64 / 81
サロンへの招待3
しおりを挟むマリーベルの話によると、アデリッサがマティアスに目を付けたのは父ナイジェル公爵に届け物を渡しに魔法研究所へやって来たのが始まりと言う。
所長を務めるライトカラー男爵とは親しく、アデリッサが忘れ物を届けに行った時、男爵と共にマティアスもいたのだ。
「マティはよく父の手伝いをしていたので、研究所へはよく行っていたのです」
「なるほど。そこでアデリッサと会ったのね」
「はい。恐らくですが、父がナイジェル公爵様にマティの自慢話をアデリッサ様がいる前でしたのが原因かと思うのです」
親戚であるマティアスの魔法の才能は男爵も将来有望だと太鼓判を押すほどのもの。ヴァンシュタインの天才と張り合えるといつも自慢していた。マティアス自身は恐縮してばかりで尊大な態度は決して取らなかった。
マティアスの魔法の才能とついでに見目の良さに目を付けたアデリッサが、無理矢理彼を従者に欲したのはそれからすぐのこと。
「マティアスが従者になる前、あなたの周囲で異変は起きなかった?」
「……その、非常に申し辛いのですが……私物が無くなったり、上から水を掛けられたり物を落とされることが増えました」
「やっぱり……」
取り巻きを使ってマリーベルに嫌がらせをし、止めてほしかったら自分の従者になれとマティアスに迫ったのだろう。魔法研究所にいることは知ったのだ、後は彼が来る日を狙って会い、脅して無理矢理従わせたのだ。
「マティがいきなりアデリッサ様の元へ行くと言った時は悲しかったです……でも、マティがいなくなった途端、嫌がらせがなくなったからもしかしたらとは思っていました……」
「男爵にそのことは……」
「いえ……心配させてはいけないと話していません。父は、マティが公爵令嬢に気に入ってもらえて良かったと喜んでいるので……私からは……」
「……」
魔法の研究に熱心な変わり者といえど、高位貴族と繋がりを持ちたいのはどこの貴族も同じ。
暗く、俯くマリーベルに安心させてやれる言葉はシェリにはない。
事が公になれば、無理矢理とはいえマティアスも罪に問われる。
アデリッサの行動はまだまだ見張る必要がある。
が、同時に早く自分も行動しないと、予想している、自分に“魅了の魔法”を使ってレーヴに足蹴りにする作戦を実行される。
予想でしかないのに、確信が持てるのはアデリッサの行動が読みやすいからだ。
「マティアスがアデリッサに何をさせられているかは、ごめんなさい、まだ詳しくは言えないわ」
「はい……」
「でも、彼が被害者というのは此方も把握してる。なるべく、罪が軽くなるように動くつもり。そこは心配しないで」
「ありがとうございます……!」
羨ましい、と抱く。
2人は幼い頃からの付き合いで、お互いの気持ちを確認し、時間をかけて絆を深めていった。
自分とレーヴも幼い頃に婚約を交わしたのに、1度も心を開いてもらえなかった。実際は開いていたらしいが、肝心の本人に一切伝わってない。
レーヴを諦めるからと贈り物は処分済み。
だって、彼は元には戻れないから……。
「……」
今更になって、処分は早計だったと後悔し始めたシェリだった。
27
お気に入りに追加
986
あなたにおすすめの小説

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…
ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。
王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。
それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。
貧しかった少女は番に愛されそして……え?
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】夫が私に魅了魔法をかけていたらしい
綺咲 潔
恋愛
公爵令嬢のエリーゼと公爵のラディリアスは2年前に結婚して以降、まるで絵に描いたように幸せな結婚生活を送っている。
そのはずなのだが……最近、何だかラディリアスの様子がおかしい。
気になったエリーゼがその原因を探ってみると、そこには女の影が――?
そんな折、エリーゼはラディリアスに呼び出され、思いもよらぬ告白をされる。
「君が僕を好いてくれているのは、魅了魔法の効果だ。つまり……本当の君は僕のことを好きじゃない」
私が夫を愛するこの気持ちは偽り?
それとも……。
*全17話で完結予定。
【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った
冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。
「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。
※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる