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サロンへの招待2
しおりを挟む初めて会った時のお互いの印象はどんな風だったか。
ミルティーに訊ねられたシェリは、顎を人差し指でトントン叩いた。
「そうねえ……ミエーレは知らないけれど、わたしは綺麗な男の子と抱いたわ」
波打つシルバーブロンドを持つシェリとは違う、純粋な金色の髪を持つミエーレ。蜂蜜という名前に相応しい見目をした幼い彼だったが、開口1番放った言葉によってイメージは崩れ去った。
「初対面のわたしに向かって『君屋敷にいる犬と同じ毛の色だね』って言ったのよ」
とても無邪気に、子供特有の人懐こい笑みで。
「そう……なのですか……」
「そうよ。犬と同列にされるなんて思わなかったわ」
当時ミエーレの言った、シェリと同じ毛の色の犬はすっかり老犬となってしまったがまだまだ元気である。何度かヴァンシュタイン公爵家に足を運ぶとゆっくりな足取りでシェリを迎えてくれる。
最初はそっくりな毛の色と扱われた犬なんて、と抱いたが実際に接してみると人が大好きで予想していたよりも可愛い顔をしていたから、妙に愛着が湧いて一時期犬目当てでヴァンシュタイン家を訪れていた。
「わたしがレーヴ殿下に一目惚れした、婚約者になったと言いに行った時も、ミエーレは人の話を聞いてるのか分からなかったわ」
彼は魔法の研究に没頭し、折角遊びに顔を出しても全く人の話を聞かない。その点においては、ミエーレもレーヴと同じ。
「ミエーレ様はオーンジュ様のこと、どう思っていらっしゃるのでしょうね」
「……さあ……」
ミエーレに告白されたが、信じる信じない以前に、彼が他人に興味を示すこと事態ほぼない。
また、ずっとレーヴを追いかけ続けていたシェリを陰ながら応援してくれていたのも彼。
毎回、会いに行っては口を利いてもらえず、目すら合わせてくれないレーヴへの不満と不安をミエーレにぶつけていた。
その時も彼は魔法の研究に没頭し、偶に相槌を打ってくれた。
「よく分からないわ……」
シェリは不意に手を伸ばし、金貨を溶かしたような美しい髪を撫でた。痛みもなく、さらさらとした髪。気合を入れて手入れをする真面目な性格じゃないのに、羨ましい。
仄かに香る甘い匂い。
寝ているのを良いことに、時間になるまでシェリは撫で続けた。
余程深い眠りに就いているのか、ミエーレが起きることは最後までなかった。
――約束の時間になり。予約したサロンに1人で向かったシェリ。
マリーベルしか招待していないので、豪華で広いサロンには2人しかいない。
「さて。話しましょうか」
「は、はい」
「まず、あなたの従者がアデリッサの従者になった経緯を話してちょうだい」
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