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僕が好きなのは……2

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 何故此処に? と言いたげに新緑色の瞳が丸められた。
 王家主催のパーティーの際、呆れながらもアデリッサとの進展を望んでくれたのに、いざ両思いになると詰られた。相手が違うと。最初は何を言っているのだと憤ったが、先日のシェリとミエーレの件のせいでヴェルデの知る事実を聞きたくなった。
 ヴェルデの前に座り、気まずげにそう紡ぐと……そうですか……と小さな声で返された。


「ヴェルデ様……」


 ヴェルデの隣に座るミルティーが難しい表情で見やる。とても言い難そうな顔だ。


「……殿下。殿下は、アデリッサ様の好物が何か言えますか?」
「アデリッサの……? 勿論。アデリッサはカフェモカが好きだ。特に、生クリームをたっぷりと乗せたのを好む」
「…………私が知っている限りでは、アデリッサ様はラム肉のソテーが好きだったと記憶してますよ」
「え」


 基本好き嫌いはせず、甘味が大好物のアデリッサのお気に入りがカフェモカ。なのにヴェルデはラム肉のソテーと全く違う種類の違う料理名を出した。


「アデリッサは甘い物が好きで……」
「ええ。多分、好きでしょうね。他には?」
「ハチミツを入れたホットミルク……」
「アデリッサ様はミルク嫌いで有名ですよ」
「ミルク嫌いなのはシェリの方だ」
「いいえ。殿下が挙げる好物は、全てオーンジュ嬢の好物です」


 衝撃が走った。アデリッサとシェリの好物を入れ替えて認識しているのかと。違う、違う、と力なく繰り返すがヴェルデは構わず続けた。


「なら、次です。ミエーレの昔馴染は誰ですか?」
「当たり前のことを……アデリッサだ。ヴァンシュタイン公爵とオーンジュ公爵は……」


 
 アデリッサはナイジェル公爵令嬢。オーンジュ公爵令嬢はシェリ。
 ヴァンシュタイン公爵とオーンジュ公爵は幼い頃からの友人同士。父親繋がりでお互いの子供が仲良くなるのは良くあること。
 思考が追い付かない。
 アデリッサの事が全てシェリへと変わる。
 

「……ヴェルデ……僕は……今までずっと思い違いを……?」
「いいえ。決して。……殿下、今から話すことを信じるか信じないかは殿下次第です」
「ヴェルデ様……」


 ミルティーが心配げな面持ちでヴェルデを見つめる。彼女も何かを知っている。自分に起きている異変に。
 ヴェルデとは付き合いが長く、誠実で他人に決して偽りは申さない。信頼を寄せる彼が真剣な眼差しで告げるのだ。


「……信じる」


 レーヴがヴェルデを信じるのは信頼の証。


「ありがとうございます。では――――」


 ヴェルデが語り始めようとした矢先。
「レーヴ殿下あ……! やっと見つけましたあ……!」甘ったれた可愛らしい声が静粛を重きとする図書室に響いた。声を聞いただけで込み上がる愛しさは本物なのに、華奢で可憐な姿は庇護欲をそそられるのに……

 心の空洞は塞がらなかった。


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