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転換された好意2

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 あの時ーー
 王家主催のパーティーから翌日。会場に現れないレーヴを心配したヴェルデが部屋を訪れた際、王太子の後押しもあり全て白状をした。呆れられながらも、明日はきっとシェリは朝早く裏庭に来るだろうから、そこで今までの思いを告白して、今までの行いを謝罪してみてはと助言をもらった。
 シェリが拒絶するなら、諦めて婚約解消を受け入れ。
 シェリが受け入れるなら、1から全部をやり直す。
 王太子と話す前は国王とも話しており、恥を捨てて進んでみろと言われていた。
 
 お陰でその日の夜は眠れなかった。目の下に隈があり、まるでミエーレみたいだと抱いた。彼の寝不足は魔法の研究のせい。と、元からの不眠症が災いして。
 
 身支度を整え、クロレンス王立学院の校舎に入ってすぐ裏庭へ向かった。
 シェリが来ると信じて。
 ……が、彼女は来なかった。一瞬、人の気配がしたと思うも誰もいないので気のせいだと捨て置いた。
 必ず来る保証はなかったので朝は諦めるか、と勝負は昼休憩だと考え事をしながら廊下を歩いていた。
 
 左に曲がるとドンッ! と誰かとぶつかった。尻餅をついた相手はよく知っていた。ふんわりとしたピンクの髪と大きな栗色の瞳の少女。何故か自分に拘るあまり、婚約者のシェリに陰湿な嫌がらせをするアデリッサがいた。正直彼女に気持ちの良い感情を抱いていないが、紳士として声を掛けず素通りは出来ない。仕方なしに声を掛けると手を貸して立ち上がらせて欲しいと言われる始末。
 愛くるしい顔立ちで瞳に涙を溜めた姿は、男性なら庇護欲をそそられ守りたくなるのだろう。しかし、シェリ一筋なレーヴはタイミング良く涙が出るアデリッサに呆れる。公爵令嬢よりも女優に向いている。ヴェルデや従者がいれば起こさせるのだが、生憎と周囲には誰もいない。仕方なしに伸ばされた手を掴んだ瞬間。
 
 ーーレーヴの視界は一瞬黒くなった。闇を深くした夜と同じ色。
 何が起きたのかと暫し放心すれば、あの……と困惑した声が下から聞こえた。
 自分の手が掴んでいるのは……
 
 
「アデリッサ……」
 
 
 の手だった。
 裏庭で会えない時は、昼にしようと考えていた矢先の出来事。
 何度も触れたかった手は予想以上に小さく、指も細い。欠かさず手入れをしているから滑らかな肌。確かめるように力を入れたり弱めたりを繰り返せば、困惑の色は強くなる。
 ハッとなったレーヴはアデリッサを立たせた。
 
 
「も、申し訳ありませんでした、殿下」
「い、いや、前をよく見ないで歩いていた僕にも非はある。
 ……それより、君に大事な話があるんだ」
「大事な話?」
 
 
 キョトンと見上げられ、愛しさと嬉しさが混ざり合って恥ずかしさなど遠くへ吹き飛んだ。
 
 
「アデリッサ。僕は君を探していたんだ」
「わたくしをですか?」
「ああ。大事な話があるんだ」
「大事な話……」
 
 
 不安そうな表情をされ、今すぐに抱き締めて安心させてやりたい欲求が膨れ上がる。今までの態度と行動のせいでマイナスの話だと思われるのは、自分自身の罪。
 だけど、これからはそうはならない。
 
 
「……ずっと前から、言おうと思っていたんだ。僕は……」
 
 
 ーー君が好きだ。
 
 
 人生最大の、心の修羅場となったあの告白。
 好きだと告げた瞬間、愛らしい栗色の瞳は大きく見開かれ、次第に涙をたくさん流し始めた。
 嫌だったのかとショックを受けているとアデリッサもレーヴがずっと好きだったと想いを告げてくれた。
 
 素直になるだけで好きな女性と両思いになれるなら、もっと早く無駄な意地を捨てて告白したら良かった。
 
 泣いて喜ぶアデリッサを抱き締めた。
 
 これからはちゃんと言葉にする、昼食も一緒に摂り、時間が合うなら出来るだけ一緒にいよう。
 
 アデリッサとずっとしたかったことを挙げていき、泣きながらも頷いてくれた。
 
 早速、昼食は一緒に食べようと約束した。
 
 今日は城に帰ったら、真っ先に王太子や国王に報告しよう。
 特に兄である王太子は、ずっと自分とアデリッサの仲を心配してくれた。早く報告して安心してほしい。
 
 
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