覚ましていると聞いてつい慌ててしまったが……」
「……殿下が助けて下さったと、ミルティー様から聞きました。ありがとうございました」
「いや……シェリ……」


 レーヴは真剣味の増した、青の宝石眼でシェリを見つめた。


「その……こんなこと……僕に言う資格はないのかもしれないが……言わせてくれ。
 ――僕と……最初から……やり直してくれないか……」
「……」
「父上には、僕とシェリの婚約は既に内々で解消されたとはちゃんと聞いた。シェリが僕を嫌いになっていたっていい」
「それは……」


 好きな気持ちは捨てようと覚悟をした。現に、今までレーヴから頂いた様々なプレゼントは全て整理し、要らない物は処分した。こうしてやり直しを希望すると1度決めた意思が揺らぐ。その程度の意思だったのだと自分が軽い人間に思う反面、“転換の魔法”を切っ掛けに新しい関係を築けていけるのではと期待を抱いてしまう。ミエーレのことを思うと巡った思考も遮断した。
 魔法にしか興味を示さない彼が好意を示して来た。他人に感情を向ける気がほぼ零なあのミエーレが。ミエーレの気持ちにも、まだ答えを出していない。
 黙っているとレーヴが苦笑した。


「勿論、シェリが嫌なら僕は諦める。ただ、まだ僕にもチャンスがあるなら……もう1度……シェリに好きになってもらうように努力するよ」
「レーヴ様……わたしは……アデリッサと仲睦まじいあなたを見た時、わたしではあなたをあんな風に喜ばせないのだと痛感しました」
「それは……悪かった。ずっと身勝手な意地を張り続けて君を見ようとしなかった僕の責任だ」
「それに……ミエーレに好きだと言われて……今すぐに……あなたを信用することができません」
「当然だ。僕は……それほどのことをしてきたし……君がミエーレに好意を示されて、揺らいでしまうのも理解している」


 レーヴがベッドの側で跪いた。瞠目したシェリの左手を手に取ると薬指に口付けを落とした。
 見る見る内にシェリの顔が赤く染まっていく。同時に、レーヴの顔も。


「こ、これからは僕もシェリが好きだと、ちゃんと行動する。卒業までに君に再び好きになってもらえなかったら、その時は君を諦める。
 その……今のは……ぼ……僕の、意思表示だと思ってほしい」
「……」


 顔が赤く染まるのと一緒で手を握る体温も熱い。照れているのだ。そして、レーヴの語る言葉にどれも偽りはない。
 心の方向は元に戻った。


「はい……!」


 関係が元に戻る、のはない。
 戻ってしまうと前のように、想いを寄せても頑なな態度を取られるだけ。
 零の状態から始まる関係が2人に何を齎しても、決して後悔のないように行動をしていくのみ。




 ――そそくさと出て行ったミルティーがオーンジュ公爵家の侍女と一緒になって、聞き耳を立てていると2人にバレるまでもう少し……。








しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい

綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。 そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。 気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――? そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。 「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」   私が夫を愛するこの気持ちは偽り? それとも……。 *全17話で完結予定。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

処理中です...