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転換された好意1

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 2人、影を重ねて帰って行くシェリとミエーレの後ろ姿が眩しい。

 ずっと想いを寄せていた女性アデリッサと結ばれ、やっと本音を言えるようになれたレーヴの心中は穏やかじゃない。

 シェリはずっとアデリッサに嫌がらせをしていた。それは、レーヴに想いを寄せているから。しかし、一目見てアデリッサを好きになったレーヴが涌いて出たシェリを好きにならず。また、嫌がらせの件もあり益々嫌いになった。個人の好き嫌いで相手は選べないからと、最低限の関わりしか持とうとしなかった。


 なのに――
『第2王子殿下。いくらあなたでも、婚約者でもない令嬢を名前で呼ばないでいただけますか?』


 ギザギザで、研ぎ澄まされた刃で胸を刺された痛みがレーヴに襲い、ほんの一瞬呼吸方法を忘れた。シェリは婚約者。シェリの我儘によって結ばれた。ずっと嫌い続けていたシェリと何時婚約解消になったのかレーヴは知らない。これでアデリッサと後ろ暗いこともなく愛し合えるのに、凍てつく紫水晶の瞳に見上げられただけで絶望に落とされた。


「殿下ぁ……っ」


 呆然とシェリとミエーレの後ろ姿を見続けていると、たおやかなアデリッサの声が現実に引き戻した。


「どうしたのですか……?」
「いや……なんでもない……」


 花畑で見つけ、一目惚れをした、黄金の妖精に――
 ――黄金?
 黄金という表現はシェリ。波打つシルバーブロンド、妖艶な紫水晶の瞳。絶世の美貌を誇るシェリにだけ、似合う。


 シェリ。シェリ。シェリ。シェリ。シェリ……
 アデリッサと結ばれ、幸せなのに……シェリに他人行儀な振る舞いをされ、ミエーレと仲の良い光景を見て。


 レーヴは幸福から不幸へ転がっていく……。

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